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はぐれ魔女と平凡無才の魔剣使い  作者: 阿木津 秋水
はぐれ魔女としがない使用人
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不意打ちと挑発


「ちくしょう何だっていつもこう無茶苦茶なんだよ‼︎」


 ユリアの無謀な行動に若干の苛立ちを感じながらも彼女の後を追い、飛び出した。


「ダメ‼︎ この人を殺さないで‼︎」

「あァ? 誰だお前?」

「ユリア、ユリア・ホーエンシュタイン……はぐれ魔女だよ」

「バカお前何言ってーーー」


 ユリアが自身を魔女と宣言した、その宣言が村人達をざわつかせた。


「魔女って……マジかよ……」

「そんな……魔女が村に入り込んでたなんて……」

「傭兵に魔女だなんて……どうかしてるぜ……」


 辺りでそんな声が上がり始め、場の空気は更に悪化した。


「……ぶっ‼︎ アハハハハハハハハ‼︎ 魔女? 魔女だって? クハハハハハハハハハ‼︎ 笑わせんじゃねえよ‼︎」

「本当だよ、私はーーー」


 これ以上ユリアにものを喋らせるのは危険だ。


「あー、すまん、ほんとすまん、俺の連れが迷惑掛けちまったな、いやーほんとすまない」


 ユリアと傭兵の間に割って入る様に立ち、そう切り込んだ。


「次から次へと何なんだァ?」

「俺はただのしがない旅人だよ。 そんでもってあんたらに提案があるんだよ」

「提案だァ? 偉そうに俺達に指図しようってか?」

「ちょっ、ライル……」

「いいからお前はちょっと黙ってろって。 いいか? 静かにしてろよ?」


 割り込まれた事に不満げなユリアをなだめた後、再び傭兵の方を向き、話を続ける。


「えーっとだな、今俺達はちょいとばかり懐に余裕があってさ、路銀がまあこんくらいあるんだよ」


 路銀が詰められた袋を取り出し、袋を揺らしてジャラジャラと音を立ててみせる。


「何だ、俺達にその金でこの場を退けって言いてェのかお前は?」

「理解が早いみたいで助かるよ。 その通り、この中には金貨も何枚か入ってる。 余程欲張りでもしなきゃ旅してても困る様な事はないくらいの額は入ってるんだ。 悪い話じゃないだろ?」

「面白ェ、お前ちょっとその袋の中身見せてみろよ」

「いいぜ、直接見てもらった方が俺が嘘をついてないって分かるだろうしな」


 そう言って傭兵に袋を手渡す。


 まだ魔剣を使うための条件は満たされていない。魔剣を使えなければ俺はただの雑魚だ。そんな状況下で俺が少しでも状況を有利に持ち込む為の術、それはーーー


「へぇ、こりゃいい、こんだけあればしばらーーー」


 しばらく金には困らない。そう言いかけ、袋を覗き込んでいた傭兵の顔を下から殴り上げた後、その頭を両手で掴み、膝蹴りを叩き込んだ。


「ガァッ⁉︎ てめ……アガッ‼︎」


 間髪入れずサーベルを引き抜き、倒れ伏した傭兵の背中に突き刺した。


「この野郎テメェ何しやがる‼︎」


 倒れ伏した傭兵は動かなくなり、倒れた農民達を嬲っていた傭兵達が憤り、怒鳴り声を上げながらこちらへサーベルを向けてきた。


 ここまでは予想通りだった。

 数的不利な状況下で少しでも状況を有利に持ち込む方法、それは不意打ちで少しでも戦わなければいけない相手の数を少なくする事だ。

 残った傭兵の数は五人。一人を不意打ちで倒せたとはいえ、依然として俺が不利な事に変わりはなかった。

 それ以前に俺と傭兵とでは素の戦闘力に差がある。一対一ですらこちらが不利なのだ。

 ここから先をどう立ち回るか、無い頭を総動員し、この状況を覆す手段を考えた。


「おいお前よォ、俺達相手に喧嘩売ろうなんていい度胸してるじゃねえかよ?」

「か弱い農村襲ってイキってるお前らが何デカイ面してんだよ?」

「……テメェ調子乗ってんじゃねぇぞ? 俺達はなぁ……あのジルバ傭兵団の傭兵だぞ?」

「え? どこそこ、俺田舎者だから知らないや、ごめん」


 自信満々に高らかと言い放った傭兵にそう返すと、みるみるうちに傭兵の顔は真っ赤に染まり、怒りで震えているのがよく分かった。


「……ヘヘッ……いいぜ、上等じゃねえか……こんだけ俺達をコケにして、タダで済むと思うなよ!」

「そりゃあ傭兵様に喧嘩売ってタダじゃ済まないでしょ、今から死ぬ予感しかしてないよ。 にしてもそんな傭兵様がもう既に一人やられちゃってるけどな?」


 この手の輩は少し煽ればすぐに挑発に乗る。まるでジュリアンを見ているような気分だった。


「おいお前らァ‼︎ 潰せ‼︎ ぶっ殺せェ‼︎ こいつに俺達を怒らせた事を後悔させてやれェ‼︎」

『おいどうするんだ、オレはお前に力は貸さんぞ?』

「バカお前そこはそうじゃなーーー」


 魔剣にツッコミを入れる前に傭兵達はこちらへ斬りかかってきた。

 咄嗟に身を屈め、前に転がり辺りを見回すと、気付けばユリアは村長らしき男を連れ、少し前まで居た屋台の近くまで避難していた。


「ユリア! そこで大人しくしてろよ⁉︎」

「無理しちゃダメだからね‼︎」

「そりゃもちろーーー」


 ユリアに返事を返す余裕もなく、五対一という圧倒的不利な状況に正直お手上げだった。


「あ、あの‼︎ 旅人さん‼︎」

「え? 何? 今それどころじゃないんだけど‼︎」

「この村を、私達を……助けて下さい……お願いします……」


 そんな声を聞き終わる頃には、俺は近くの家屋の壁に追い詰められていた。


「……ヘヘッ、これでテメェも終いだ」

「いやー強いね〜。 敵う気がしないわこんなの。 で、聞きたいことあるんだけど俺を殺したらこの村荒らすんだな?」

「当たり前だ‼︎ 死ね‼︎」


 その言葉を待っていた。このクソ厄介な条件を俺に課したこのクソ魔剣を引き抜く為の条件が、今揃った。


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