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はぐれ魔女と平凡無才の魔剣使い  作者: 阿木津 秋水
はぐれ魔女としがない使用人
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分かり合えない

 どれくらい眠っていただろうか、今まで生きてきた中で、一番長く眠っていただろう。

 目を開くと、木張りの天井が目に入り、少し横を向くとユリアが寝息を立てて眠っていた。


「……う……ん……?……ユリア?」


 横を向いてすぐ目の前で眠っていた事もあり、思わず飛び起きそうになったが、急に体を動かそうとした為か激痛が走り、背筋が反り返りそうになった。


「痛たた……痛ーい超痛ーい……」


 涙目になり、身をよじりっていると、鼻と鼻が触れそうな程の距離にユリアの顔が見え、咄嗟に反対側へ転がり、そのままベッドから転げ落ちた。


「……痛う……寝起きから災難ばかりじゃねえか……」


 頭をさすりながら起き上がり、ベッドに手を掛けると、その反対側で眠たそうに、目を擦りながらこちらを見ていた。


「ん……おはよ……よく眠れた……?」

「あ、あぁ……おはよう」


 苦笑いしながらそう返すと、彼女は両手を上げて、背伸びをし、あくびを噛み殺していた。

 その際に背を反った為に、彼女の胸元が強調され、直視するのが憚られ、思わず目を逸らした。


「……ライル、どうかした?」

「いや、何でもない……ちょっとボーッとしてただけだよ」

「少しは疲れも取れた?」


 未だ疲れは残っているが、宿に泊まる前の、白目を剥きそうになっていた時のそれに比べれば随分回復しており、少し体が重い程度だった。


「そうだな〜、まだちょっと重い気もするけど大分楽になったよ」

「そっか、なら良かった〜」


 頬杖をついて嬉しげに笑う彼女を見ていると、今まで色々と張り詰めていたものが緩んでいくような気分になった。


「ん〜……っと、どうする? 少し村でも見て回るか?」

「うんうん! 行こう行こう!」


 立ち上がって腕を組み、大きく背伸びをした後そう問いかけると、ユリアは目を輝かせ、子供のように無邪気な笑みを見せた。


「それじゃ、準備するか……おい、起きてるんだろ?」

『あー? お前人に力借りてるくせに何偉そうな口叩いてんだよ?』

「悪いな、自分でも目立つ取り柄無いのは分かってるけど、他人から見下されるのは大っっっっ嫌いなんでな!」

『だったら実力で黙らせてみろよ」


 こっちが力を持たない事を知っていながらこの言いようだ。ユリアを、守りたいものを守る為とはいえ、とんでもなく面倒な奴を手にしてしまったと我ながら後悔した。


「だからそれができないからお前がここにいるんだろ?」

『だったら凡才らしく少しは口を慎めこのクソガキ』

「……箱に戻すぞこのクソ魔剣……」

『……呪い殺すぞ? このクソガキ……』

「二人ともそこまでー‼︎」


 そんなユリアの仲裁でようやく正気に戻った。


「別に俺は揉めてた訳じゃ……」

『オレだって別にそんな訳じゃ……』

「二人とも! これから先一緒に旅するんだからそうやって喧嘩しちゃダメ!」

「えぇ……」

『いや……』

「もう、二人とももっと仲良くしてよ、ライルは魔剣さんの力借りてるんだし、魔剣さんはライルに外に出してもらったんだから、お互い相手に難癖付けるんじゃなくてもっと分かり合わないとダメだよ」


 まるで子供達の喧嘩に割って入り、それを諭す母親か何かのようだった。

 実際彼女の仲裁によって、俺達の言い争いは止まった。恐らくこれから先もこうして彼女から説教を食らうことになるのだろう。


「分かった、分かったから、さっさと出掛けようぜ?」

「え? あ、うん、そうだね。 早く行こっか」


 昔よりはしっかりした性格になったのだろうが、こうして別の話題をぶつけるとすぐにそっちの方へ流される辺りは昔の頃から変わっていなかった。


「……扱いが楽で助かったぜ……」

『……チョロいな……』

「は? お前何言ってんだ?」

『あ? 何だお前やる気か?』

「二人とも‼︎」


 しばらく先までこの魔剣とは仲良くできそうにない、それを確信し、やれやれと溜息をつき、扉を開けてこちらを急かすユリアの後を追って部屋を出た。


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