表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はぐれ魔女と平凡無才の魔剣使い  作者: 阿木津 秋水
はぐれ魔女としがない使用人
41/67

魔剣と私

 

「……あっ……もう無ーーー」


 そう言って彼はベッドに倒れこみ、そのまま死んでしまったかのように動かなくなった。


「……まあ、すごい疲れてたみたいだし、しょうがないよね」


 うつ伏せになって眠っているライルの体はとても重く、仰向けに返すのは、女一人では一苦労だった。

 意識を失った人間がこうも重いとは思わなかった。


「なんだか私も疲れてきちゃったなぁ……」


 ライルがボロボロになっているのを見ていたから気にならなかったが、彼程ではないにせよ、私もまた、相応に疲れていた。


 ライルが眠るベッドにそっと腰掛け、その頬に触れた。

 彼の寝顔はどこかあどけなさがまだ残っており、時たま見せる荒々しさや、普段の飄々としたそれを感じさせなかった。


 思えば、ここ数日で急に色んなことが起きた。

 いるはずのない魔獣が現れ、ライルが屋敷から追い出され、私は村人に殺されかけた。

 あまりにも色々な事があり過ぎて、今でもひょっとしたら夢か何かを見ているんじゃないかと思えた。


 そして彼は私を守る為にここまで傷付いた。そう思うと、胸が痛んだ。

 魔獣を倒した時に受けた呪詛のせいで魔法も一部のものしか使えず、加えて私の性格だ。ライルにとって少なからず足枷になってしまうのは明らかだった。


「……今の私に何ができるのかな……」


 そんな呟きに答える声はなく、放った声は部屋にこだまする事もなく消えていった。


「少しくらい、手当てしてあげないとね……癒しの光(ハイロゥン・リヒト)


 あの時はライルに手を払われてしまったが眠っている今ならば阻まれる事もなく、頬にできていた傷に触れる事ができた。


「いつも強がって無茶してばかりなんだから……」


 赤黒い血がうっすらと残っていた傷口は、指でなぞった所から綺麗に消えていった。


『嬢ちゃん、そいつが好きなんだろ?』

「わわ、急に話しかけてくるからびっくりしたよ」


 さっきまで不貞腐れてなのか別の理由なのか、黙り込んでいた魔剣が唐突に話しかけてきた。


『で? どうなんだ?』

「もう、そうゆう事聞くの良くないと思うなぁ」

『いいじゃねえか、どうせあいつは寝てるんだからよぉ』


 恐らく魔剣は私が答えるまで問い掛けるのだろう。出会ってから日が浅いとはいえ、それくらいはすぐに分かった。


「わかった、答えればいいんでしょ?」

『そうそう、嬢ちゃんは話がわかるみたいでよかったぜ、あの小僧意地でもオレの話を聞かねぇからな』

「それは魔剣さんがすぐライルを煽るからじゃないの?」

『そりゃあ力貸してもらってる側の癖に偉そうにされたら腹立つだろう?』

「ま、まあライルの話し方は人によっては生意気だって思う人もいるかもしれないけど……」

『で? どうなんだ?』


 別に隠しておかねばならない事でもなかったし、隠す気もなかったが、いざ口に出すとなると少しばかり気恥ずかしくなった。


「……好きだよ、ライルの事」

『なら何故小僧に言わないんだ?』

「言ったよ、でもライルは真に受けてくれないんだもの」

『小僧、生意気だけじゃ飽き足らず唐変木か、呆れたもんだぜ』

「好きな人の事悪く言われ続けるのってあまりいい気分じゃないなぁ……」

『おっとスマンスマン、何せこんな性格なんでな。 悪気はないんだぜ?』


 悪びれる様子もなく魔剣はそう放ち、笑うようにガチャガチャと音を立てた。


「むーっ」

『オイオイ、そんな熱い眼差しでオレを見つめないでくれよ?』

「別にそんなのじゃないよ」

『分かった分かった、小僧をバカにしたことは謝ろう、だが小僧も悪いんだぞ?……まあ、オレを引き抜くだけの覚悟だけは認めてやるさ、普通ならビビって逃げ出すからな』


 少し強がるようにそう答える魔剣の様子は、何処かライルと似ているように思えた。


「魔剣さん、素直じゃないでしょ?」

『オイオイ嬢ちゃんそれはあんまり笑えねぇぞ? 変な事を言い出すのはやめてくれよな?』

「だってそうやって意地っ張りな所、ライルに似てるんだもん」


 そう言うと魔剣は不満だったのか、先ほどとは違い、荒々しくガタガタと音を立てた。


『いいか嬢ちゃん? オレは、あんな小生意気な小僧とは違うからな? いいな?』

「そうゆう所、すごい似てるよ」

『だぁ〜っ‼︎ 違う‼︎ オレは‼︎ あの小僧とは‼︎ 違う‼︎』


 あまりにも必死になって違うと言い続ける魔剣に思わず笑いだしてしまった。

 私とライル、そして魔剣。二人と一本しか居ない空間に静かに私の笑い声だけが広がっていった。


『嬢ちゃん、さては性格悪いな?』

「ふふっ、私は魔女だよ? 誰かをからかって面白がるのも嫌いじゃないもの」

『おおう、そいつはおっかねえなぁ……いじるのはあの小僧だけにしてくれよ?』

「ふふ、それはちょっと約束できないかなぁ……」


 少しからかうと困惑し、ムキになって意地を張る魔剣を見ていると、ライルと話している時のそれと似たような気分になった。


『やれやれ、これ先を思うと憂鬱だぜ……』


 魔剣はそう呟くと、大きく溜息を吐いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ