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はぐれ魔女と平凡無才の魔剣使い  作者: 阿木津 秋水
はぐれ魔女としがない使用人
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疲れてるんだよ


「……ったく次から次へと腹立つ事ばっかり起きやがってよぉ……‼︎」


 半ば自暴自棄になりながらサーベルを引き抜き、賊達を睨みつけながらその切っ先を向ける。


「お、おい! たかが一人にビビってんじゃねえ‼︎ こっちは三人いるんだぞ‼︎」

「で、でもよぉ……兄ィ……」

「あいつさっき親分達一瞬で倒しちまったんだぜ?」


 強がる一人を諌めるように残った二人が答える。


「……で? 来るなら来いよ‼︎ 俺の憂さ晴らしの標的になるか⁉︎ あぁ⁉︎……人が寝てる所叩き起こして襲撃かけてきたんだ、やり返される覚悟くらいあるんだよなぁ……?」


 眉間に皺を寄せ、相手を威嚇するように怒鳴り上げる。無論ただの強がりだ。相手がその気になってしまえばこちらは圧倒的に不利だ。例えハッタリだとしても、使わざるを得なかった。


「……人がクタクタになって寝てたのによぉ……よくも台無しにしてくれたじゃねえかよ……?」

「そ、そんなもんこんなところで野宿してるお前らがーーー」

「っせえ‼︎ そんなもん関係ねえ、お前らのせいで俺は叩き起こされて不機嫌なんだよ‼︎」

「そんなの言い掛かりじゃ……」

「言い掛かりだったら何か悪いか⁉︎ 俺は不機嫌だって言ってるんだ‼︎ もういい謝っても許さねぇ‼︎ やっていいのはやり返される覚悟のある奴らだけだよなぁ⁉︎」


 最早自分でも何を言っているのか分からなかった。それ程までに俺の体は疲れ切っていた。それでも無理矢理に動かしてきたせいか、怒鳴り上げるだけでも体がどっと疲れが押し寄せて来る。

 そして、人間が極限まで疲れ切ると自分ですら何を言っているのか分からなくなるという事をひしひしと感じていた。


「ちくしょう! 行け、お前ら‼︎」

「え、えぇ⁉︎ 兄ィ先陣切るんじゃねえのかよ⁉︎」

「いいから行けェ‼︎ はやく‼︎」


 賊達は統率が取れておらず、誰が先に突っ込むか言い争っていた。仕掛けるなら今しかないだろう。

 彼らには悪いが、疲れ切って眠っていた所に襲いかかってきた事への報いを与えるべきであろう。

 今の俺は不機嫌だ。それこそ俺が全知全能の神ならば、今すぐにでも天変地異を起こしてやりたいくらいには不機嫌なのだ。


「……いつまで話してんだよ? 俺は眠いんだ、早く失せろ」


 身を屈め、距離を詰め、突きを繰り出し、賊の頭を狙うも、繰り出された突きは頭に当たらず、賊の手に持ったナイフを払い飛ばした。


「避けてんじゃねえよ‼︎」

「そんな無茶苦ちーーー」


 体が触れるか触れないかの距離でそのまま膝蹴りを繰り出し、鳩尾に叩き込み、相手が前のめりにうずくまりかけた所へ両腕を振りかぶり、真下へと肘から叩き下ろし、賊の背中を強打する。


「がっ……ぁ……あぁ……」

「あ、兄ィ‼︎ テメェこの野郎‼︎」

「……先にやってきたのはお前らだよなぁ?」

「ライル、待って‼︎」


 ユリアの制止に思わず手が緩み、サーベルは少し高い金属音を立てて地面に落ちた。


「なんで止めるんだよ?」

「だってあの二人怖がってるんだもん……」

「いや、お前な……ジュリアンといいこいつらといい、自分の命とか狙って来た奴相手にまで何だって庇うんだ……?」

「でも……やっぱり殺しちゃうのはよくないよ……何か事情があるのかもしれないし……」


 ユリアの優しさは勿論彼女の長所だ。だがそれは時に行き過ぎたものになる。それがまさに今起きている。

 彼女は人を恨まない、実際に恨んでいないのかは分からないが、少なくともそれを外に出すような人間ではない。例え自分の命を狙って来た相手だったとしても。


「……分かった、殺しやしないしそこまで体力残ってねえよ」


 足元で蹲る男の襟首を掴み、そのまま引きずって慌てふためく賊二人の前に放り出す。


「なあ、お前ら今すぐここから立ち去るか?」

「あ、あぁ…立ち去るとも、もちろん!」

「じゃあそこで伸びてる三人連れてさっさと失せろ、今すぐにな」


 情けない声を上げながら伸びている仲間を引きずり、逃げて行く賊の足音を聞きながら、サーベルを拾い、鞘に収めた。


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