表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はぐれ魔女と平凡無才の魔剣使い  作者: 阿木津 秋水
はぐれ魔女としがない使用人
37/67

夜襲


 パチパチと枝を鳴らしながら、焚き火は消える事なく灯り続けていた。

 その灯りは獣達を除ける為に灯されたものであった。しかし、村や街の外、旅の道中に現れる脅威は獣達だけではない。

 その一つが、今まさにやって来ようとしていた。


『……ん?……あー……やだねぇ、いつの時代にも物盗りってぇのはいなくならないもんだよなぁ?』


 魔剣には見えている。松明を持ち、こちらへ向かってくるそれが、はっきりと見えていた。


『起きろ小僧、賊だ。 物盗りだ』

「…………」

『はー、ったく使えねえなぁオイ?……起きろ‼︎‼︎』

「……なんだよ……頭痛えじゃねえか……」

『寝ぼけてる場合か? 早く起きろ』

「……は……?……何言ってーーー」

 

 怠く重い瞼をこじ開けると、目の前には鈍い銀色の刃の切っ先を向けられていた。

 少し上を見上げると、口元の髭が伸び放題になった男の下卑た笑みが見えた。

 微睡み、霞んでいた視界でもそれはよく分かり、微睡みから一瞬で覚めた。


「……っ……」

「よう、お目覚めか? 旅人様よぉ」

「初っ端から賊かよ……ツイてねえ……」


 幸いにも魔剣に無理やり叩き起こされた為、魔剣は奪われておらず、この手でしっかりと掴んでいた。

 視線を少しずらすと、賊は他にも数名おり、視認できる限りで五人、さらに数名いるかまではよく見えず、把握できなかった。

 俺に刃を突き付ける男が一人、ユリアを起こし、その首筋に刃を向け、こちらに下卑た笑みを向ける男が一人、残りは荷物を漁っていた。


「……ライル……どうしよう……」

「そう怖がるなって、そんな事よりねーちゃん随分かわいいじゃねえか。 そんなヒョロい兄ちゃんなんかほっといて俺らと楽しい事しようぜ?」

「……えっと……」


 下卑た笑みにユリアは困惑とも恐怖とも取れる顔でこちら見つめていた。


「……で、何が目当てなんだよ? 積荷か? 殺しか?」

「両方、と言ったらどうするよ?」

「両方……そりゃ俺達二人をぶっ殺した上で荷物もぶん取るって了見か?」

「当然だろう?……そうだな、女は楽しんでからにするかねぇ……」

 

 この輩に対してただ何もせず、みすみす積荷も命を差し出す気もない。その為の魔剣がここにある。


「……今、ユリアを殺すって言ったな?」

「あぁ? 何言ってんだお前?」

「……答えろよ、俺だけじゃなく、そこの女も殺すって、今言ったな?」

「……だったら何だよ、命乞いなんざ聞かねえぞ?」


 答えた。連中は俺達を、ユリアを殺すと確かに答えた。それならば、これ以上脅される側である必要はもう無いだろう。


「……応えろ……」

「ゴチャゴチャうるーーー」


 怒鳴り声を上げかけた賊を薙ぎ払う様に魔剣を右手で引き抜き、振り払う。

 振り抜かれた魔剣の腹は賊の頭を捉え、ゆっくりとその顔を歪ませ、吹き飛ばした。

 吹き飛ばされた小太りなその体はゆっくりと錐揉みに回転しながら飛んで行った。

 吹き飛ばされる最中に上げる悲鳴は遅く、先程よりも野太く聞こえた。


「なっ⁉︎ てめーーー」


 そう怒鳴り、ユリアに突き付けていたナイフをこちらに向けてくるも、その動きよりもこちらの方が速かった。


「ーーーがあっ‼︎」


 ゆっくりとこちらへ向けられるそれを躱し、その顔を左手で掴み、そのまま押し込み、その後頭部は地面にめり込んでいた。


「うわぁぁぁ‼︎ テメェ何しやがる⁉︎」

「それはこっちのセリフだろうが‼︎ 仕掛けてきた奴が何言ってやがる‼︎」

「う、うるせぇ‼︎ こっちはまだ三人いるんだぞ‼︎ 死ねやぁぁぁぁ‼︎」


 先の二人を倒されて尚、賊は退くことはなく、腰に提げていたサーベルを引き抜いた。


『おい小僧、早く終わらせろ、お前が寝てる間の見張りで俺は眠いんだよ、つーか寝る、あとは自分で頑張りな』

「は? おい、ちょっと待て、ちょっと待てよ‼︎ おい‼︎」


 その問い掛けに魔剣が答えることはなく、魔剣を納めていた鞘は霧散し、魔剣を覆うように集まると再び鞘の形を成し、その刀身は鞘に納められてしまった。


「あらら、鞘に収まっちゃった」

「……この野郎話と違うじゃねえかよ……」


 魔剣は言っていた筈だ。お前が何かを護る為に力を求めるならば、お前に力を貸す。確かに魔剣はそう言っていた。

 だが賊はまだ三人残っている。話と違うじゃないか。

 そんな思いをぶつけるように魔剣を睨みつけた後、俺は執事長から渡されたサーベルの柄に手を掛けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ