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はぐれ魔女と平凡無才の魔剣使い  作者: 阿木津 秋水
はぐれ魔女としがない使用人
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一方的な要求

 少し前に受けた矢で出来た脇腹の傷を撫りながら歩いて行くと、ユリアは心配そうな顔でこちらを見つめていた。その側で、地主が化け物でも見るような様子でこちらを見つめていた。


「……おい……」

「……ひぃぃぃぃ!……誰か! 誰か助けてくれぇ‼︎」


 胸倉を掴み、持ち上げると、地主は情けない叫び声を上げ、じたばたと暴れ回った。


「……この……っ‼︎」

「わぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」


 力一杯に投げ飛ばすも、先程ジュリアンにやったものには到底及ばず、地主はすぐ近くに転がった。


「うぁぁぁぁぁぁ‼︎ 痛い…痛いよぉぉぁぁぁぁぁ‼︎」

「……うるせえぞ……泣き喚いてんじゃねえよ……殺すぞ……」


 執事長から譲り受けたサーベルを引き抜き、地主の顔のすぐ横に突き立てた。


「……あぁ……あぁぁぁ……嫌だぁ……死にたくない……」

「……こいつ……」

『まあ落ち着けよ、こいつを利用するんだろ? 殺しちまったら利用もクソもねえぞ?』

「……殺しはしねえよ……ただ、知ってる事全部吐け……ユリアを殺すように指示したのはあんたか?」

「ち、違う……僕じゃない……魔女狩りを提案してきたのはジュリアンだ……僕はやってもいいって言っただけで……僕は……僕は悪くない……だから……」

「……だからじゃねえクソ地主‼︎ てめぇのせいで屋敷の使用人ほぼ死んだ上に村の狩人達も死んだんだぞ……」


 憤りに身を任せ、鳩尾を踏みつける。

 無駄に肥え太った地主の腹には、然程大きなダメージにはならないのだろうが、それでも少しの間、地主は咳き込んでいた。


「あがっ‼︎……かはっ……ゲフッ……」

「まだ聞きてえ事はあるんだよ……ジュリアンは何処から魔法の使い方を知った? 何処から魔導具を仕入れた?」

「……わ、分からない……ただ、急にジュリアンがいつも以上に自信ありげに魔女狩りを提案してきただけで……僕は何も知らない……知らないんだよ……」


 恐らくこれ以上何か情報はもう引き出せないだろう。ハッキリしない部分を知るための手掛かりになりそうな情報も得られなかった。


「……わ、悪かった……悪かったよ……謝る……謝るから……許してくれぇ……ライルぅ……」

「……許さねえよ、許す訳ねえだろ?……代わりに諸々要求飲んでもらうぞ……」

「……わ、分かった……な、何でもいい、何でも言いつけるといい、全部手配するよ……」

「話が早くて助かる。 まず俺たちが村を出る為の準備路銀、食糧も含めてだ。 次にジュリアンを拘束して地下房に閉じこめること……最後に、二度と俺たちに関わるな、いいな?」

「い、今すぐにでも手配を……あ、使用人が……」


 地主は自身に仕える使用人がもういない事に気付き、その事実に戦慄し、その顔は青ざめ、額には脂汗が浮かんでいた。


「お前がやるんだよ」

「へ?」

「お前が全部準備しろって言ってるんだよ

「……もういい、屋敷から持って行けるものは勝手に持って行かせてもらう。 あんたは早く金を持ってこい。」


 そう言いつけると、地主はノロノロと走りながら屋敷の方へ向かって行った。

辺りを見回すと、村の家々の扉が半開きになっていたが、こちらが動くや否や、皆慌てて扉を閉めていった。


「……ねぇ、ライル……」

「……どうした」

「……ごめんね……私のせいで……」

「気にするなって、どの道俺も屋敷追い出されてたし、行く場所なんて無いんだからさ」


 こちらを見上げる彼女の目には再び涙が浮かんでいた。

 血で汚れた手を四つ折りにしてあった白いハンカチで拭った後、ユリアの頬に触れ、涙を拭った。


「そんな顔するなよ、お前は何も悪く無いんだからさ」

「……うん……」

「それより屋敷で準備しちまおう、今なら色々持ち出し放題だぞ」

「本当にいいのかな……?」

「向こうが勝手に仕掛けてきたんだ、こっちだって美味い思いさせてもらったっていいだろうさ」


 ユリアに屋敷へ向かうように促し、俺達は屋敷へ向かった。


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