見えざる声 1
突然聞こえるはずのない声が聞こえ、箱に掛けた力が抜け、ドスンという鈍い音を立て、箱は地面に落ちた。
「……誰だ……?」
辺りを見回しても自分と執事長以外に人の姿はなかった。
「……今のは……?」
「どうした?まさかお前も妙な声が聞こえたのか?」
「いや〜、まさかぁ〜?空耳じゃあないですかね?」
「……そうか……ならいいのだが……。」
気を取り直し、再び箱を持ち上げると、再び妙な声が聞こえた。
『おいおい、無視とはいただけねえなぁ?』
今はそれどころじゃないんだ、少し静かにしててくれ。
『ククク、まあ近くにお前以外の人間もいる事だ、今は大人しくしててやるよ』
どうやら少しは理解のある存在らしい、こちらが返答できないとわかるとすぐに大人しくなった。
「ここに置いておけばいいですかね?」
「うむ、御苦労だった、次は……魔女の世話をして来い。」
「だぁーからあの子は魔女じゃないですよ〜」
「無駄口を叩くな、いいから行け。」
「……はーい、わかりましたよ〜」
少し悪態を吐くように返事をし、踵を返すと、再びあの声が聞こえてきた。
『よう、小僧、もう人の話に返答貰ってもいいよなぁ?』
「誰なんだあんたは?」
『とぼけるなよ?どうせ大体見当はついてるんだろ?』
概ね声の主が誰なのかは想像がついた、ただ確証もなかった。
「……申し訳ないんだけど、さっきの聞いてなかった?俺これから仕事なんだけど?」
『別に時間なんざ取りゃしねえさ、お前が俺の問いに答えさえすればな。』
「問いって何さ?」
『さっき言っただろう?力が欲しくはねえか?ってよぉ?』
それはまるで悪魔の誘惑のそれであった。続いて引き寄せられるかのように、気付けばさっきの妙な箱の前まで来ていた。
『そうだ、俺はこの中だ、狭いし暗いし窮屈なんだよ。なぁお前、俺を外に出してくれねえか?』
「俺にそんな権限ないんだけどなぁ……、てか俺は力に興味なんてないし、他所を当たってくれよ。」
『釣れねえ奴だなぁおい?お前がおれをここから出してくれるなら、お前の願いを叶えてやるって俺は言ってるんだぜ?』
「叶えて欲しい願い事なんてないよ。」
言葉と裏腹に、その手は箱に掛けられていた。そしてその留め具に手を掛けた瞬間、何かに後ろから肩を掴まれ、後ろに引き倒された。




