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はぐれ魔女と平凡無才の魔剣使い  作者: 阿木津 秋水
はぐれ魔女としがない使用人
19/67

高圧的

 それから自分の部屋に戻る途中、ジュリアンと出くわした。

 その顔はいつもより自信に満ちており、こちらを見下すような雰囲気は相変わらずだった。


「除け者同士で慰め合いか?」

「いや、除け者にしてるのはお前らだけだろ……」

「ふん、好きに言うといい、君らが何を言った所で誰も耳を傾けないからな」

「はいはい、すごいすごい。 流石出来のいい使用人様は言うことが違うわな」


 少し癪に触ったのでそう返すと、案の定ジュリアンはこちらの思惑通りムッとした顔になり、噛み付いて来た。


「はっ! 下っ端風情が調子に乗るな!」

「別に調子乗ってる訳じゃないんだよなぁ……」


 ジュリアンは顔を真っ赤にして騒ぎ立てる。その騒ぎ立てる様子はまるで猿のようであった。


「っ! いつまでもそうやって調子付いていられると思うなよ⁉︎」

「あーはいはい、謹んでりゃいいんだろ? わかったわかった、とりあえず落ち着ーー」


 言い切る前に拳が飛んでくる。案の定ではあったが、こうも挑発に弱いとは思わなかった。優秀なのだろう?この程度の挑発に簡単に釣られるなよ。     そう思いながら体を反り、拳を躱す。

 拳は空を切り、ジュリアンはそのまま体勢を崩し、こちらへ倒れかかってきた。


「おいおい、そうカッカするなって。 

所詮下っ端の能無しの挑発だろ? ムキになるなよ」

「お前のその飄々としたその態度が気に入らないって言っているんだッ‼︎」


 倒れかかった所を俺に支えられ、更に挑発を受けたのが気に食わなかったらしく、ジュリアンは更に暴れた。

 先の大狼との戦いの際に受けた傷が痛んだ。


「わかったわかった、わかったから落ち着け。 こっちも体中痛えんだよ」

「黙れぇッ‼︎ お前の都合など知るかッ‼︎」


 駄目だ、完全に頭に血が昇りきってしまっている。こうなってしまうと手の付けようがない。

 


「そい!」

「あっ…ガァッ‼︎」


 ジュリアンのこめかみ目掛けて拳を叩き込む。


「ったく……体中痛えんだから手間かけさせんなよ……あー痛え痛え……」

「あっ……ううっ……あう……」


 こめかみへの一撃で脳震盪を起こしたのか、ジュリアンはふらつき、壁に手をつき、顔を振った。


「……毎度毎度……よくもやってくれたな……」

「じゃあやられる前に頭冷やして人の話聞けよ?」

「お前が僕に指図をするなぁッ!」

「だからそうやって人の話聞かないで取り乱すからそうなるんだろ……」


 こういったやりとりをしたのももう何度目だっただろうか。

 依然としてジュリアンの高圧的な姿勢は変わらない。


「……まあいいさ……お前がそうやって余裕ぶっていられるのも今のうちだけだからな……」

「すまん、そんな状態で言われても精一杯の強がりにしか見えないぜ……」

「どうとでも言えばいい、僕に今まで取ってきたその態度を後悔させてやるからな……」


 こめかみの辺りを押さえ、ふらふらとした様子でそう言い放ち、ジュリアンは俺の横を通り過ぎて行った。


「……執事長の読み通りなのかねぇ……」


 執事長の言ったそれが当たっているならば、恐らく俺はこの屋敷から追い出されるかもしれない。

 屋敷を追い出される。それはすなわちこの村における俺の肩書きや立場が全て失われる事を示していた。

 村人達も、屋敷を追われた人間を養う程心は広くない。ともなればーー


「……旅、か……」


 村にもいられなくなる事を考えれば、恐らく旅に出る他俺が選べる選択肢は他にないだろう。

 とはいえそれは然程問題ではなかった。それより気掛かりなのはユリアの事だった。

 彼女が魔女という事もあってか、使用人達も彼女の事は避けていた。

 俺が去った後、彼女が蔑ろにされる事がなければいいのだが、恐らくそれは叶わぬ願いだろう。


 とはいえまだそうだと決まった訳ではない。これ以上事を悪く考えるのはやめておこう。気に病み過ぎても何が変わる訳でもないのだから。


 そう気持ちを切り替えた頃にはもう自分の部屋の前まで辿り着いていた。


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