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はぐれ魔女と平凡無才の魔剣使い  作者: 阿木津 秋水
はぐれ魔女としがない使用人
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疑念

 屋敷に戻り、扉を開けると、広間で執事長とジュリアンが何かを話していた。内容は恐らく先程の大狼の事だろう。

 ジュリアンはどこか焦るような様子でまくし立てており、執事長は渋い顔をしていた。


「だから言ってるじゃないですか!魔女の小屋の近くでーー」

「あー、すいません遅くなりました〜」


 ジュリアンが言おうとするのを遮るように遅くなった帰りを告げる。


「……その服はどうした、ボロボロじゃないか」

「いやー、まあ色々ありまして……ははは……」


 苦笑いしながら適当にはぐらかすも、執事長は怪訝そうな顔のままだった。


「これがさっきの話の証拠ですよ‼︎ 現にライルがこうしてボロボロになって帰ってきたじゃないですか‼︎」

「……それはそうだが……で、どうなんだ? ライル、お前からは何かあるか?」

「あー……なんかでっかいのがどーだのとかそんな話ですか?」


 あくまでも具体的には話さず、適当にはぐらかした。言って信じてもらえる筈がない。この近辺で魔物の類や巨大な獣が出た、なんて話を聞いたことがなかったからだ。


「知っているなら話せ」

「いやー、そうは言っても……熊より大きい狼なんて俺たちの見間違いじゃないんですかね?」

「大狼か、この辺りで出たという話は聞いていなかーー」

「ーーつ、使い魔です‼︎ 魔女の‼︎」


 執事長がそう言い切る前に、ジュリアンが は再び被せ気味にそう言った。


「使い魔? あのはぐれ魔女のか?」

「は? ジュリアンお前何言ってーー」

「ーーそうです! 確かに見たんです! あの森の近くに魔法陣があって……そこから獣が出てきて……」


 ジュリアンのその喋り方は、人に濡れ衣を着せるそれに似ているような気がした。そもそもあの大狼がユリアの使い魔だったのなら、俺や彼女に襲い掛かるはずがない。彼女がそうさせるはずがない。


「ジュリアン、それは魔女が使い魔を呼び出す瞬間を見て言っているのか?」

「……それは……」

「ーーあの子はそんな事するような子じゃないですよ」


 ジュリアンが言い淀んだところに割り込み、彼女の潔白を主張しようとした時、ロビー二階の奥の扉、この屋敷の主人。地主の書斎の扉が開いた。


「おおーい、ジュリアンいるか〜?」


 書斎から出て来た男。小太りで目は細く、意地汚そうな顔をしたこの男。この男こそ、この屋敷の主人であり、この村を治める地主である。


「は、はい! 自分はこちらに!」

「ちょっと仕事頼みたいんだけど〜いいかな〜?」


 どこか間延びしたようなねっとりとした口調と下卑たその表情は、屋敷の使用人達からもあまりよくは思われていない。


「なんだぁ〜? ライル、お前何でそんなみっともない格好してるんだよ?」

「これは……」

「言い訳とか聞いてないから〜。 僕の屋敷の使用人がそんなみっともない格好してるのとか不愉快なんだけど〜」

「……申し訳ありません……」

「まあいいや、ジュリアン〜それじゃちょっとこっち来てもらえるかな〜」


 そう言って地主はジュリアンを呼びつけた。

 今ではもう慣れた事ではあったが、俺はこの地主のああいった振る舞いや、媚びいるようなジュリアンのそれが気に食わなかった。

 通り過ぎざまにジュリアンがほくそ笑んでいる。そんな気がした。


「で、こうゆうのお願いしようと思ってさ〜」

「このジュリアンめにお任せーー」

 

 扉の閉まる音を聞きながら、握った拳に力を込め、気怠げに書斎の扉を見つめる。


「……アホくさ……」

「ライル、口を慎め。 仮にも主人なんだ、不満だとしても堪えろ。」

「仮にもって事は、執事長も思う所があるんですか?」


 そう問い掛けると、執事長は渋い顔をした後溜め息を吐いた。


「先が聞きたいなら、私の部屋へ来い。 ここでは色々面倒だ」

「了解であります」

「お前は兵士ではなく使用人だろう」


 そんなやり取りの後、俺達は執事長の部屋へ向かった。


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