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 暑さがひと段落した後の長雨が来る前に。


 客間から続く作業場の壁から壁へ、取り付けられた錆びない鉱石で出来たフックにロープを通す。

 重ねないように三本目を交差させるところへ、通算五本目を棒のような足にぶら下げた黒い毛玉がふらふらと視界の端を横切った。

「まぁ、こんなもんかな」

 今回は手伝いがあった分、いつもより量が多い。

 これで足りなければ水場にもロープをかけないといけないが、まぁ、なんとかなるだろう。

 束ねたハーブを引っ掛け、紐で括り付けていく。

 こういったものは一度水で流してあるから、それこそ洗濯物と同じで、少しずつ間を開けて干さないと乾きが悪いような気がする。

 粗方の水滴は落としてあっても、だ。

 搾るわけにもいかないしな。まー、そーいうのもするけど。それは次だな。

 部屋の角、一番低く張ったロープに俺が触れられないものを使い魔が並べていく。

 明りを反射してそこだけキラキラと赤く輝いている。

 あれは乾燥しきっていればいいのだが、表面にジワリと出てくる粘膜のような液体が良くない。

 酷い場合は皮がずるりと剥けてしまう。

 人間でなければ大丈夫で、これを好物だというやつもいる。甘酸っぱいらしいその生の味を味わえないのは残念だが、冒険をするつもりはない。

「おい。そっちの窓よろしく」

 窓を手近なところから開け放つ。

 一番裏手の水場から表側のキッチンの窓まで全部。

 外側の見た目に拘りを持つ作成者の趣味で嵐用の鎧戸はついているが、全てがなにかしら魔法でコーティングやらをかけられたログハウスではただの装飾で、使ったことがない。

 日差しはまだまだきついが、部屋を吹き抜ける風は涼しい。

 二、三度うねるような風が流れ、客間にある使い魔の場所の布を小さくふわりと揺らす。

 かなりの強さだったが、ちゃんと押さえをしているらしくそれ以上の動きはなかった。

 下の階にカーテンを付けた窓はない。

 誰かが泊まる時と暑い季節に布をかけることはあるが、その他では邪魔になるだけだからだ。



 一仕事終えてキッチンを覗けば、黒い毛玉があちらこちらと飛びまわり鍋を揺すっているところだった。

 そんなに時間はかからないだろうと当たりをつけ、棚からグラスを一つ取って客間兼リビングに戻る。

 テーブルの水差しからグラスに半分ほど注いだ。

 そうして喉を潤しながら荷物袋を開ける。

「そうそう。これこれ」

 海底都市での戦利品の内、まるでユリ根のような花を一つ取り出した。

 それは実でもあり本来ならそのまま食べるようなもので、味見もしたが柔らかな甘さで瑞々しい。

 大きさはそこそこ大きい。

 外側から手のひらほどもある花びらを十ほど剥がし、残りはまた袋に戻した。

 ……あまり散らかすと使い魔がうるさいからな。

 その肉厚の花びらを、表面を破らぬようにゆっくり指先で中だけを潰していく。

 とりあえず半分そうして、何もしていないモノと同じように並べて針を刺した。

 原雨の雫で作った酒の種をその穴にたらした後、小さな紙きれを張り付けて塞いだら出来上がり。

 さーてと。どっちがうまくできるかな。

 地下に運ぼうと、鼻歌交じりに視線を上げれば相棒がその目を見開いてこっちをガン見していた。

「……あー。すぐ行く」

 先に飯だな。

 立ち上がり、伸びを一つしてキッチンに向かった。

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