第1話:魔王城乗り込みと、魔王ヴァルザード
崩壊した前線基地を抜け、俺はついに敵の本拠地――魔王城の最奥、『玉座の間』へと足を踏み入れていた。
不気味な紫色の瘴気が渦巻き、天を突くほど高い天井からは巨大な大燭台が吊り下げられている。
「……よくぞここまでたどり着いたな、王国の『聖者』リアムよ」
玉座の間に響き渡るのは、空気を激しく振動させる地鳴りのような重低音。
玉座からゆっくりと立ち上がったのは、全身を漆黒の魔甲冑で包んだ巨大な存在――魔王ヴァルザードだった。
その背からは絶望を体現したような凄絶な魔力が溢れ出し、部屋全体の空気が鉛のように重くのしかかってくる。
「我が部下どもを次々と撃破し、単身で我が居城へと乗り込んでくるとはな。……フハハ、良い面構えだ。己の命を捨て、世界を救うためにここに立ったというわけか」
ヴァルザードが禍々しい大剣を引き抜くと、俺の視界には過去最大級に眩い青いウィンドウが躍り出た。
【対象:魔王ヴァルザード(魔界の絶対者)】
※全存在を崩壊させる『神滅の魔力』および『概念破壊攻撃』を常時展開中。
【警告】接触により、全細胞の破壊および魂への直接的激痛が発生します。
(全細胞の破壊……!? 魂への直接的激痛……!?)
俺の全身の毛穴という毛穴が歓喜で打ち開いた。
耐性スキルの防壁すら粉砕しそうな、文字通りの『超次元・神級ご褒美』!
学園での退屈な日々も、耐性生えまくり問題の絶望も、すべてはこの瞬間のためにあったのだ!!
(ヴァルザード様……! あなたこそが僕の求めていた真のエンジェル(ご褒美供給者)だ……!!)
「ヴァルザード様! お願いします、僕にあなたの最高の攻撃を叩き込んでください!!」
俺は抑えきれない感動と歓喜の笑みを浮かべ、両手を大きく広げて一歩踏み出した。
「……何?」
ヴァルザードの眉根がピクリと動いた。
(この圧迫感の前に一歩も退かぬどころか……命を乞うでもなく、自ら両手を広げて前に出てくるとは……!?)
魔王の瞳に、強い驚愕と警戒の色が走る。
「……フッ、ハハハ! 命を投げ打つ覚悟はとうに完了しているというわけか! 良いだろう、ならば我が誇る最強の一撃でお前を肉片に変えてくれる!!」
ヴァルザードが大剣を頭上高く振りかぶった。
漆黒の魔力が暴風となって吹き荒れ、玉座の間全体がミシミシと悲鳴を上げる。
「喰らうがいい! 我が誇る最高位破壊魔法――『神滅斬』をなぁぁぁッ!!」
振り下ろされた大剣から、空間そのものを切り裂く漆黒の斬撃波が放たれた。
ズドォォォォォォォォォォンッ!!!
「――っっっ~〜〜〜〜〜!?!?!?」
(ひぃぃぃぃぃぃッ!? 最高!! 脳みそだけじゃなくて魂までトロトロにとろけるぅぅぅッ!!)
全身の細胞が瞬時に破壊され、即座に回復する超高速ループ!
魂を直接叩かれるような強烈な痺れと激痛が、脳内でビッグバン級のエンドルフィンを爆発させる!
【固有スキル:『痛覚=昇華』発動中】
概念破壊・神滅属性ダメージを検知 ──> 脳内麻薬(測定不能)に変換します。
【ステータス変動】
HP:15/15(※概念レベルで爆速全回復中)
STR:650 ──> 2,500(UP!)
VIT:15,000 ──> 99,999(真・限界突破)
概念破壊耐性:獲得
(あぁぁぁぁ……! 最高……! 最高のウェルカム攻撃をありがとうヴァルザード様ぁぁぁッ!!)
俺はあまりの至福にその場に倒れそうになりながらも(※快感で腰が抜けているだけ)、うっとりと瞳を潤わせた。
パッシブスキル『恍惚の鉄壁』が発動し、俺の絶頂顔は『世界の崩壊すら笑って受け止め、魔王の絶対的な暴力にすら静かな慈愛をたたえて立ち続ける神々の如き聖者』の顔へと補正される。
「……ッ、ハァ、ハァ……! いいぞ……! もっとだ……もっとちょうだいヴァルザード様……ッ!(※おかわり熱望)」
煙を押し分けて姿を現した俺を見て、魔王ヴァルザードは手にした大剣をあやうく落としそうになった。
「ば……バカな……ッ!? 我が『神滅斬』を真正面から浴びて……無傷……だと……!?」
魔王の背筋に、生まれて初めての『恐怖』という感情が突き走るのだった――!




