第2話:悲劇!『耐性スキル』生えまくり問題
「死ね死ね死ねぇぇぇッ! 激痛に転げ回り、乞い願いながら泣き叫びなさいッ!!」
ビシィッ! バシィッ! ドガァァァンッ!
黒鉄の砦の中央広場に、裂帛の鞭音と漆黒の電撃が連打となって響き渡る。
「――っっっ~〜〜〜〜〜!?!?!?」
(ひ、ひぃぃぃぃぃぃッ!? 5連撃目! 10連撃目ぇぇぇッ!!)
拷問官ヴェロニカが放つ渾身の連続拷問攻撃。
鞭が身体に巻き付くたび、黒い電撃と神経を焼き切る激痛が暴風となって俺の全身を襲う。
1発ごとに脳内麻薬がドバドバと決壊し、全身の細胞が歓喜で打ち震えていた。
(あぁぁぁ……最高! 最高のフルコースだよヴェロニカさん! 脳みそがトロトロに溶けて蒸発しちゃう……っ!!)
俺は至高の快感に包まれ、その場にガクガクと膝をつき(※快感で腰が抜けているだけ)、うっとりと瞳を潤わせていた。
もちろん、パッシブスキル『恍惚の鉄壁』により、その絶頂顔は『凄惨な拷問に晒されながらも、一歩も引かずに相手の不浄を受け止める神々しい聖者』の顔へと完璧に自動補正されている。
だが――絶頂の最中、頭の中で嫌な電子音が鳴り響いた。
ピコーン!
【通知:一定量以上の激痛・呪いダメージを継続検知しました】
【パッシブスキル:『電撃耐性(極)』を獲得しました】
【パッシブスキル:『精神耐性(完全無効)』を獲得しました】
【パッシブスキル:『物理耐性(極)』を獲得しました】
(……え?)
次の瞬間、全身を包んでいた甘美な痺れと激痛が、スッと潮が引くように消え去った。
ビシィッ!!
ヴェロニカの鞭が、力任せに俺の首筋を捉える。
(あれ……? 痛くない……? 刺激が……来ない……!?)
もう一発。バシィッ!
(うそ……うそでしょ!? 蚊に刺されたくらいの痒みしか感じない……!?)
俺は青ざめて視界のステータス画面を凝視した。
【現在の耐性一覧】
・物理耐性(極) ──> ダメージ99%カット
・電撃耐性(極) ──> ダメージ99%カット
・状態異常・呪い ──> 完全無効化
(やだあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!? 耐性スキル生えちゃったぁぁぁぁッ!!)
絶望。まさに天地がひっくり返るほどの激甚な絶望が俺を襲った。
耐性が生えたせいで、せっかくのヴェロニカさんの極上拷問攻撃が、ただの『ぬるいマッサージ』に成り下がってしまったのだ!
(やだやだやだ! 痛くない! 気持ちよくない! スキルOFFボタンどこ!? 消去ボタンはないの!? システムのバカァァァッ!!)
俺は耐性が生えてしまった悲劇のあまり、顔を覆ってボロボロと大粒の絶望の涙を流した。
「う……うああぁぁぁぁぁッ!!(※激痛が消えて本気で悲しい)」
しかし、その絶望の叫びを聞いたヴェロニカと周囲の反応は、まったく別の方向へ突っ走っていた。
「ハッ! やっと鳴き声を上げたわねガキが! どう、私の拷問の苦しみは――」
「ちがう……ちがうんだよヴェロニカさん……っ!」
俺はボロボロと涙を流しながら、膝立ちのままヴェロニカへと向かって手繰り寄せるように前進した。
「もっと強く……! もっと強い毒とか、もっと痛い攻撃はないの!? こんなの全然足りないよ……! お願いだから僕をもっと痛めつけてぇぇぇッ!!」
「……は?」
ヴェロニカの顔から、血の気が引いた。
涙をボロボロと零し、必死な形相で自分に向かって這い寄ってくる少年。
その瞳には、恐怖など一微塵もなく――ただただ『足りない』という狂気的な渇望だけが宿っていた。
「な……なになになにこいつ……!? 痛めつけて……だと……!?」
「お願いだよヴェロニカさん! 僕を捨てないで! もっと凄い拷問を頂戴ぇぇぇッ!!」
「ひっ……! 来ないで! 近寄らないでぇぇぇッ!!」
狂気的なまでのドMの執念(※本人は至って必死)に圧され、ドSの拷問官ヴェロニカは、ガタガタと震えながら後退を始めるのだった――!




