第1話:魔王軍幹部・拷問官ヴェロニカ襲来
王都から急行した俺たちが到着した時、最前線『黒鉄の砦』は凄惨な光景に包まれていた。
黒煙が天を突き、破壊された城壁の各所から悲鳴と怒号が響き渡る。
「ヒャハハハハ! 泣き叫べ、人間ども! 我が激痛の鞭で全身の皮膚を剥ぎ取ってやるぞぉ!」
砦の中央広場で高笑いを上げていたのは、背中に漆黒の翼を生やした淫靡かつ残虐な女悪魔――魔王軍幹部の一角、『拷問官』ヴェロニカだった。
彼女が手に持った妖しく光る黒鞭を振るうたび、黒い電撃と激痛の波動が散り、王国兵たちが苦悶の声を上げて崩れ落ちていく。
「くっ……手出しができません! あの鞭に触れただけで、肉体が裂ける以上の凄絶な激痛が神経を破壊するのです……!」
付き添ってきたアルフォンスが、剣を握り締めながら歯噛みする。
だが――俺の視界には、すでに後光が差すような神々しい青いウィンドウが躍り出ていた。
【対象:ヴェロニカの『ペイン・ウィップ(魔界拷問鞭)』】
※超高濃度の激痛呪い・電撃・皮膚切削刺激を含有。
【警告】通常の人間が受けた場合、一撃で精神破壊・ショック死の危険あり。
(一撃で精神破壊……!? 皮膚切削と激痛呪いと電撃の三重奏……!?)
俺の全身の血液が、沸騰したように激しく滾り始めた。
(学園での退屈な日々を耐え抜いた甲斐があった……! まさかこんな『超プレミアム・トリプルご褒美フルコース』が待っているなんて……!!)
「リアム様、危険です! 私が前衛に――」
「出ないで、アルフォンス!」
俺はアルフォンスの制止を制し、自ら進み出てヴェロニカの前に立ちはだかった。
「……あぁ? なんだそのガキは?」
ヴェロニカが舌なめずりをしながら、冷酷な瞳で俺を見下ろす。
「見たところ、高貴な騎士様のようだが……フフ、いい度胸ね。その可愛い顔が激痛で歪み、鼻水と涙でぐちゃぐちゃになる姿を見せてちょうだい!」
シュバァァァッ!!
空気を鋭く引き裂く音とともに、ヴェロニカの黒鞭が俺の胸元へと一直線に襲いかかってきた。
(きたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 待ってたよぉぉぉッ!!)
俺は避けるどころか、むしろ両腕を広げてその一撃を全身で受け止めた。
ビシィィィィィンッ!!!
「――っっっ~〜〜〜〜〜!?!?!?」
(ひぃぃぃぃぃぃっ!? 最高!! なにこれ皮ふを溶かす毒の1,000倍ダイレクトに脳みそに効くぅぅぅっ!!)
鞭が接触した瞬間、全身の肉体が引きちぎられるような感覚と、黒い電撃、そして脳を直接殴られたかのような強烈な拷問呪いが暴風となって吹き荒れた。
脳内で過去最大級のエンドルフィンがダムの決壊どころかビッグバンレベルで爆発する!
【固有スキル:『痛覚=昇華』発動中】
魔界拷問激痛・精神破壊呪いを検知 ──> 脳内麻薬(超極大)に変換します。
【ステータス変動】
HP:15/15(※高速自動回復中)
STR:180 ──> 320(UP!)
VIT:500 ──> 999(測定不能レベルへ)
呪い耐性(特大):獲得
(あはぁぁぁぁ……! 素晴らしい……! 脳みそが完全に液体になって耳から流れ出ちゃいそう……っ!!)
俺はあまりの快感に、その場に崩れ落ちそうになりながらも(※恍惚で腰が抜けているだけ)、うっとりとした恍惚の息を漏らした。
当然、悪魔のパッシブスキル『恍惚の鉄壁』が牙を剥く。
弛緩し切った俺の絶頂顔は、即座に『邪悪な拷問の激痛に晒されながらも、一切の悲鳴を上げず、相手を包み込むような哀れみの笑みを浮かべる神々しい聖者』の顔へと強制補正された。
「……ッ、ハァ、ハァ……! いい攻撃だ……ヴェロニカさん……(※最高の褒め言葉)」
「な……なにぃ……!?」
勝ち誇っていたヴェロニカの顔から、一瞬で笑みが消え去った。
(バカな……!? 『ペイン・ウィップ』の直撃を受けて……悲鳴一つ上げずに笑っているだと……!? 普通の人間なら発狂して自分の舌を噛み切るほどの激痛なのよ……!?)
ヴェロニカの背筋に、ゾワリと冷たい悪寒が走った。
(しかもあいつ……今、なんて言った……? 『いい攻撃だ』……!? 拷問を楽しむこの私を……まるで戯れる子供を見るような目で見つめ返してくるというの……ッ!?)
「ふ、ふざけるな……! ふざけるなガキぃぃぃッ! 私の拷問をバカにするなぁぁぁッ!!」
プライドを打ち砕かれた拷問官ヴェロニカは、狂ったように鞭を振り上げ、俺に向かって連続叩き込みを開始するのだった――!




