第三章 世界の理の破壊 第二話 恐怖
「『聖葬の黒焔』!
エビルを…真の悪魔を焼き尽くしなさい!」
しかし…
「やはりな…その黒焔は、冥界の力じゃ」
「『聖葬の黒焔』が、効かない!?」
黒焔を浴びても平然としているエビルを見て驚愕するモモ・ルー。
「ヘカテーが儂の力を知っていたように、儂もまた冥界の力をよく知っているのだよ」
エビルは笑っていた
黒き聖女が冥界の女神の眷属と知ったエビルは宮殿内に対抗魔法を張り巡らせ、黒き聖女を誘い込んだのだ。
エビルがモモ・ルーに近づく
「フフフ…儂は美しい者が好きじゃ、黒き聖女よ、その美しい顔と身体を壊すのは忍びない、儂の物にならぬか?ヴァルキリーの様に…」
「あなたは、
ヴァルキリーの記憶を操作して、無理矢理使徒に仕立てたのね!」
「そうじゃ、儂に逆らう者は、皆この手で脳を造り変えてやった」
エビルは、さも嬉しそうに神の力が宿った自分の手をモモ・ルーに見せつける
「ひっ!」
恐怖で顔が引きつる
エビルはモモ・ルーのドレスの首元を掴むと…
ビリビリィィィッ!!
漆黒のドレスを一気に引き裂いた。
「きゃあァァァッ!」
顕になったモモ・ルーの白い肌、その胸に脈打つ赤黒い紋章…
「うう…」
思わず目を瞑り顔を背けるモモ・ルー
「この美しい肌を、こんなもので穢すとは…」
まるで可哀想だと言わんばかりのエビル
その言葉にカッとなる
「この紋章は、ヘカテー様が授けてくれた私の命です!私はこの姿を恥じる事はない!」
「フフフ…儂はお前が気に入ったぞ、愚かな聖女よ。
その紋章も、その記憶も、全て儂に任せるが良い。」
「私の記憶も消すつもりね!」
「いいや違う」
「…では、一体何をしようと言うの!」
「元に戻るのじゃよ…記憶を操作して、神だけを愛する聖女に戻るのじゃ」
「!」
「聖女よ、お前は誓ったではないか、その身を神に捧げると…」
「それは…その神はお前ではありません!」
しかしエビルは構うことなくその手をモモ・ルーへと近づける
「やめて…来ないでーっ!」
ゴゴウッ!ゴゴゴウッ!
何度も黒焔を浴びせるも
エビルは全く動じない
「お前の力は、儂には通用せんというのが分からんのか」
ニヤリと笑い、黒焔を振り払う
「あ…あ、ダメ…
私は…私では、
…エビルに、勝てない…」
「やっと分かった様だな」
エビルがモモ・ルーに手を翳す
「いや…いやぁーッ…ヘカテー様、エンプーサさん、助けて…助けてぇっ!!!」
恐怖で泣き叫ぶモモ・ルー、その姿を見て満足気に笑うエビル
「無駄だ…
あの夢魔はヴァルキリーが、そしてヘカテーも他の神族によって殺される。
お前を助ける者など現れはしない。」
神の力が、エビルの指先を光らせる
「ヒイイッ」
恐怖で身体がガタガタと震える
赤黒い紋章が激しく脈打つ
「…邪魔な紋章め、先ずはお前から消すとしよう」
エビルは、モモ・ルーの身も心も自分の物とするために、ヘカテーとの契約を強制的に解除しようとしたのだ。
「こんな紋章消し去ってやる…
聖女よ、もうすぐだ。
お前は、神だけを…儂だけを愛する者になれるのだ」
エビルの指先が赤黒い紋章へ伸びる
「いやぁーっ!!やめてぇぇぇーっ‼️」
モモ・ルーの叫ぶ声も虚しく、神の手が赤黒い紋章に触れた。




