第二章 神々の長の真実 第三話 神々の長の正体
神々の長を追い詰めるため、神殿の奥へと急ぐモモ・ルーとヘカテー
天界の神殿は、静寂に包まれていた。
白い柱は一本たりとも歪まず、
床の大理石は鏡のように光を返し、
天井の装飾は、まるで“完璧”という言葉を具現化したようだった。
「神々の長!
ここにいるのは分かっています!
姿を現しなさい!」
静寂を破り、モモ・ルーが声を張り上げる。
すると――
何も見えない神殿の奥から、声が響いた。
「……ヘカテーよ、ここまで来たか。」
その声は、柔らかく、優しく、
まるで慈悲深い老人のようだった。
だが、モモ・ルーの背筋は凍りついた。
声に“揺らぎ”がない。
感情が感じられなかった。
神殿の奥に、白い光が集まり
それは、ゆっくりと人の形を成す。
黄金の冠。
純白の衣。
天使のような翼。
整いすぎた顔立ち。
天界の創造主――
神々の長。
だがその瞳は、神の慈悲など全く感じられなかった。
「……あなたが……神々の長……」
モモ・ルーは震える声で言った。
神々の長は微笑んだ。
「そうじゃ。
儂はこの世界を創り、天界を築き、秩序を与えた者じゃ。」
その声は優しい。
だが、優しさの中に“冷たい空洞”があった。
ヘカテーが一歩前に出る。
「お前が神々の長だと?
笑わせるな、お前は神々の長ではない。」
「ヘカテー様?一体何を…」
「モモ・ルーよ、あれは神々の長などではない。
世界を創り出す神の御業、
記憶を操る神の力、
そして天界の門を、刈り取り装置に作り変え、搾取システムを構築した者。
神族の中でその力を持つ者は、唯一人…」
ヘカテーは、神々の長を指さし、そして断言する。
「お前の正体は…創造神エビルだ!」
神々の長――いや創造神エビルは、微笑みを崩さなかった。
「冥界の女神よ…
お前だけは冥界にいたため、記憶を操作できなんだ…全く困った者よ」
モモ・ルーの心臓が跳ねた。
「記憶の……操作……?」
エビルはゆっくりと手を広げた。
「そうじゃ。
儂は神族の記憶を操作し、神々の長となった。
魔族の記憶を操作し、魔王を支配した。
人間の記憶を操作し、聖女を家畜の管理者にした。」
モモ・ルーの胸が締め付けられる。
「けれど、魔王やモルモーさんの記憶を操作したのは、黒魔導士だわ」
「ふん…よく知っておるな」
エビルが鼻で笑った
「…ヴァルキリーはエビルの使徒となったのだな。
『記憶の操作』は創造神エビルの力だ…
そして、創造神の力を借り、記憶の改ざんをおこなった…」
「その通りじゃ」
ヘカテーの答えに満足気に頷くエビル
「エビルよ…
お前は、自分が創造神エビルだと露見するのを恐れ、ヴァルキリーに私を殺すよう命じていたのだな?」
「全く…何をしてるのだヴァルキリーは、
夢魔になど手間取りおって…」
「自分の手を汚すことも出来ぬお前に、何が言えるのだ」
「やかましい!
貴様さえいなくなれば、儂は神々の長でいられるのじゃ!」
エビルは神族達を呼び集める。
「神に属する者たちよ!反逆者じゃ!
皆で反逆者ヘカテーを始末してしまえ!」
ヘカテー達を始末するよう命じ、エビルはその場から宮殿へと向かった。
「ヘカテー様!エビルが逃げます!」
「うむ…しかし、これは手数が多いな」
ヘカテーが集まってくる神族に向けて結界を張る
ヘカテーは迫る神族達を全て引き受けるつもりだ。
そしてモモ・ルーにエビルを追うように命じた。
「黒き聖女よ、エビルを追え」
「ヘカテー様!まさか…お一人であの神族達を抑えるつもりじゃ…無茶です!」
「これは命令だ…
そして奴を焼き払っておくれ」
優しく微笑みかけるヘカテー…
キュッと唇を噛むモモ・ルー
胸の奥で脈打つ「赤黒い紋章」が共鳴して熱を帯びる
「ヘカテー様…私は、主様の御命令に従います。」
モモ・ルーは、一度も振り返らず、宮殿へと走っていった。
第三部 天界編 第二章 神々の長の真実 おわり




