第二章 神々の長の真実 第一話 完成された美しさ
モモ・ルー達は刈り取り装置の奥へ進み、
天界の門を越えた。
その瞬間、世界が変わった。
天界は、美しすぎた。
光は均一で、影が存在しない。
どこを見ても同じ明るさで、
光源がどこにも見当たらない。
風は吹いているのに、草木は揺れない。
モモ・ルーの髪だけがそよぐのに、
足元の花は一輪たりとも動かない。
「……風が、花に触れていない?」
花の香りは一切しない。
吸い込んだ空気はあまりにも無味無臭で、肺に凍りつくように冷たい。
雲は空に浮かんでいるが、
一切動かない。
まるで絵画のように固定されている。
泉の水面は鏡のように静まり返り、
モモ・ルーが指を触れても、波紋が広がらない。
「水が…動いていない」
天使たちは美しい。
だが、全員が同じ顔をしていた。
同じ目の形、同じ鼻筋、同じ口元。
歩幅も速度も呼吸も、すべてが同じ。
「……人形みたい……」
音は響かない。
足音は吸い込まれ、
声は反響せず、
天界の空気は揺らぎを拒絶している。
「……この世界は、時間が止まっているみたい」
美しいのに、息ができない。
綺麗なのに、胸が痛む。
天界は――
生命の揺らぎを嫌う世界だった。
「……ここが……天界……?」
モモ・ルーは息を呑んだ。
美しい。
美しすぎる。
だが――
「……まるで生きている感じがしない。」
その言葉は、彼女の口から自然に漏れた。
ヘカテーが静かに頷く。
「神々の長は、完璧な完成された美しさを創造しようとした。
だから変化するのを嫌う…
生命の揺らぎを嫌う…」
「変化しないなんて、『死』と同じじゃないか!」
エンプーサが震える。
「そう…
そして、この恐ろしい程の美しさは、
その全てが人間族、魔族、魔物達、全ての犠牲のもとに造られたものだ。」
第一話 完成された美しさ おわり




