第五章 世界の終焉 第二話 一握りの命
天界の門へ到着したヘカテー達は、生き残ったミカエル他神族達と合流した。
「ヘカテー様!」
「おお、ミカエル無事で何よりだ」
「はい…」
「生き残った神族はこれだけか…」
神々の戦いで半数以上の神族が消滅していた。
「ヘカテー様
天界はもう神族が住まう場所ではなくなってしまいました。」
「そうだな…
恐らく魔界は消滅する、
天界も崩壊は免れん…
神族も、地上界へ行くしかあるまい…」
「待って下さい!
天界の門は…刈り取り装置はどうするんですか!」
モモ・ルーは、唸りを挙げ稼働している装置を前にそう訴える。
天界の門に設置されている無数の刈り取り装置は、制御する者がいなくなり暴走していた。
「刈り取り装置を止める事は、我々神族でも無理なのです。」
ミカエルが残念そうにそう言った
「そんな!」
次々と装置に吸い込まれる魔物達…
「ーーーええいっ!!」ドガッ
見るも耐えないその惨事に、たまらず1台の装置を攻撃魔法で破壊するモモ・ルー
「止まった!…ええ!?」
ガタン!ヴーーーン
破壊した装置の後にあった控えの装置が前にせり出し、すぐに刈り取りは再開された。
控えは何列にも連なっていて先が見えない程だ
「…幾ら装置を破壊しても、刈り取りは止まらないのです。」
落胆する天使達…
「でも…ちょとだけど止まったわ!」
確かに、装置を破壊し、控えの装置が動き出すほんの僅かな間だけ、刈り取りは止まる。
「その間に、光の軌道から魔物達を引っ張り出せれば…」
「だがそれだと、ほんの数体しか助けられない」
「そうだ、しかも天界だって崩壊し始めている、いつまでも此処にはいられないぞ…」
「光に触れれば、我々も引っ張り込まれる恐れも…」
神族達がざわついている
モモ・ルーが訴える
「それでも…ほんの一握りでも、私は命を救いたい!」
「私が手伝ってやるよ」エンプーサが前に出た
「ありがとうエンプーサさん!」
「礼はいいから…しかし、どうやって引っ張り出す」
「その役目は私達天使が担いましょう。」
そう言ってくれたのは大天使ミカエルだった。
「装置が止まっている間、私達が飛んで行って引っ張り出します。」
「ミカエル様!」
「それ、私達にも手伝わせてもらえませんか!」
そう声をかけてきたのは、魔族のイスバザデンとペンカウラ父娘
「あんたら無事だったのか!」驚くエンプーサ
「はい、なぜか私達は正気でいられましたので、魔族達の行進を止めようと此処までやってきてしまいました。」
「…角!角ですよ!ペンカウラさん!」
「え?角?」
モモ・ルーが創造神エビルから聞いた魔族の角につい話をする。
「…角を落とされたから、私達は正気でいられた…」
「そうです、だからまだ行進してくる魔族がいるなら、角を切り落とさえすれば!」
「しかし…一人一人、角を落とすとなると、かなりの時間と人手が必要ですぞ…」
イスバザデンが困り顔でそう言うと
「ならば、我等が手伝おう」
ヘカテーは、神族達に魔族の角切りを手伝うよう命じた。
「ありがとう御座います、ヘカテー様!」
「さあ、急げモモ・ルー、エンプーサ、天界の崩壊も近い」
「はい!」
天界が揺れる中
モモ・ルーとエンプーサが装置を破壊し続ける。
天使達は僅かな間隙を縫って魔物達を引っ張り出す。
神族達は行進してくる魔族一人一人の角を切り落とす。
イスバザデンとペンカウラは、助け出された魔族や魔物達に経緯を説明し一時的に保護する。
それぞれが一握りの命を救おうと動いていた。
「た、助かった〜」
「若造、大丈夫か?」
「俺達は、運が良かったな」
助け出された者の中には、エンプーサが出会ったホブゴブリンの若者、ハイ・オーク、魔物街のオーガもいた。
「衛兵長!止まりなさい!…止まってぇっ!」
ペンカウラの悲痛な声にオーガ達が振り返る。
見ると、今にも刈り取り装置の中に入ろうとしている魔族街の衛兵長を、ペンカウラが必死に止めようとしていた。
「入ってはダメ!…ああっ」
ペンカウラを、振りほどき装置中へ入ろうとする衛兵長…
ガシッ!
「おりゃ!」「そらよっ!」「ふんっ!」
「…あなた達」
三人がかりで衛兵長を捕まえ動きを封じたのは、オーガ達だった。
「うわっ暴れんな!」
「嬢ちゃん、コイツあんたの知り合いか?」
「俺達が押さえてやるから、早く!」
「は、はい!」
ペンカウラが大きな角切り鋏を掴むと、衛兵長の角を切った。
バキンッボキンッ!
「ぎゃっ!!………………………あ、あれ?」
「衛兵長…私が分かりますか?」
「…ペンカウラ様!」
ペンカウラは、驚いている衛兵長に手短に経緯を説明する。
「角を落とす!?そんな…魔族にとって角は」
「衛兵長、その角で私達魔族は操られ、多くの同胞を失ったのです…そしてそれは今もまだ続いています。」
見ると、魔族達の死の行進はまだ続いている。
「なんと!…」
「衛兵長、この方たちは、魔物でありながらあなたを助けてくれました。」
「魔物が…私を…魔族を助けた?」
「魔族も魔物も神族も人間族も関係ありません…恩に報いるのです、皆を助ける手伝いをなさい。」
ペンカウラはそう言うと、角切り鋏を掴み、刈り取り装置に入ろうとする衛兵を止めに向かう。
「あなた達、手伝って頂けますか?」
ペンカウラはオーガ達に声をかけた
「ああ、いいぜ!」
「無論だ、嬢ちゃん」
「俺達も助けられた口だ」
「ペンカウラ様…私も……私にも、手伝わせて下さい!」
衛兵長はそう言って、死の行進から魔族達を助け出す手伝いを始めた。
こうして、助け出された者が、他の者を助ける様になり、救出される者達の数は増えていった。
「ペンカウラよ…」
「あら、お父様」
角切り鋏を衛兵長に渡したペンカウラにイスバザデンが話しかける。
「意外だな…お前がこんなにも魔族想いだとは、思わなんだ。」
「いやですわ、お父様」
ペンカウラはニッコリと笑った
「『恩は売れるときに売っておけ』と仰っていたのは、お父様ではないですか(笑)」
彼女は、ふふふっと怪しく笑っていた。
第二話 一握りの命 終わり




