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『聖女モモ・ルーと冥界の女神』第三部 天界編   作者: Toru


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第四章 それぞれの戦い 第三話 再会

崩れゆく宮殿の奥――

モモ・ルーは、瓦礫の中に座り込んでいた。


「もう……一歩も動けない……」


身体は重く、指一本すら思うように動かない。

エビルとの戦いで力を使い果たし、魔力も体力も尽きていた。


「このまま……ここにいたら……死んでしまうかもしれないな……」


けれど、モモ・ルーは不思議と恐怖を感じていなかった。


「エビルは死んだ……世界の理は破壊された……

もう……私の使命は果たされたのだから……」


静かに目を閉じる。

崩れゆく天界の音が遠くで響いている。


ただ――

胸の奥にひとつだけ、どうしても消えない想いがあった。


「ヘカテー様……エンプーサさん……

無事だと……いいな……」


その願いを最後に、モモ・ルーの意識は薄れていった。


……


……


………


「……………何の光かしら……?」


暗闇の中で、小さな光が揺れた気がした。

モモ・ルーはゆっくりと目を開ける。


足元に――

あの三色の炎が揺らめいていた。


「……エビルを焼いた……炎……」


赤、白、紫。

三つの色が混ざり合い、まるで生き物のように揺れている。


炎はふわりと浮かび、宮殿の出口へ向かって進み始めた。


「ま、待って……あなたは……誰なの……?」


モモ・ルーは這うようにして炎を追いかけた。

瓦礫に手をつき、血の跡を残しながら、それでも必死に。


宮殿の外に出たところで――

炎に追いついた。


「あ……」


ふっと、炎は消えた。


その瞬間、ガラガラガラッ――

背後で宮殿が崩れ落ちる。


呆然と瓦礫を見つめながら、モモ・ルーは小さく呟いた。


「……私に……生きろ、と……?……」


炎がそう言った気がした。

そのまま、モモ・ルーは静かに気を失った。


――――――


ヘカテーは血まみれの身体を引きずりながら、宮殿へ急いでいた。


「ご主人様!」


崩れた柱の影から、エンプーサが駆け寄ってきた。


「エンプーサ!無事だった様だな!」


「はい……悔しいですが、モモ・ルーに助けられました。」


「私もだ!」


二人は互いの傷を確認する暇もなく、宮殿へ走る。


「宮殿が……!」


崩れ落ちた宮殿を見て、二人は息を呑んだ。


「モモ・ルー!どこだ!」


「ご主人様、あそこに!」


エンプーサが指差した先――

瓦礫の外で、モモ・ルーが倒れていた。


「モモ・ルー!」


「モモ・ルー、しっかりなさい!」


二人が駆け寄り、モモ・ルーの身体を抱き起こす。


ゆっくりと、モモ・ルーが目を開けた。


「ヘカテー様……エンプーサさん……

もう……会えないかと……」


その言葉と同時に、涙が溢れた。


「ばか言ってんな!ちゃんと戻ってきただろ!」


エンプーサは子供のように泣きじゃくるモモ・ルーを強く抱きしめた。


「よくやったな、モモ・ルー……

お前のお陰で……助かったよ……」


ヘカテーも二人を包み込むように抱き寄せる。


三人は崩れゆく天界の中で、互いの温もりを確かめ合った。


「さあ、行くぞ二人とも。天界が崩壊を始めている。」


「天界が……?」


崩れた床から下を見ると、地上界や魔界の惨状まで透けて見えている。

完全孤立している筈の天界の境界が曖昧になっているのだ


「……いや、天界だけではない。

だが今は一先ず避難だ。」


ヘカテーは二人を抱え、天界の門へ向かって飛び立った。


崩壊する天界を背に――

三人は世界の混乱へと向かっていった。



第四章 それぞれの戦い 終わり


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