第四章 それぞれの戦い 第二話 戦士の戦い
天界が揺れている――
柱が倒れ、天井が崩れ、光の破片が舞う中で、二人の戦士は激しく斬り結んでいた。
ガキィンッ!ギャリン!
「はぁ…はぁ…!」
エンプーサは全身傷だらけだった。
ヴァルキリーの力は圧倒的。
一撃一撃が重く、速く、鋭い。
「冥界の夢魔ごときが、私に勝てると思うな。」
「そいつは私に勝ってから言え!」
エンプーサが一刀をヴァルキリー目掛け振り下ろす。
ガキャッ!とヴァルキリーは剣で受け止める。
「もらったあ!」
エンプーサの二刀がヴァルキリーの胴を狙う
しかしーー
「何!?」
スッ…とヴァルキリーは身を翻し、エンプーサの刀は空を切る
「キサマの剣は見切った」
ズガガッ!「ぐはぁっ…」
ヴァルキリーはエンプーサの背後を取り、そのままエンプーサを岩場へ叩きつけた。
「…さすがに、もう動けまい」
「…………」
「ちっ…時間を取られすぎた…お前はそこで寝ていろ」
ヴァルキリーは動かなくなったエンプーサを放置し、ヘカテー抹殺へ行こうとした。
ヒュンッ「!」
ヴァルキリーの鼻先を掠めるように、黒刀が一本飛んできて、行く手を阻む。
「…何処へいく、私はまだ死んでないぞ…」
「なるほど、よほど私に殺されたいらしいな!」
ヴァルキリーは、岩場ごとエンプーサを真っ二つにしようと剣を振った。
ギンッ!「何!?」
岩場は真っ二つになった、
しかしエンプーサは、ヴァルキリーの剣を避け、今までの倍の速さでヴァルキリーに攻撃を浴びせる。
ギンッガキャッギャリン…
防戦一方となるヴァルキリー
バキィィィンッ!!
「くっ!」
ミスリルの盾が弾き飛ばされ、距離を取る
「そのスピード…何故今まで隠していた」
「隠してなんかないさ、アンタの剣と違って私の黒刀は重いんだ」
さっきエンプーサが投げた黒刀は柱に刺さっていたが、その重さで柱は倒れ、床に大穴を空けてしまった。
「『隕鉄の双刀』だと…お前如きが何故伝説の刀を持っている!」
「私にもあるのさ、神のご加護ってやつがな!」
黒刀一本となり攻撃に特化したエンプーサが仕掛ける。
ギャリンッ!キンッ!
物凄いスピードで刀を振るい続けるエンプーサ
防戦一方のヴァルキリー
だが
ドズッ……
ヴァルキリーのミスリルの剣がエンプーサの腹を貫く。
「ぐっ…!」
「この程度攻撃力が上がったところで、私には勝てん」
それでもエンプーサは倒れない。
血を吐きながら、黒刀を握り直す。
「まだ…終わってない…!」
何度倒されても立ち上がるエンプーサに、ヴァルキリーは苛立ち始めた。
「しつこい奴だ…!」
ガシッと、ヴァルキリーはエンプーサの頭を鷲掴みにした。
「ううっ!」
「記憶を…書き換えてやる。」
創造神エビルの力――記憶改ざん。
エンプーサの腕から力が抜けてゆく。
「これで終わりだ。」
「……………………」
ヴァルキリーは勝利を確信し、手を離した。
その瞬間――
ザシュッ!!!
エンプーサの黒刀がヴァルキリーの胸を斬り裂いた。
「ぐうっ…!」
ヴァルキリーは後ずさり、血を吐く。
「…その力は、神からの借りものなんだろ?」
エンプーサはゆっくりと顔を上げた。
その瞳は、揺らいでいない。
「何故だ…記憶が…書き換えられない…」
「うちの相棒が『神殺し』になったって事さ。」
モモ・ルーがエビルを倒したことで、
エビルの力であった記憶改ざんは消滅していた。
「私が、負ける?そんな…ばか…な……」
ヴァルキリーは崩れ落ちた。
戦士同士の死闘に決着がついたのだ。
ガラガラと崩れ始めた天界で、エンプーサは呟いた
「やっと仇を取ったよ…モルモー。」
---
第二話 戦士の戦い 終わり




