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あの祠を壊したんか 4

 それから三日ほど経過した。


 すっかり新しい身体には慣れ、


 苔谷家での生活は思っていた以上に快適で、まずそもそも徒歩で家に帰るため、他の友達と話しながら帰宅したり、寄り道したりできるのがなんと言っても楽しかった。


 家に到着してからも、また他の友達の家に遊びに行ったりできるし、何より、それに関して親からとやかく言われないのが最高だった。


 そりゃあ少しぐらいのお手伝いは大切だろうが、かと言ってあそこまでの重労働を毎日のように強いられる生活というのは、同世代の人間にとってあまり一般的ではないというのは自覚していた。しかし、それにしてもここまで家庭によって異なっているのかと思うと、今までの自分の人生がいかに無駄だったかを考えざるを得なかった。


 学校での授業などについては、まあ、自分が苔谷祠の体を借りているのに全然発表などをしないという罪悪感に目を瞑れば、簡単にやり過ごせる。


「全然元に戻らないね」と矛良は言ったが、なんだか自分の方はこのまま元に戻らなくても良いのではないかと思い始めていた。


 ある日の昼休み。俺は祠に1つ質問をしてみることにした。


「俺の家での暮らしは面倒くさくないか」


「全然。むしろ楽しいぐらいだよ。弟の生太くんもいっぱい構ってくれるし」


 生太。その名前を聞いて、自分はしばらく弟に会っていないことに気づいた。しかし、そんなことがどうでもよくなるぐらい、今の生活は快適すぎたのだ。


 今までにない経験。今までにない遊び。壁がしっかりしていて、熱が遮断された室内。快適なベッド。美味しい食事。その全てが、自分にとって鮮烈で素晴らしいものに思えていた。


 しかしそんなある日、俺たち二人は、とある女子児童に呼び出された。


 彼女の名は、幽ヶ崎霊禍という。はっきり言ってクラスの中では悪目立ちしている存在だ。遅刻の常習犯であり、なかなか悪い噂の絶えない彼女に呼び出されてしまったものだから、俺たちは少し身構えて空き教室に行かなければならなかった。


 そこには墓山亘もいた。正直ちょっと嫌いな奴ではあるが、彼はそこに座っているだけで、特に何かをしようというわけではなさそうだったので、気にしないことにした。


「お前ら入れ替わってるだろ」


 霊禍は単刀直入にそう尋ねてきた。


「⋯⋯⋯⋯うん」


 戸惑う俺を横目に、(俺の姿をした)矛良はそう言い切ってしまった。


「やっぱりな。どういう理由で入れ替わったんだ?」


 俺たちはこれまでの出来事の一部始終を説明した。


「⋯⋯なんだそりゃ。お前らそれでよく今まで普通に過ごしてたな。

 まぁ、普通に過ごせてないから私が気づいたわけだけど」


 霊禍の呆れた口ぶりがなんだか恥ずかしかった。彼女は時折、誰も気づかないようなことに気づくのだ。


 気が付くと霊禍は亘と小声でなにか話し合っているようだった。呪物の理論がどうとか。そんな言葉が聞こえてくる。


 ⋯⋯どうやら、解決したようだ。


「ひとまず、お前らは祠を直しに行け! それでも元に戻れなかったら、私にもう一回言え!

 いいか! 絶対だぞ! 二人で一緒に完成させろよ! 心と肉体の分離はシャレになんねーからな!」


 亘も静かに頷いていた。俺たちは適当に了承し、そのまま空き教室を後にした。


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