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こっくり 5

 店主の三川みかわ士郎しろうがケースから取り出したのは、小さな鍵。一般的な住宅の鍵にしか見えないが⋯⋯たしかな効力のある呪物だという。


「これはシンプルな仕組みだが、憑依を解除するには一番安くて簡単な奴だ。

 相手はただの動物霊なんだろ? だったらこれで充分だ」


「どうやって使うの? これ」


「それを持ったまま、憑依されてるやつに近づいてみろ。身体の一部が光って見えるはずだ。

 そこに『鍵穴』が生まれている。鍵を持っている奴にしか見えない鍵穴だが⋯⋯差し込めば一発で憑依は解除される。それだけだよ」


「身体のどこに鍵穴が生まれるんですか?」と亘。


「それが、完全にランダムなんだ。オデコかもしれないし、膝の裏かもしれない。


 さらにもう一つ、重要な注意点がある。

 それは『憑依している幽霊に怪しまれたら、その時点で鍵穴が消える』という性質だ。

 だから要するに⋯⋯自然な流れで鍵をいれないといけないわけだ」


「それは随分とむずかしいですわね⋯⋯」


 店内がしんと静まり返った。


「まっ、お前らが使うってことは、誰かしら助けるんだろ? チャンスは一度だ。頑張れよ。

 三つ合わせて、超絶セールの1500円な」


 あくまでも三川士郎は呪物を売るだけで、協力はしないスタンスのようだった。


「割り勘するぞ」


「別に、ワタクシがぜーんぶ払って差し上げても構いませんのよ?」


「⋯⋯それはメシ食うときにでも頼む。幽霊関連は自分で払いたいんだ」


「ふ~ん。殊勝な心がけですわね」


 支払いを終え、三人は店を出た。




「さて⋯⋯時間がないから、これからは手分けして動こう」


 亘が話し始めた。


「三人の住所は、既にグループチャットに送っている。誰が誰を助けに行くかも、メッセージ上に書いてあるよ」


「え⋯⋯グループチャットって、入った覚えないですけれど⋯⋯」


 奏がランドセルからスマホを取り出すと、グループへの招待通知が届いているのが確認できた。どうやら霊禍も今初めて気づいたようだ。


『グループ名:親死亡トリオ』


「いや、たしかに三人とも親が死んでいますけれど⋯⋯」


「みんなの共通点を考えたら、それくらいしか思い浮かばなかったんだ」


「逆にいいかもな。理解されない孤独ってカンジで」


「⋯⋯まぁ、なんかもう怒る気力も湧きませんわ」


 メッセージを確認すると、たしかにクソバカトリオの住所が記載されていた。なんで知ってるんだよと霊禍と奏は脳内でツッコミを入れたが、口には出さなかった。


 霊禍は狐田、亘は狸山、奏は乾を担当するらしい。


「憑依解除が終わり次第、ここに報告することにしよう。早く終わった人から、他の人を助けに行く感じで」


「オッケー」


「了解ですわ!」


 こうして三人は、それぞれのターゲットの家へ向かうことになった。




 奏は慣れない住宅街の道に苦戦しつつも、どうにか乾の自宅の目の前まで到着した。


 意を決し、チャイムを鳴らす。インターホンのスピーカーが起動した。


「⋯⋯どちらさまですか?」


 乾の声だ。間違いなく、幽魔小学校六年一組一番・いぬい裕太ゆうたの声だった。


「わ、ワタクシですわ。同じクラスの鎌鼬奏ですわ!

 これから公園にみんなで集まって、遊ぶつもりなのですけれど⋯⋯せっかくですから乾くんも遊びませんか?」


「なんで⋯⋯この家を知ってるの?」


「えっと、お友達に、教えてもらいましてね! 誘ってこいと命令されちゃったんですわ! あ〜やだやだ。人使いが荒いったらありませんわ~!

 ま、みんなで楽しく遊びますから、ぜひ来てくださいまし!」


「⋯⋯わかった。今いくよ」


 しばらくしてドアが開いた。


 奏は後ろに手を組み、鍵をぎゅっと握った。手汗がにじむ。視線も震えていた。


 玄関ドアから出てきた乾の全身を眺め、光っている場所がないか探す。頭のてっぺんから、つま先まで⋯⋯。


 ⋯⋯つま先、いや、違った。その光は、つま先なんて生易しい場所から発せられているのではなかった。


 鍵穴は、足の裏にあった。


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