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こっくり 2

「まず人間や他の生物には脳があって、それが活動すると脳波が生じる。

 それは普段こそ微弱だが⋯⋯死に瀕すると急激に活発になるんだ。たとえば奏が腹をぶっ刺されたときとかな。

 そうして放出された脳波が一つの塊として育っていったのが『幽霊』だ」


 霊禍の話し方はモノマネと素の中間くらいになっていた。


「幽霊の

 正体見たり

 デカ脳波

 ⋯⋯ってことですわね!」


「⋯⋯まぁ、そういうことだ。

 そんで、死にかけ状態のデカ脳波を持ったまま生き延びた人間というのが、霊能力者になる。

 脳波のエネルギーを各個人の素質に応じた形で扱えるようになるわけだな」


「一応言っておくと、霊能力を持てるのはひとり一つだよ。それと、霊能力を喪失した人は死んでしまうんだ」と亘が付け加えた。


「そう。しかも、霊能力の素質というのもピンキリで⋯⋯ハッキリ言って、弱い能力じゃ強い能力の奴には勝てない。その差を補うために、戦う奴はみんな能力の応用を学んでいるわけだが⋯⋯訓練で埋まらない差もあるってことだ。」


「ワタクシの能力は、全体でいうとどのくらいの強さですの?」


 さっきから奏の質問のセンスがいいなと二人は思っていた。


「私のお姉ちゃんが最強だとして、中の上⋯⋯威力と応用方法次第では上の下ってところだ。

 ちなみに亘は融合体なら上の中、グレイヴだけなら下の上。

 私のは霊能力じゃないけど上の上だな」


「⋯⋯自分を贔屓ひいきしていません?」


「まぁ悪魔の力だし、(ただの体質でしかない)超感覚も含めての判断だからな⋯⋯能力単体なら上の中くらいかもな。

 まっ、追いつきたいならせいぜい這いつくばって頑張れよ」


 霊禍にとっては普段から煽られていることへの意趣返しくらいのつもりの発言だったのだが、奏が案外平然とメモをとっているのが拍子抜けだった。


「それと、もう一つ聞いておきたいことがありますわ。

 幽霊の行動原理や生態(死態?)について詳しく⋯⋯」


「そのへんは⋯⋯亘のほうが詳しいかもな」


「それじゃあここからは僕が説明しようかな」


 亘の背後にグレイヴが出現した。白い身体がフワフワと浮き、マントが揺れている。


 ちょっとかわいいかもしれませんわねと奏は思った。


「グレイヴは僕が霊能力で顕現させている守護霊だけど⋯⋯幽霊と守護霊の根本的な違いは分かるかな?」


 奏は十秒ほど悩んだ。


「野生か、そうでないか⋯⋯?」


「そう。もっと言うと、独立した霊体であるかどうかだ。守護霊は本体の脳波に依存した存在なんだ。

 幽霊は自分の生前の願いのために動く。守護霊は本体の利益のために動く。憑依と守護の差異もその点だ」


「生前の願いと聞いて考えたのですけれど⋯⋯ワタクシのお母さまは、ワタクシを庇って死んだようですけれど、直接的な死因は臨の銃弾らしくて⋯⋯それなのに、ワタクシを狙うことになるのってどういう理屈なのですか?」


「そこが、幽霊の最も厄介な点だ。

 幽霊の行動原理となる『生前の願い』は、時間が経つうちにどんどん歪んでいく。

 幽霊は脳波が元になった生命体。単独霊であれ、複数の幽霊が混ざった混合霊であれ、周りにある微弱な霊を取り込んで成長していく。そこで生じる願いのブレが積み重なって、チグハグな目的のために動くようになってしまうんだ」


 グレイヴはいつの間にか消えていた。霊禍が横から割って入る。


「だから、奏もそんなに落ち込むなよ。幽霊ってのは本人じゃあないんだ。奏を殺そうとしたのも単なる願いのブレであって⋯⋯。

 むしろ庇ってくれたんだから、お前のことを愛していたんだと思うぞ」


「霊禍さん⋯⋯!」


「奏のお母さんが、自分が勝手に庇っただけのことを子どものせいにする人格破綻者だった可能性もあるけどね」と亘が付け加えた。


「⋯⋯⋯⋯⋯アナタは本当に!」


「なぁ奏、コイツ一回いっかいシメなきゃだめかもな」


「あとでボコボコにしましょう」


 なんて恐ろしい会話が発生するの理由が、亘に理解できないわけではなかったが⋯⋯。しかし霊能力者の幽霊は強力かつ願いのブレが生じにくいため、亘が言った可能性のほうが高いのもまた事実だった。


 それからしばらく後、昼休み終了五分前のチャイムが鳴り、三人は校舎へと戻っていった。


 そこで三人は、恐るべきものを目にするのだった⋯⋯。

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