表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/32

お金持ちの友達の家 5

 鉄格子越しにりんが二人を見下ろす。


「どうしても、帰るつもりはないのですか」


「アンタが知ってること、ぜーんぶ正直に話してくれたら帰ってやるよ」


「僕たちも疲れたので、話していただけませんか⋯⋯?」


「なぜそこまで執着なさるのですか⋯⋯?

 あなた方には何も関係ないでしょう。そこまでする意味がわかりません」


 霊禍れいかは少し迷った末に、自分の目的を打ち明けた。


「私は両親ともども幽霊にブッ殺された。

 だから幽霊も、それを利用する人間も、私にとっては全員敵だ。

 関係の有無は問題じゃない。私の手が届く場所では、幽霊に誰も殺させない。

 それが私なりの復讐だ」


「僕は付き添いです」


 臨はしばらく二人を見ていた。


 そして緊張が解けたかのように、ため息をついた。


「⋯⋯なんだ、いい子たちじゃないですか」


 口元に微笑が浮かぶ。


「ですが、もう門を開けることはできません。早く家に帰ってください。ここで起きていることは、あなたたちには危険すぎる。」


「はぁ? いま和解する感じの雰囲気だったじゃ──」


 その瞬間、鋭い金属音が響いた。


 ガシャン、ガシャンと門が動く。三人とも身構えた。


「まだ九時なのに⋯⋯」と臨。


 揺れは次第に勢いを増していく。鉄格子がはち切れんばかりに歪む。


 ──いつの間にか、門の下のレールに赤い液体が溜まっていた。


 赤い汁は鉄格子に沿って徐々に体積を増していき、あっという間に霊禍の身長を追い越すほどになった。


 霊禍がオーラを纏い、攻撃しようとした。しかし臨の動きのほうが早かった。


「二人とも、そこをどいてください」


 臨は右の袖をまくり、赤い水たまりに腕を向けた。


 臨の腕は細く、しかし確かな力強さを有していた。


 水色の複雑な線が腕に走り、鈍い光を放つ。霊禍と亘はその様子を不思議そうに観察していた。


 次の瞬間、その線に沿って、右腕が『開いた』。


 まるで傘が開くかのように、複数のパーツが周囲にバシャリと展開し、中心の銀色の筒があらわになった。


 その筒は砲身だった。光の束が中心に集約されていき、甲高い駆動音が響く。


 ──義手だ。


 そして、ビームが放たれた。


 青白く鋭い閃光が走る。


 耳をつんざく破裂音。周囲の空気は熱を帯び、砲身の震えが二人の肌にも伝わってきた。


 ビームが直撃した辺りの鉄柵は溶け、アスファルトすら抉れる。無論のこと、赤い液体は、跡形もなく消滅していた。

 

「⋯⋯撃てるんかい」霊禍が呟いた。


 臨はそんなツッコミをスルーし、砲身を納めた。


「お怪我はございませんか?」


「大丈夫です⋯⋯っていうかそれ、どういうテクノロジーで⋯⋯」


 などという、つかの間の安心はすぐに消え失せた。


「おい、霊禍、あれ⋯⋯」


 赤い液体が、またしても地面に溜まっていた。グツグツと沸騰しているかのような動きを見せている。


 臨がもう一度、義手を向ける。しかし、砲身がむき出しにはなったものの、青白い光は浮かび上がってこない。


「⋯⋯エネルギー切れです」臨の表情は暗い。


 液体は膨張し続ける。ブクブクと、形成され、大きくなっていく。


 日の光などないため、亘と臨は門の照明だけを頼りに、その形を捉えるしかなかった。


 それは肢体となり、ドレスとなり、手元にはなたを形成した。


 ──赤い女が、そこに生まれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ