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お金持ちの友達の家 2

 霊禍れいかわたるがたどり着いたのは、住宅街から少し離れた、山岳部に差し掛かる地区だった。学校から徒歩二十分ほど。麓のコンビニの脇だと言えば、町民にはすぐに伝わるであろう場所だ。


 毎日通うには遠いが、かなでは常日頃から自動車で送り迎えしてもらっている。そのせいで途中で道を間違えたりもしていたが、なんやかんやでたどり着いた。


「ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯こ、ここがワタクシのおうちですわ⋯⋯」


「息切れしてんじゃねぇか」


「しょーがないでしょう! こんな登り坂! 車で来る前提なんですわ!」


 しかも奏はロングスカートを履いていたので、他の二人より疲れるのは当然と言えば当然であった。まぁ、それがなくても、常日頃から命がけで戦っている二人と体力を比べること自体が間違っているのだが。


「それはともかく、すごい豪邸だな⋯⋯」


 一枚の塀を隔てて三人の眼前に広がっていたのは、モダンな豪邸。およそ三階建てに見えるが、直方体が連なったような複雑なデザインのせいで、階数や間取りを予想することすらままならない。


 起伏のある地形を活かして半地下に用意されたガレージ。二階の壁はほとんどガラス張り。建築上の意味などなさそうな柱の数々。そういった細かい要素が高級感を醸し出しているが⋯⋯やはり圧倒的なのはそのサイズだった。


「なんだよこの庭は⋯⋯一軒家ふたつくらいは建てられるんじゃねぇの?」


「ふふ⋯⋯すごいでしょう? お・か・ね・も・ち、ですから」


「うるっせぇなぁ⋯⋯。親の金だろ? お前は一切すごくないから」


「ん~~~~? 聞こえませんわ~~~♪」


 なんて言い合いが繰り広げられる中、鉄製の門がゆっくりと音を立てて開き始めた。


 塀の内側、門の脇から現れた人影は、およそ現代には似つかわしくない、モノクロ衣装の長身女性。


「おかえりなさいませ、お嬢様」


 なんて、あからさまなセリフを吐いたものだから、その女性がどういう身分であるかを、二人は一瞬で理解した。


 ────メイドだ。


本物マジ』のメイドだ────!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「な、なんですの⋯⋯? 急に大声出して⋯⋯」


「霊禍、落ち着け!! しかし確かに、これは⋯⋯すごいぞ!」


 二〇二七年の日本を生きる小学生にとって、メイドという職業は羨望の的(ファンタジー)である。魔女やドラゴン、プリンセスや騎士と同じく、おはなしの中にしか存在しないはずの存在。彼らはサブスクで新旧問わずアニメ見放題が当たり前の世代だ。メイドという職業の素晴らしさは誰でも知っている。


「あ、あの⋯⋯メイドなんですか? マジでメイドさんなんですか?」


 霊禍はその女性に近づき、熱意溢れる質問をぶつけ始めた。


「⋯⋯はい。この屋敷の家事など、きちんとお給料を貰って働いているメイドですよ」


 メイドは霊禍の前にしゃがみ、目線を合わせて応答した。


 メイドの目は細かったが顔立ちは整っており、二十代後半くらいに見える。衣装は無駄な装飾のない本格的なエプロンドレス。カチューシャではなく実用性重視のメイドキャップ。髪はグレーのボブ。極めつけはフチの細い丸メガネ。


「うおおおおお⋯⋯⋯⋯⋯⋯あ、あの、ビーム撃てますか!?」


「ビームは⋯⋯撃てないですね」


 そんなわけないでしょう、と奏が呆れていた。


「えっと、じゃあ、お名前を」


冥加浜みょうがはまりんと申します。あなたは?」


幽ヶ崎(ゆうがさき)霊禍れいかっていいます! あっちのボンヤリしてる男子は墓山はかやまわたるです!」


「あら⋯⋯お嬢様と仲良くしてくれてありがとうございます。

 それでは、屋敷にご案内いたしますね」


 仲良くしているかはともかく、臨を含めた四人は、豪邸へと足を踏み入れていった。


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