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ヴォーパルバニーと要塞おじさん  作者: ベニサンゴ
第42章

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第2236話「魔術師の戦い」

 多脚機たちは縦列を成し広大な干潟をガシャガシャと進む。〈歩行〉スキルがなければ目の細かい泥に足を取られて歩きづらいことこの上ないフィールドだが、ナナミもミヤコもその重量を全く感じさせない軽やかな走りを見せていた。


「流石は踏破性能トップクラスの多脚式だな。速いし姿勢も安定していてほとんど揺れないじゃないか」

『スタビライザーモグリスモイイモノニシテ貰ッテマスカラネ。コノ程度ノ泥濘ハ余裕デス』


 俺とラクトを背中に乗せたナナミは得意げだ。実際、二人の改造にはそれなりの金額を注ぎ込んできてるからな。言語モジュールはあまり高級なものを載せられなかったのが唯一の心残りだが、それ以外は素晴らしい性能を引き出せと自負している。


『ソレニシテモアンタ達、マタ妙ナ事シテルノ?』


 真っ直ぐに走りながらカメラだけをこちらに向けるミヤコ。キリキリと照準を定めながら、俺たちをしげしげと見つめてくる。


「そういえばわたしたち姿も変わってるのに、よく分かったね?」

『ワタシヲ何ダト思ッテルノ? 超優秀ナ頭脳ガアレバ――』

『識別番号ハ同ジデスカラ、分カリマスヨ。調査開拓員ハ機体ヲ変更サレル方モ多イデスカラネー』


 言われてみれば確かにそうだ。有機外装への転生が実装される前から、タイプ-ヒューマノイドからタイプ-フェアリーなんかに換装するプレイヤーはいくらでもいた。おそらく、俺たちの手首に装着されている腕輪が、個体識別の機能も持っているのだろう。


『ソレヨリモ、チャント戦エルンデショウネ。ワタシ達ハアクマデモ戦闘支援クライシカデキナイワヨ?』

「それを試してみるための今回の調査開拓活動だ。とりあえず、塔を登りながら考えてみるさ」


 本当に大丈夫かと言わんばかりのミヤコ。やがて彼女の前方に、巨大な塔が見えてきた。〈エウルブギュギュアの献花台〉は全六階層。一階層から順に進んでいけば、出てくるエネミーも徐々に強くなっていく。魔術の試し撃ちをするにはもってこいだろう。

 塔の中にいるのは、かつて研究施設であった時に作られた実験生物たち。管理者であるオトヒメもいまだに掃討には至っていない、膨大な数の被験体たちだ。


『オ邪魔スルワヨー!』


 切り込み隊長を務めるのはミヤコ。両腕に装着した巨大なチェーンソーを唸らせながら、勢いよく塔の中へと飛び込んでいく。


「第一階層はかなり整備されたな。昔はほとんど廃墟同然だったのに」

「流石に往来も多いからね。直通のエレベーターも、もう開通してるね」


 塔の五階まで一気にショートカットできる巨大エレベーター。これは絶えずエネミーの襲撃を受け続けていて、定期的に破壊される。その度にシャフト内部のエネミー掃討と機材の修復が行われ、再び開通させられている。

 より現実的なことを言うと、リアルタイムで週一でエレベーターは使用不能になるため、プレイヤーたちが協力して修復する必要があるのだ。調子がいいと使用不能になった数時間後には開通するが、何かしらのイベントと重なったり、たまたま技術者がいなかったりすると、大変不便な状況が長く続くこともある。

 とはいえ今回は腕試しが目的である。エレベーターはスルーして、奥へと進む。


「このあたりも懐かしいな」


 最近ではめっきり来なくなってしまった塔の第一階層。無数のガラス管がずらりと並ぶ薄暗いなかに、不穏な気配が満ちている。そして、今の俺たちだからこそ分かる。ここにも例外なく、精霊たちがいる。


「指先に光を灯せ。"巡りの灯火(フォロウライト)"」


 簡単なスペルを使い、灯りを手に入れる。指先と言いつつも、頭の少し上に浮遊しながら追随してくる便利な光球だ。


「なに、その魔術」

「さっき掲示板で見つけた。便利な小技系のスペルはすぐに使えるから面白いな」


 カルフォンのおかげで魔術師も掲示板が使える。情報交換も活発で、いくつもスレッドが立っていた。"巡りの灯火"も誰かが考えたもので、気前よく公開してくれていた。

 スキルシステムの恩恵を得られないのは困ることも多いが、制限を受けないことと裏返しだ。スペルとイメージさえあれば、新たな魔術を共有することもできる。


『面白イ事ヲシテマスネエ』

『妙ナ事ノ間違イデショ』


 ナナミとミヤコも物珍しげにしている。ラクトはしばらく悩んだのち、結局灯りを出すことはなかった。氷属性に対するこだわりが強すぎる。


「さて、それじゃあ初戦といこうか」


 光れば目立つし、敵もやってくる。

 ガラス管の一つが砕け、中から半分溶けたようなグロテスクな見た目の犬が飛び出してきた。瞼の腐り落ちた眼球がこちらを睨み、血の染み出す牙を剥いて襲いかかってくる。


「とりあえず、手を出さずに見ててくれ」

『承知シマシタ!』


 ナナミたちに一言置いて、飛び降りる。


「疾風よ、貫き穿て。――"颯の針槍"!」


 手の先から放たれる槍。風が螺旋を描き作られた鋭い切先が、犬を削いだ。

Tips

◇颯の針槍

 手の先から細い突風を放つ魔術。捻じれた鋭い風は、岩をも打ち砕く。射程は短く威力も相応だが、瞬発力と小回りの効く扱いやすい風属性魔術。


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