↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/48

39●三つ巴の対峙

廊下の風が止んだ。


映は窓枠にしゃがみ、戦術レンズが冷たい光を放っていた。彼は触手にちまきのように包まれた芯を一瞥し、それから向かいの男女に視線を走らせた。表情は冷たい。


「シュヴァルツェンか」映が低く言った。「ゲキ、CR級転送門。既知座標に転送門を一つ開ける。ヨウ、BR級触手召喚。自在に操る触手を召喚する」


隙が笑った。「さすがは東カーネルハイト。情報がよくできてる」


隣の萦も笑った。「東カーネルハイト第三クリーフ小隊副隊長、エイ。AR級鏡像衝撃。鏡像世界と主世界を往復して空間変位飛行ができ、鏡像の裂け目を呼び出して空間攻撃もできる」


映は、自分の能力をそこまで詳しく言い当てられても、何の反応も示さなかった。


「我々シュヴァルツェンは、東カーネルハイトに悪意はない。今夜はあの特聘指導員が目的だ。互いに自分の力で……」


「失せろ」映が萦の言葉を遮った。


廊下が一秒、静かになった。


萦の背後の触手が、わずかにきつく収縮する。その口調には、少しだけ不満が滲んでいた。「ねえ、私たち、一度だって東カーネルハイトの人間に殺意なんて向けたことないわ。さっきの可愛い子だって、かすり傷一つ負わせてない。なのに、いきなり失せろは、ちょっと不公平じゃない?」


「失せるか、俺に抹消されるか、どっちかだ」映の声は冷え切っていた。


萦の背後の触手が、不機嫌そうに逆立った。


「映、あんまりやり過ぎるな。知ってるだろ。シュヴァルツェンは元々、東カーネルハイトと正面から事を構えるような真似はしない。今夜はそのために……」

彼女が言い終わらないうちに、目の前の空気が突然、裂けた。


裂け目が、彼女と隙の間に、何の前触れもなく現れる。その縁はぎざぎざと不揃いだ。


萦は勢いよく後退し、触手を体の前で交差させて防御する。隙はさらに素早く反応した。反手で転送門を開き、その裂け目を廊下の反対側の壁へと転送する。


壁面が炸裂し、破片が飛び散り、中から捻じ曲がった鉄筋が覗いた。


「鏡像衝撃、やっぱり厄介だな」隙は声を潜めた。「ただ、この空間能力がAR級止まりとは、必ず明確な弱点があるはずだ。でなきゃ、等級がこんなに低いわけがない」


萦が彼の隣に立ち、触手を背後の宙でゆっくりと揺らした。「映、ちゃんと話し合おう。どちらも、中にいるあの特聘指導員に興味がある。なら、公平に競争するべきじゃない?」


映は、やはり何も言わない。


彼は一歩、前に踏み出したかと思うと、瞬間的に空気の中へ消え、その裂け目の中へと溶け込んだ。


隙の瞳孔が縮こまる。「気をつけろ!」


次の瞬間、映は二人の頭上、何もない空間から再び現れた。両手には裂け目を一つずつ掴み、その縁が彼の手の中でかすかに震えている。


彼は両手を同時に振り下ろした。


二本の鏡像の裂け目が、左右から二人へと斬りかかる。


隙はすぐさまもう一つ転送門を開き、左側の裂け目を天井へと転送した。右側の裂け目は、萦の触手が幾重にも重なって防ぎ切る。


触手が切断された瞬間、「プツッ」という鈍い音がして、断面から透明な液体が滲み出した。


萦は切断された触手を引っ込め、非常に不機嫌そうに言った。「あいつ、本気で殺しに来てる」


隙は二歩後退し、銃口を映に向けたが、すぐに下ろした。普通の弾丸は空間能力者にはほとんど効かない。


「あいつと長引かせるのはやめましょ」萦が声を潜めた。「あたしの触手生成は栄養を消耗するんだから。さっきので、今夜の夜食分くらいは軽く吹っ飛んだわ」


「夜食? お前、今そんなこと考えてるのか?」


「あたしの能力は脂肪とタンパク質を消耗するんだから。お腹いっぱい食べなきゃ戦えないでしょ」萦が早口で説明した。


隙は呆れたが、その話題を引きずらなかった。彼は改めて映を見据え、数秒間、その姿を観察した。


映は廊下の中央に立ち、両手を身体の横に下ろしたまま、戦術レンズ越しの目に感情は一切ない。先ほどの二撃が効かなかったからといって、慌てて追撃もしてこない。


隊長からは抹消の決断を許されていた。だが、東カーネルハイトも実際には、シュヴァルツェンのような厄介な連中と正面から衝突する気はない。だからまずは軽く手を出し、警告に留めたのだ。


隙は頭の中で、さっきの交戦を素早く検証した。


映の能力は鏡像衝撃。本質は、現実空間に「鏡像空間」を割り込ませること。鏡像空間がその領域を占有することで、破壊効果を生む。一度鏡像衝撃を使うと、その場所の「鏡像空間」には冷却期間が生じ、短時間では同じ位置に再び鏡像空間を生成できない。


さっき、彼が最初に鏡像空間で攻撃した時、位置は二人の真ん中だった。だから二度目の攻撃で、映は上を選んだのだ。


「つまり、」隙は心の中で結論を出した。「彼は能力を使うたび、その位置の鏡像空間は『空白期』に入り、回復には時間がかかる……」


その思考は、耳元をかすめた裂け目によって遮られた。


映が動いた。


今度の速度は先ほどよりずっと速い。彼は鏡像世界と主世界の間を連続して行き来し、その姿は廊下を忽ち現れ忽ち消え、出現位置はそのたびに前回よりも近づいていく。


萦の触手が狂ったように伸び、網を織って彼を阻もうとした。だが、映は鏡像空間に潜ってそのまま網をすり抜けた。その手の裂け目が、薄暗い光の中で暗色の弧を描く。


隙は立て続けに三つの転送門を開き、うち二つの裂け目を転送した。三つ目は間に合わず、身を捻って回避する。裂け目は肩をかすめ、側面で炸裂し、上着が裂けて中の肌が覗いた。


「弱点は見えた。鏡像衝撃を使った場所では、鏡像空間の空白期のせいで、同じ位置に再攻撃はできない」と隙は低く言った。


映は足を止め、短く情勢を判断してから言った。「賢いな。だが、まだ足りない」


彼が両手を上げた瞬間、彼を中心に空気中へ無数の亀裂が走り始める。天井も、壁も、床も、すべてに蜘蛛の巣状の裂け目が広がった。


萦の触手は即座に防御態勢へと縮こまり、隙も転送門を開いて身の前に構えた。


だが、それらの裂け目は直接は攻撃してこない。


二人を包囲している。


無数の鏡像裂け目で構成された檻が、四方八方から中心へと狭まってくる。


「これが本当の能力だ」裂け目の向こうから映の声が響く。「鏡像世界は、破壊のためだけにあるわけじゃない」


「お前の能力なら、一瞬で俺たちを包み込めるはずだ。わざと速度を落とし、俺たちに転送門を開かせて立ち去らせようとしているんじゃないか?」と隙が問う。


だが、映は答えない。


萦が顔を上げ、隙間だらけの裂け目越しに映を見て、一言。「映、目眩はしない?」


映は一瞬、固まった。


次の瞬間、彼の身体はわずかによろめき、無意識に壁へ手を伸ばして支えた。だが、自分の生み出した裂け目の縁に指が触れ、一筋の血痕が走る。


「どうなってる?」映が眉をひそめた。


萦と隙は顔を見合わせた。


二人もまた、その突然の眩暈を感じ取っていた。


内側から込み上げる、小脳全体がぐるぐると回るような吐き気だ。


萦の触手が萎れ始め、一本また一本とぐったり縮んでいく。数本は戻る途中で不自然にびくんと痙攣し、それから力なく床に落ちた。


「うぷ……」萦はその場に膝をついてえずき、口元を拭った。「なにこれ? 乗り物酔い?」


隙も壁に手をつき、顔色は優れない。彼の転送門はもう維持できず、縁が揺らいでいる。


芯に巻きついていた触手も同時に力を失い、彼女の体から滑り落ちると、床の上で二度ほど蠢いて、それきり動かなくなった。


芯はよろめきながら立ち上がり、早足で映の背後へと退がると、大きく喘いだ。顔はまだ赤い。


彼女は口元に残った液体を乱暴に拭い、何も言わず、ただ素早く周囲を見回し、眩暈の発生源を探ろうとした。


映も異変を察知した。彼は必死に裂け目を維持しようとしたが、その亀裂はすでにぼやけ始めている。


「英雄協会の人間か」最初に反応したのは隙だった。その視線は廊下の突き当たりの窓を越え、向かいの病院の屋上に向けられている。「霊心仮面」


屋上には、一つの人影が静かに立っている。


ピンクと白の戦闘服が月明かりを浴び、マスクの光学部品が淡い蛍光を透かしている。彼女は動かず、ただそこに立っていた。


萦は地面に膝をつき、触手はすでに完全に体内へと戻っている。彼女は壁に手をついて立ち上がった。「霊心仮面が、まさかこんな能力を使ってくるなんて……」


隙が低く言った。「現実レイヤーに直接、俺たちの神経系へ干渉してる。あれは俺たちに手を引かせたいんだ」


萦は彼を一目見た。「手を引く?」


映は物陰に立ち、レンズ越しの視線で屋上の霊心仮面と、まるまる三秒間、見つめ合った。

そして彼は、手を引いた。


周囲の歪んだ亀裂はゆっくりと塞がり、元の天井、壁、床へと戻っていく。


萦は壁に手をついて立ち上がり、こめかみを揉んだ。「これじゃ、誰も任務を果たせないわね」


隙はため息をつき、彼女の肩をぽんと叩いた。「行こう。東カーネルハイトとやり合うのは元々割に合わないし、英雄協会まで出張ってきた」


「あの特聘指導員は……」


「それはまた今度だ」隙は既に手を上げ、空中に転送門を一つ描いていた。門の縁は淡い青い光を帯びている。「霊心仮面に見られてる。今夜は無理だ」


萦は隙に続いて転送門の前まで歩き、一度振り返って映と芯を見た。それから二人は転送門へと足を踏み入れ、消えた。転送門は閉じる。


廊下には、映と芯だけが残された。


芯の呼吸はまだ完全には整っていない。肩口の布は触手に引き裂かれ、中の肩紐が覗いている。彼女は手でそこをかき合わせ、映を見上げた。「副隊、私たち……」


「撤収する」映は視線を戻し、彼女を長くは見なかった。「戻って報告する」


「じゃあ、霊心仮面は……」


「彼女は自分からは仕掛けてこない」映は言った。「英雄協会のルールだ。敵対目標でない超能力者へ、向こうからは攻撃しない。こちらが手を出さなければ、彼女も手を出さない」


芯は頷いた。


映は彼女を一目見た。口元に残る液体の痕と、肩に触手が食い込んだ赤い痕に気づき、珍しく一言、付け加えた。「怪我か?」


「違います」芯は横を向いて、肩紐を直した。「ただ、ちょっと気持ち悪いだけです」


「戻ったら医務に診せろ」


「はい」


映は背を向け、虚空へ向かって手を一振りし、鏡面の裂け目を開いた。映がその中へと足を踏み入れ、芯が後に続く。


裂け目に足を踏み入れる直前、芯は最後にもう一度、病院の屋上の方角を振り返った。


屋上にはもう人影はない。ただ月明かりが、がらんとした手すりを照らし、夜風が屋上を吹き抜けて、落ち葉を数枚、舞い上げるだけだった。


芯は視線を戻し、映の後に続いて裂け目の中へと消えた。


病室。


リン・ユエチュアンはベッドに横たわり、全身包帯まみれで、死人のような顔で天井を見つめている。


汐瑶は窓辺に突っ伏し、食べ終えた林檎の芯を指先でくるくると回している。彼女はリン・ユエチュアンを振り返り、目を輝かせた。「隊長、お姉ちゃんってすごいでしょ? あの一睨みだけで、あいつらを追い払ったんだよ!」


リン・ユエチュアンは二秒、沈黙した。「すごいすごい」


「もちろん! へへ」汐瑶は林檎の芯を精確にゴミ箱へ放り込み、それから「とととっ」とベッドのそばへ駆け寄ると、リン・ユエチュアンを見下ろした。


「隊長、あんたとお姉ちゃんが行っちゃダメって言わなきゃ、私一人でも絶対にあいつらを片づけられたのに」


リン・ユエチュアンは彼女を見た。


「なにその目。隊長も知ってるでしょ、あたしの実力!」汐瑶は腕を組んでツンデレに言った。


「わかったわかった。お前が強いのは知ってる。だから今、お前は俺の小さな守護者だろ?」


「へへ! 当たり前でしょ!」汐瑶はそう言うと立ち上がり、ベッド足元の椅子にどっかりと座った。姿勢は極めて正しく、両手は膝の上、背筋はぴんと伸びていて、真面目に授業を聞く小学生のようだ。


リン・ユエチュアンは彼女の座り方を見て、それから壁に映る彼女の影に目をやった。「なんでそんなに真っ直ぐ座ってるんだ?」


「元気に見えるでしょ」汐瑶は真面目に言った。「今、超元気なんだから!」


「……もういい」リン・ユエチュアンは目を閉じた。「お前はとりあえず、俺の睡眠を守ってくれ」


汐瑶はぱちぱちと瞬きをし、それから立ち上がると、やけに真剣な様子でアイマスクを取り出した。ピンク色で、上にはカートゥーンの猫がプリントされていて、ふわふわの猫耳までついている。彼女はそれを、慎重にリン・ユエチュアンの頭にかぶせた。


「はい! これで隊長も安心して眠れるでしょ!」


リン・ユエチュアンはアイマスク越しに二秒ほど沈黙し、それからゆっくりと口を開いた。「……俺がこれを着けてる時、寝てるのか死んでるのか、お前には区別がつくんだろうな」


「だって、どっちも目を閉じてるじゃん」


「……」


リン・ユエチュアンはため息をついたが、アイマスクは外さなかった。


窓の外では夜風がまだ吹いている。遠くからは封城パトロールカーのサイレンがかすかに聞こえていたが、病室の中は急に静かになった。汐瑶はベッドの縁に突っ伏し、ピンクの猫耳アイマスクをつけた、全身包帯まみれのその人を見つめ、口元をほんの少し上げた。


「隊長、おやすみなさい」


「……ああ」

「本作品の内容(ストーリー・設定・キャラクター)はすべて作者自身が創作したものです。ただし、日本語への翻訳に際し、AI翻訳ツールを参考・補助として使用していることをお伝えいたします。翻訳の正確性には細心の注意を払っておりますが、不自然な表現がありましたらご指摘いただけますと幸いです。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。