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彼の過去 中学二年生、冬(後)

 自分でも、何が起きたかわからなかった。いつの間にか救急車のサイレンが鳴って、その中に乗って、警察の人に色々聞かれて。毎日通っていたはずの学校が、遠い世界の出来事のように思えた。


ふぅ、とため息がつけたのは、夏美の緊急手術が始まってからだった。


「空くん!」


 息を切らしたおばさんが、待合室に駆け寄ってきた。


「おばさん、夏美が」


 彼女の顔を見た瞬間、急に涙が溢れて来た。そっか、これは現実なんだって。やっと思えたんだ。


「久坂夏美さんのご家族の方ですか?」

「はい」


 病院の看護師がおばさんに声をかける。おばさんはいつもはしない固い表情をして、力強く頷いた。


「今から手術の内容をご説明します。中へ」


 俺も立ち上がろうとした。けれど看護師は訝し気に尋ねて来た。


「君は? ご兄弟?」

「……友人です」

「失礼ですが、ご家族の方以外は」


 突き放されたような気がした。


「あとで空くんにも、お話するからね」


 おばさんの声が虚しく響いた。


 幼いころから一緒に育って、家族みたいだと思っていても。どれだけ周囲が囃し立てても。




そっか俺。他人なんだ、あいつとは。

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