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救助(3)


 わたしの視界は、ユイナート様の身体でいっぱいである。そのため周りの様子が分からないのだけど、ふわりと身体が浮いたような感覚がしたので、空間を移動することに成功したのかもしれない。

 ユイナート様の腕には変わらず強い力が込められている。まるで、決して離さないと言われているかのようだ。ちょっと苦しい。


「シェルミカ。貴女のことは、僕が必ず……」


 彼が何かを囁いた気がしたが、酷い耳鳴りのせいで聞き取ることはできなかった。






「無事に着きましたね。シェルミカ、よく頑張りました」


 頭をぽんぽんと優しく撫でられた。ゆっくりと目を開けて顔を上げると、眼前には美麗な顔がある。ユイナート様だ。わたしは反射的に彼から離れようとしたけれど、身体が動かないのでそんなことができるはずもない。


 彼から離れるのは諦めて、顔だけを動かして辺りを見回す。白い空間だけど、見覚えはある。わたしたちが過去の世界に飛ばされる前にいた場所だ。確かここで……何が行われていたのだっけ。その部分の記憶が曖昧だ。けれどユイナート様が、わたしのことを玩具にすぎないと言っていたことはよく覚えている。あれは彼の本音なのだろうか、それともわたしの洗脳を解くためについた嘘だったのだろうか。今更聞きづらい。


 この場所にはたくさんの人がいたように思うけれど、今はぽつぽつと人がいるくらいで広い空間が強調されている。そのうちの一人の青年が、わたしたちの元へ駆け寄ってきた。


「枢機卿様、司祭様! ご無事で何よりです」

「ボスがこっちに来てたりしない?」

「いえ……いらっしゃいません。枢機卿様、そこの冒涜者への処罰は……」

「こいつのことはあとで僕がちゃんと火刑にしておくから、君達は一旦いつもの仕事に戻って。今はボスがいないから、僕が指揮を執るよ」


 青年は深々と頭を下げて元いた場所に戻り、他に残っていた人たちと一緒に去っていった。冒涜者というのはユイナート様のことだ。ぼんやりと覚えている。確かに彼は、極刑を下されていたような気がする。統括をする教皇様がいなければ、その刑もうやむやになるのだろうか。


「面白い冗談ですね。貴方が僕を火刑にすることなどできはしませんよ」

「試してみないと分からないでしょ。それより、これからどうする?」

「僕はシェルミカを連れてアルテアラに帰りますよ。貴方が何を言おうと何をしようと、必ず連れて帰ります。貴方は好きにしてください。司令塔を失った組織は瞬く間に崩れますから、ここに残って彼らの面倒を見たらどうです?」

「……ふん」


 セシリオ様はそっぽを向いて鼻を鳴らした。しかし、彼は相当悩んでいるのだろう。表情が曇っている。そんな彼を見て、エルロ様はほわんとした笑みを浮かべた。


「ぼくもぉアルテアラに行きたいなぁ。ここにいてもぉ、首領がいないなら面白みもないし~。王太子さまと姫さまがいる方が良いに決まっているよぉ。セシリオはぁ、残ってみんなの面倒見てあげてぇ。ぼくより君の方がぁ、遥かに優しくて面倒見がいいからねぇ」

「お前が無関心すぎるだけだよ。僕はそれほどここに思い入れはない、から。でも、ここに集まっている子達には帰る場所がここ以外にない。流石に、放置するのは気が引けるよ。仮にも、ボスの次に偉いのは僕だから。ボスがいないなら、僕がなんとかしないと」

「セシリオはやっぱり優しいねぇ。姫さまに、えらいえらいって褒めてもらいなよぉ」


 ちらり、とエルロ様の紫色の目がわたしに向けられた。同意を求められているのだろうか。セシリオ様は優しいと思うし、曖昧に頷いておく。

 彼らの話を整理しておくと、ユイナート様とわたしはアルテアラ王国に戻って、そこにエルロ様も同行する。セシリオ様は使徒たちを放置しないためにこの場に残る、と。その場合、もしもわたしたちがいなくなった後に教皇様が帰ってきて、再びセシリオ様を洗脳したらどうしよう。それに、彼とお別れになるのは少し寂しい。

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