メインディッシュはヒマワリの種 3
就職先その4、スポーツインストラクター。
「いやなんでスポーツインストラクター?」
俺がネズ公にそう疑問を投げかけると、資格証を取り出し俺に見せつけた。そこにはスポーツインストラクター、漫然呂シロ太郎と書かれていた。
「お前名字漫然呂っていうのか……」
「昔大学時代にスポーツインストラクターの資格を取っていたのすっかり忘れていたのだ。へけっ」
「かわいくねーからやめろ。つーか宇宙ハムスターって大学行くのか……」
『宇宙ってなんでもアリですね』
ネズ公は意気揚々とミニサイズの連中のトレーニングエリアへと歩いていった。
まぁ資格を持っているならこの職場は大丈夫だろう。
「もぅ疲れたマジ無理。動けないのだ」
「おいまだ5分しかたってねーぞ」
開始5分でネズ公は疲れ果て、ベンチプレスの上で横になる。
幸いなことに担当してるのはじいさんハムスターでゆっくりと、まるでスローモーションかのようにバーベルを持ち上げている。ボケているのかこちらにはまったく気づいていない様子だ。それとミニサイズなのでバーベル上げてもすごいとまったく感じない。
「それよりマロはお腹減ったからおやつタイムなのだ。なんかないのだ?」
「お前ホント自由だな」
なんかないかと言われてもチーズなど持っていない。元より持ってても貴様にはやらん。
だがちょうどその時、俺の背後にヒマワリ型の植物人間がトレーニングしており、その振動で顔面から種が落ち、俺の方へと転がってきた。つーかグロ。
俺はテキトーにそのヒマワリの種を拾いネズ公へと差し出す。
「ん?なんなのだそれ」
「なにって……お前ヒマワリの種見たことないのか?大好物だと思うが」
ネズ公は警戒しながらも俺の手からヒマワリの種をひったくると、ためらいながら口へと運ぶ。そして次の瞬間ネズ公の目が見開かれ、いきなりガバッと起き上がった。
「な、なんなのだこのヒマワリの種というのは!ちょーうまいのだ!もっとくれなのだ!」
俺はホレと後ろのヒマワリ型植物人間を指すと、ネズ公は一目散にソイツの顔面に飛びかかり、辺りに血(植物の臭い汁)が飛び散った。
「うおぉぉぉおおおなのだ!このヒマワリの種とやらを食べると力がわいてくるのだ!」
ちょっと見た感じムキムキになったっぽいネズ公は、勢いよくじいさんのバーベル上げの補助をする。
「おい、そんなにしたらじいさんが死ぬ……あっ……」
ネズ公がスポーツジムに就職してから数ヶ月後。俺たちはまた新たな惑星を目指し、宇宙を進んでいた。なぜなら俺はキャプテン・コンドル。昔飼ってた動物は宇宙バジリスク。名前はチュン。
「そういや昔53番目の妹が宇宙ハムスター拾ってきて飼いたいって言ったけど、パパンは頑なにダメだと言ってたな……他の動物はいいのに」
『あ、そういえばシロ太郎さんから手紙が届いてましたよ。スポーツインストラクターやめてまた宇宙海賊に戻ったんですって』
「は?なんでまた」
俺はOBFから手紙を受け取ると中身を読んだ。確かにそこにはOBFが言った通りのことが書いてあった。だがひとつだけ違った点があった。それは付属していた写真に写っていたネズ公が……。
「なんで家で宇宙ハムスター飼っちゃダメなのか分かったわ……」
そこに写っていたネズ公は以前とは変わり、3メートルの巨大ハムスターに変貌していた。どっからどう見ても化け物である。
「宇宙ってホント……なんでもアリだな」
場所は変わり宇宙のどこか……。
宇宙の大海原で、海賊船が海賊船を襲撃していた。
「お、お前はまさか……シロ太郎……なのか?」
「マロのことを覚えていてうれしいのだ船長。このぷりちーなボディのせいで気づいて貰えないと思っていたのだ」
そう言うと3メートルになったシロ太郎はハムスターの船長を銃で撃ち殺し、海賊船を乗っ取った。
シロ太郎は甲板上でカトラスを掲げ、高らかに宣言する。
「今日からこのシロ太郎が新たな宇宙ハムスター海賊、公ちゃんズの船長なのだ!だが安心するのだ。マロは前の船長とは違い、お前たちを厳しい掟で縛ったりしないのだ!約束ごとはただひとつ!」
シロ太郎は手にいっぱいヒマワリの種を握りしめ、口に頬張り一気に飲み込んだ。
「これから毎日3食!ヒマワリの種なのだぁ!Head Care!」
みんなは宇宙ハムスターに遭遇しても、ヒマワリの種はあげちゃダメだよ。巨大化するからね!