メインディッシュはヒマワリの種 1
宇宙には、ありとあらゆる生物が存在している。動物に似たもの。見たこともないもの。形を持たないもの。その数は未知数。
そして宇宙ハムスターも、そのうちの一種。
次の惑星を目指し、宇宙を行く船の中で俺はいつも通りエロ本を読んでいた。なぜなら俺はキャプテン・コンドル。昔飼ってた動物は宇宙キメラ。名前はポチ。
「……アイスクリームはやっぱ興奮しねぇな。やっぱソフトクリームだわ」
『マジでそれ何のエロ本なんですか……』
エロ本をそっと閉じ。本棚から次のエロ本を探すが、もうどれも抜きまくってしまった。そこまで興奮しなくなっている。
「あー、何かおもしろいこと起きないかなー」
そう言った瞬間、船内にアラームが響き渡った。
『……マジで?』
「……帝国軍とか?」
OBFはコックピットの端末を操作し、レーダースキャンで原因を確かめる。
『あー……どうやら宇宙海賊が乗り込んできたみたいですね。でも何か反応が小さいな?』
「……宇宙海賊ねぇ」
そこまでおもしろくもなかったな。いつも通りテキトーに追い払うか。そういえばこの前宇宙商店街のガラポンで当たった原子分解銃があったな。使うか。
「動くなサルども!おとなしく降伏するのだ!」
乗り込んできた宇宙海賊がお決まりのセリフを言う。俺は反射的に銃を構え、宇宙海賊に銃口を向ける。が、そこには誰もいない。
「あれ?」
視覚で認識出来ないヤツでも気配でなんとなくわかるが、それすらも感じない。
『キャプテン。下です。下』
「下?」
OBFに言われた通り下を見る。そしてそこにいたのは……。
「……ネズミ?」
宇宙服を着た数匹の小さい二足歩行のネズミが、ネズミサイズの銃をコチラに向けていた。
「ネズミじゃないのだ!宇宙ハムスターなのだ!マロは公ちゃんズ第3師団団長シロ太郎!抵抗は無駄なのだ!船ごと頂いていくのだ!」
そうイキる先頭のネズミが何かウザかったので、とりあえず中指を立てる。
「OBF。宇宙ネズミほいほいなかったっけ?」
『いえ。でも宇宙ゴキブリほいほいならありますよ』
まったくもって相手にされないことに隊長ネズミが憤慨し、地面を小さい足で地団駄を踏む。つーかコイツら土足か?除菌しなければ。
「なめてんじゃねぇぞなのだ!サルども!よしお前ら!やるのだ!」
ドブネズミがそう部下に命令するが、返事がない。静寂が続く。
あれ?と先頭のドブネズミが振り返ると後ろの部下たちは銃を降ろし、やる気のなさをアピールしていた。
「つーかマジでなんなんすか?」
部下のネズミの一人が声をあげた。
「前から思ってたんですけどリーダーっていつも何もしませんよね。それでいて僕たちの手柄も全部横取りしていきますし。それにリーダーが立てる作戦は全部腐ったチーズよりクソですし」
次から次へと部下にズバズバ言われ、リーダーのネズミはすっかり萎縮してしまっている。
「つーわけで僕たち、もう貴方とは仕事出来ませんから。では」
「……え?……え?」
部下のハムスターに見捨てられ、取り残されたリーダーのシロ太郎は、呆然と去って行く自身が乗ってきた海賊船を見つめていた。
「━━おいてかれたのだ!」
「OBF。生き物って生ゴミでいいかな?」