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4人は世界の裏側を見る  作者: 岸波琥珀
第一話 ビルマ、二つの死
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4.  ラングーン、副団長の証言と古地図

今回で澪視点は一区切りになります。

ラングーン市内 ラングーン軍病院


今回襲撃を受けて顧問団の生存者で最も階級の高い副団長の岡田中佐の病室を訪ねた。

「海軍の少佐で西園寺澪と申します。今回の事件に関連して派遣されました」

「どうも、岡田です。よろしくお願いします」

腰の低い人の良さそうな男は階級が下の自分にも丁寧だった。

「怪我の具合はいかがですか?」

「何、腕を撃たれた程度ですよ。戦場で受けた傷に比べればかすり傷です」

どうやら年相応に戦場での経験があるようだ。

「早速ですが襲撃事件が起こった時のことを教えてください」

傍に会った椅子に腰かけると岡田中佐を見ながら尋ねた。

「はい、ただいきなりの事でしたので、あまりうまく説明できるかどうか・・・」

自信なさげに応える岡田中佐に私はあくまで形式的なものであること。おおよそでいいことを告げると彼は少し思い出しながら話してくれた。


「空港から出迎えの車両に乗ってそのままジャングルへと入りました。そこからしばらく道なりに進んでいたのですが、いきなり銃声が響いて何者かが路肩から銃を持って出てきたんです」

「なるほど、その男たちの顔は見ましたか?」

「いいえ、残念ながら車の中でしたし・・・」

「そうですか。団長車が炎上したのに気づいたのはそのすぐ後ですか?」

「ええ、そうです。少し大きな銃声がしたのでミラー越しに見たんです。そしたら団長車から火が上がっていました」

「あなたの車は団長車の一つ前を走っていたことに間違いはありませんか?」

「はい」

岡田中佐が同意した。

「では、何か襲撃を受けた時になにか気になることはありましたか?」

「いいえ。あっただ・・・」

「ただ?」

岡田中佐が何かを思い出したようなので訊いてみることにした。

「あ、いや襲撃の時とは関係ないんですけど・・・」

「問題ありませんよ。こちらも取っ掛かりになることだほしいだけですから」

「初めてなんですよね。安住大佐が顧問団に入るの」

「初めて?」

「ええ、この軍事顧問団は定期的に派遣されているんですが、その性質上団員が重複することが多いんです」

「それはビルマ政府との関係ですか?」

「そういうことです。ましてや団長となると相手との折衝もあるのでなおさらです。だから初めての人が団長なんて前代未聞です」

確かに今までの軍事顧問団のメンバーのリストには同じ名前が並んでいた。15回派遣している中で団長も5人が持ち回りのような形で団長をやっていた。

「どうして安住大佐が団長になったか、心当たりはありますか?」

「私も気になって上に聞いたんですが、どうやら自ら名乗り出たそうです。ちょうどいつも派遣される団長をやる方が体調不良で経験者である他の4人も急な仕事で厳しいからと」

「中佐は今回で何度目ですか?」

「今回で4度目です」

「なるほど」

安住大佐がなぜ顧問団に志願したのか。もしかしたら今回の事件の要因の一つなのか?


それから岡田中佐からの証言はいくつか聞くことはできたが、これ以上に大きな成果は得られそうになかった。


ラングーン市内 日本軍合同官舎


「こちらがビルマ当局から取り返した顧問団の荷物です。もちろん亡くなった安住大佐の分もあります」

「ありがとうございます」

私がゆっくりと安住大佐の鞄へと手を伸ばした。 彼がどうして顧問団に志願したのかという答えがあるかもしれないと思ったからだ。

「うーん、特別なものはないか・・・」

あったのはビルマに関連する市販の書籍や軍が発行している資料ばかりだ。真面目に顧問団長として勉強しているようにしか見えなかった。

団長の鞄には何もないかと思った時、ふと底に違和感を覚えた。

「もしかして!」

鞄の底を探ってみると二重底になっていた。ダミーになっている板を外してみるとそこから手帳が出てきた。

「手帳? それも結構古いな」

手帳を開いてみるとそこには『大日本帝国陸軍 少佐 安住総二郎』と書かれていた。

「陸軍? 安住大佐は海軍だし名前も違う。漢字からして弟か誰かか?」

中身を確認してみてもほとんど何も書かれていなかった。

「空振りですか」

思わずそんな愚痴が出てしまったが最後のページに走り書きが残っていた。

「これは・・・。『Pagan/P-19(雨季使用不可)』?」

何か意味があるのだろうかPaganは地名としてその後の記号がわからない。ゆっくりと手帳を閉じるて机に置くと再び鞄の底を探ってみた。何か紙が一枚あることに気づいた。

「これは古いパガンの地図?」

大佐をビルマに駆り立てた理由がこれなのではないかと思えてならなかった。

「少しだけピースが出始めましたね」

そう呟くと背もたれに身を預けた。

「そういえば、パガンでも事件があったって言ってたな。確かドイツ人の考古学者グループが殺されたって。確か捜査にドイツ軍が来てるって確かヴァイス少佐だったはず」

連絡を取るか? いやまだ早すぎる。もう一度、資料を調べなおそう。襲撃事件に使われた銃が同系統の可能性もまだ否定できないし。


私は再び軍警本部の資料室に赴くと遺留品のリストに目を通した。

「やっぱり、押収された薬莢のほとんどが昨日拾ったやつとは違うやつでそして同じやつが発見され場所は全部団長車の射線上だ」


再び官舎に戻ると遠藤少尉を捕まえた。

「パガンにいるドイツ軍に連絡を取りたい? どうしてまた」

「今回の襲撃事件に関して確認したことがあるんです」

若干面倒そうな顔をした遠藤は

「可能ですけど時間がかかりますよ」

「構いません。お願いします!」

「わかりました!」

勢いに押さられたのか急いで通信室へと走っていった。


通信室へ行くと遠藤少尉が作業をしていた。

待つこと5分少々こちらへ向いた遠藤少尉が

「終わりましたよ。もうすぐ繋がります。」

「ありがとうございます」

礼をいって受話器を受け取ると耳をつけた。


「はい、ドイツ軍パガン総合事務局です」

ドイツ語の若い男の声が聞こえてきた。

「海軍のヴァイス少佐をお願いします」

「少々お待ちください」


しばらくすると女性の声が聞こえてきた。

「もしもし」

「ヴァイス少佐ですか?」

「その声は西園寺少佐ですね」

「ええ、暫くぶりですね」

「もしかしてラングーンの件ですか?」

「ええパガンでの事件について確認したいことがあります」

「なんでしょうか?」

「そちらで発見された薬莢について聞きたいんです」

私は拾った薬莢の形状を伝えるとヴァイス少佐の声色が変わった。

「それ、もしかしたら私の担当してるパガンの事件と同じかもしれません」

私は少し間をおいて口にした。

「あくまで私の予想ですが、ヴァイス少佐。私たちの事件は繋がっているかもしれません!」


マルガレーテ視点のパガン捜査パートは溜まったら投稿します

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