7. パガン、第3の現場
マルガレーテ視点まだ続きます。
緑のテントでの調査を終えた私はあることを思い出した。
「そう言えば、殺された現地作業員は4人でしたよね? それに運転手も殺されたって」
「ええ、そうですよ」
「でも黄色のテントで殺されたのは現地作業員3人と通訳しかいませんでしたよね? あと1人と運転手はどこで殺されたんですか?」
「そ、そうでしたね。その2人が殺されていたのはテントから少し離れたトラックの近くです」
「では案内していただけますか?」
現場となった2つのテントから徒歩数分という場所に止められていたトラックがあった。どうやらここが第3の犯行現場のようだ。
「このトラックは?」
「はい、発掘品を輸送したりするのに使っているトラックです」
「ここで残り2人が殺されていたんですね?」
「ええ、そうです。現場の状況からして2人はここで晩酌をしていたようです」
「晩酌?」
「はい。現場のトラックの荷台には酒瓶や簡単なつまみになりそうな料理がありましたので恐らく作業終わりに晩酌を楽しんでいたんだと思います」
ここは発掘現場だしテントには発掘品や資料が大量にある。そんな場所で酔いつぶれたら大変だからトラックで酒盛りか、そんなところだろうな。
「現場の写真はありますか?」
「はい、こちらに」
軍警の青年が資料のめくってこちらへ差し出した。
「食器は2つだけ、酒宴に参加していたのは殺された2人だけのようですね。死因はやはり銃殺ですか?」
「いえ、違うんです」
「違う?」
「はい、この2人だけは刃物で首を斬りつけられて殺されていました」
「刃物で首を?」
「ええ、死因はおそらく出血性のショック死だと思います」
「なるほど。では最初に殺されたのはその2人の可能性が高いですね」
「なんでまた・・・」
「銃声ですよ」
「銃声?」
小首をかしげる彼に説明を始める。
「この現場一帯には普段は何もありませんよね」
「ええ、集落は離れていますし、被害にあった調査チーム以外はいないはずです」
「それなら恐らくこの場所は夜間相当静かだったはずです」
「恐らくは・・・」
「そんな場所で銃声が響けばいくら酔っぱらっていたとしても危機感を持って逃げるのが普通ですよ、ましてやトラックという移動手段があるんですから。しかも写真を見る限り二人が酔いつぶれていたようには見えませんし」
「なるほど」
「恐らく2人は酒盛りをしているときに誰かに不意を突かれた、もしくは1人がおびき出されたあとに襲われた可能性が高いでしょう。それなら殺害に銃ではなく刃物を使った理由もわかります。テントの人間にまだ銃声は聞かれたくないでしょうから」
納得したような顔をした彼は大きく頷いた。
「そういえば、写真にあるつまみのようなものですが既製品ではなく手作りのようですけどどちらかが作ったんでしょうか?」
「あ、いえそれは通っている料理人たちが頼まれて作った物です」
「料理人?」
「はい、早朝に町から送られてきて夜になったら帰るそうです。事件前夜もそうだったと」
「ではその料理人たちが被害者たちの最終目撃者ということですね」
「ええ、帰るときにリーダーが緑のテントにいるイェガー博士たちに挨拶をして帰宅したと証言が取れています」
「その時、何かおかしな点は?」
「特になかったと言ってましたね。ちなみに料理人たちのアリバイは成立しています。町に戻った後、酒場で飲んでいたそうで解散したのは深夜だそうですから。酒場の主人の証言もあるので間違いないかと」
「料理人たちが帰ったのは大体何時ごろですか?」
「18時半ごろに食事が終わって片付けを終わらせたのが19時。その後少しして帰ったそうなので19時半にはいなかったことになります」
そこまで聞くと私はいくつか質問した。
「改めて聞きますが、この場所に料理人たちが去った後に誰かが来ることはないんですね? 例えば警備に軍警が見回りをするとか」
「要請があればすることはありますが、今回の場合はそう言ったことはしていませんね。恥ずかしい話ですがこちらも人手が足りていませんので」
「今回の事件が起きるまでに武装した盗賊が襲撃するような事件はありましたか?」
「難しい質問ですね。この地域自体決して治安がいいわけではありません。過去にも盗賊が出没することはありました。ただ、多くの場合は遺跡観光に来ていた外国人観光客やインフラ整備の視察に訪れた外国企業の技術者などを狙ったものが多かったですね。それも今回の様に殺人にまで至ったケースはほとんどありません」
「なぜ?」
「単純な理由です。死者の出るか出ないかで罰の重さが違いますからね。連中は予想以上にそう言ったところには悪知恵が働くんです。被害に遭った方も多くの場合、金目の物を大人しく渡して難を逃れていますので殺す必要がないというのが正しいですが」
「金目のものというと現金?」
「それだけじゃありません。以前言った通り時計は高級品ですから当然標的にされますし、カメラや万年筆などの高級な文房具だって連中からしたら標的です」
そこまで説明を受けた私は彼に再び頼んだ。
「申し訳ありませんが、第2の現場である黄色いテントをもう一度見せていただけませんか?」




