6. パガン、遺体の証言
ちょっと体調を崩しておりまして遅れました。
再びテント全体を見渡して肝心なことを忘れていることに気づいた。
「このテント内のどこに倒れていたんですか?」
そうだった!という顔をした軍警の青年は当時の写真を見せながら説明し始めた。
「えっとですね、リーダーのイェガー博士が向こうの椅子に座っている状態で亡くなっていました。銃で頭部を撃ち抜かれいました。動いた様子もないので恐らく即死かと思われます。またその後複数回撃たれたものとみられます」
恐らく場所的に考えてあの机に飛んだ血痕もイェガー博士のものだろう。
「サブリーダーのアルトマン博士は入り口近くに倒れていました。胸と頭部に複数の銃創がありどれが直接の死因かはわかっていません」
「他の3人の助手はみんなバラけて亡くなっていますね」
「はい、ですので恐らく最初に犯人グループはテントの入り口で発砲しアルトマン博士を射殺、ほぼ同時にイェガー博士も殺害。そして最後に他の3人の助手も殺害したものとみられます」
確かに助手3人は全員回避しようと頭を押さえたりしゃがんだり身をよじった後が見られるのに対してイェガー博士とアルトマン博士はそう言った痕跡が見られない。しかしこれは
「違いますね」
軍警の青年は驚きながら聞き返してきた。
「何がですか?」
「アルトマン博士が先に撃たれたのなら銃声を聞いたイェガー博士は逃げるために立ち上がろうとするはずです。しかし、彼は逃げていません。イェガー博士にはその時間が与えられなかった」
私はそこで少し言葉を切って続けた。
「最初に撃たれたのは―――イェガー博士です」
そこまで言って唖然としている軍警の青年に尋ねる。
「すみませんが遺体はどこにあるますか?」
「えっ、ああ安置所ですよ。検視官の到着が遅れていましてまだ検視も終わってませんが」
「じゃあ、邪魔は致しませんので見せていただけませんか?」
「で、では向かいましょう」
車で数分の安置所ヘ向かうと丁度到着した検視官が検視を始めようとしていた。無理を言って立ち合わせてもらうことができた。
「まずはイェガー博士から始めます」
検視官がそう告げると頭部を動かした。
「死因は頭部への銃撃です。銃弾は貫通していますね。他の銃槍はどれも死後できた可能性が高いです」
「この傷は・・・」
「どうかしましたか?」
「いえ、手には傷が無いようですが他に回避をしようとした跡はありますか?」
「いえ、完全に無抵抗だったと思います。眉間に一発ですから」
次はアルトマン博士の検視に移った。
「死因は背部から心臓を撃ち抜かれていますね。他にも数発撃たれています。恐らく同じくらいのタイミングで撃たれたものだと思います」
「正面ではなく背後からですか?」
検視官は頷き答えた。
「ええ、この銃創は背中から胸に弾丸が抜けた跡です。背中から撃たれたと見ていいと思います。それからこっちの脇腹の銃創は身を捩ったところを撃たれたものです。恐らく身を捩った時に撃たれたんだと思います」
やはりそうか。だとしたらもう一つ確認しなければ。
それから検視官に礼を言って再び現場に戻った。軍警の青年に再び尋ねた。
「薬莢はどこにありますか? 散らばってないということは回収されたんですよね?」
「はい、記録もとってあります。実物をご覧になられますか?」
「ええ、お願いします」
少しして薬莢が用意された。
「これが緑のテントと黄色のテント、二つの現場にあった全ての薬莢ですね?」
「はい、テント内にあった薬莢は全て回収しました」
机に上の薬莢を見比べてみると一つだけおかしなものに気づいた。
「これは・・・?」
「どうかしましたか?」
「この薬莢だけ種類が違いますね」
「えっ?」
「これだけ他のものより太くて短いですね。これは拳銃の薬莢です。他は全て小銃、それも量や散らばっていた状態を考えると自動小銃の可能性が高いですね」
「この拳銃の薬莢はどこにありましたか?」
軍警の青年は急いで資料を漁ってあるページで手をとめた。
「その薬莢があったのはあのイェガー博士の付近に落ちていた薬莢です」
「やはりそうですか」
「わかってたんですか?」
「いえ、先ほど見たイェガー博士、抵抗した跡がありませんでした。普通、小銃を持った人間が現れて身構えないなんてことはありませんよ。隠しようがないですしね。相手がマントとかロングコートを着ていて隠してたっていうのもこの気候では不自然すぎますし」
「まあ、そうですね・・・」
「その点拳銃は小型ならポケットに隠したりできますし不意を突くことができます。イェガー博士もまさか撃たれるとは想像もしないでしょうからね」
そこまで言うと軍警の青年は何かに気づいたようだった。
「ま、待ってください! それって」
どうやら彼も私が言いたかったことが分かったようだった。
私は少し早口になりながら説明を続ける。
「あくまで推測ですが、イェガー博士をはじめとした緑のテントの人間にとってその人物が来ることはなにもおかしくはない。そしてその人物がまさか拳銃で自分を撃つなんて想像できなった。つまり犯人は考古学者団のメンバーと顔見知りだった可能性が高いということです」
その言葉に青年は絶句していた。
さらに私は言葉を続ける。
「もっと言えば、その人物がイェガー博士を拳銃で射殺して別の銃に持ち替えて他の4人を殺害したなんて現実的じゃありません。恐らく、イェガー博士を殺害した直後テントの陰に隠れていた誰かが自動小銃でまとめて殺害したんです。アルトマン博士は後ろを向いていたから自動小銃の射手には反応が遅れた。その上、元から射線上にいたから回避するための行動をとれずに撃たれてしまったんです。逆に他の助手たちは気づいたから身を守ろうとした。しかし、その甲斐なく皆殺されてしまった。つまり―――」
ここまで言い切ると最後にこう付け足した。
「これは考古学チームに明確な殺意を持った何者かによる計画的犯行です」




