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第11話:技術の祭典、開幕

小屋で円盤をぶちまけてしまったけれど、まあ、どれも指定された寸法通りに作られ、見た目も重さも寸分違わない。

 「ま、全部同じに見えるし、なんとかなるよね」

 僕はいつも通りの自分を演じ、平静を装って会場へと踏み出した。


***


会場となる広場に足を踏み入れた瞬間、肌を刺すような熱気と、多種多様な匂いの混ざり合った喧騒に圧倒された。


「……すごいな。本当にお祭りじゃないか」


広場を埋め尽くす観衆の数は、もはや数えきれない。

 あちこちで臨時の屋台が立ち並び、香ばしく焼けた肉串や甘い焼き菓子の匂いが風に乗って鼻をくすぐる。


「絶対に『銀の槌』工房が勝つって! 肉串賭けてもいいぜ!」

「いや、俺は『古木の宿』チームに期待してるんだ。ほら、見てろよ!」


肉串を頬張りながら熱く語り合う子供たちの横では、大人が酒を片手にどこの工房が勝つか予想に興じている。


「ねえ、パパ! あのピカピカの飴がほしい!」

「しょうがないなあ。ほら、これを持って大人しく見てるんだぞ」


色鮮やかな飴をねだる子供と、苦笑いしながら買い与える父親。

 そんな微笑ましい光景があちこちで見られたが、広場の中央には一切の甘えを許さない「戦場」が鎮座していた。


シルヴィアが設営した5つの特設コースだ。

 急勾配のS字通路コースに、水しぶきを上げる池越えコース。

 さらには一度失速すれば飲み込まれる、足場の悪い広大な砂場コースなど、様々な難所を備えたコースがあった。

 観客たちはその難関を前に、期待と興奮を入り混じらせた歓声を上げていた。


「リオン様、こちらです。そろそろお時間ですので、開会のお言葉をいただきたく。こちらにいらっしゃってください。国王陛下ももういらっしゃっております」


ハンスが静かに歩み寄ってきて、僕をステージへと促した。

 シルヴィア、リーゼ、そして父上もステージ上で待っている。

 その背後には、五つのチームに分かれた二十人の職人たちが、緊張した面持ちで整列している。


僕は深く息を吸い込み、ステージの端に立った。


「……皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。今日、ここで競われるのは単なる遊びではありません。職人の皆さんの技、そしてプライドが形になったこの円盤が、いかに素晴らしいかを証明する場です。正々堂々と、最高の技を見せてください!」


僕が言葉を終えると、地鳴りのような拍手と歓声が広場を揺らした。

 僕がステージを降りると、今度はシルヴィアとリーゼが前に出た。


「やっと来たわね、リオン。もう準備はできているわ。チームごとに箱を分けておいたから、私とリーゼで配るわね」


シルヴィアがふんっ、と箱を抱え、リーゼがその隣で花が咲いたような笑顔を浮かべる。

 二人は職人たちの元を回り、一人ひとりに声をかけながら円盤を手渡していった。


「期待しているわ。あなたの工房の名を、王都中に知らしめなさい」

「頑張ってくださいませ! わたくし応援していますわ!」


シルヴィアの激励とリーゼの微笑みに、職人たちは顔を上気させ、うやうやしく円盤を受け取っていく。


「……ありがてぇ。この円盤で、俺たちの意地を見せてやりまさぁ」

「リーゼ様、見ててください! 絶対に勝ってみせますぜ!」


職人たちはそう言って、手渡された円盤を受け取っていく。

 二人が配り終えるのを見届け、ハンスが僕の傍らで小さく頷いた。そして――。


「静粛に! アルカディア国王陛下から開会のお言葉である」


ハンスの凛とした声が響き渡ると、祭りのような喧騒が嘘のように消え、心地よい緊張感が広場を支配した。


「これより――王都の職人たちの誇りを賭けた『第一回・職人対抗フリスビー大会』を開催する!」


再び爆発するような大歓声。

 僕が混ぜこぜにしてしまった二十枚の「魂の結晶」が、いよいよ大空へと解き放たれる。

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