第17話 オリジン
目を覚ますと、どうやらアタシは少し気を失っていたらしいが、さほど時間は経っていないらしい。
なにせ、フォルティナが迫ってきているのだから。
「【陽炎】」
フォルティナが二人、いや五人に揺らめくように分裂した。
分身!?
驚いたのも束の間、フォルティナ達が連携を取りながらアタシに攻撃をぶつけてくる。
『目を覚ましたようですが、もう限界なのでは?』
限界……たしかにマックスの言う通り、アタシの体力は限界だよ。
だけど……だけどね。
「こんな面白い技の数々を見せられて、おやすみってわけにもいかないでしょうよ!」
分身の一体をクラフトアックスでぶっ叩くと霧散した。
そして吠え続ける分身。
この数の多いフォルティナの中から本物を叩かなければいけないんだろうけど――
「本物を見分けるなんて無理。だったら、全部ぶっ倒しゃ良い話でしょ!」
神気を一気に放出する。体を焦がすほどの熱が辺りに発せられ――それを一気に振りまいた。
『そんな脳筋な――』
火傷するほどの熱風がフォルティナの分身を吹っ飛ばし、霧散していく。
耐久はないみたい。それに本体を見つけた!
「良い技ね……アンタに出来るんなら、アタシにも出来るはず!」
神気を使って分身が生み出せるなら、自分にだって出来るはずと考え、イメージする。
炎が人の形を成すイメージを。
そして――
「【蜃気楼!】」
『まさか!?』
マックスの驚愕の声。
それもそのはず、たった今アタシがフォルティナの技を真似して、分身を作り上げることができたんだから。
数にして約三十。
分身なんて使ったことないけど、分身って勝手に動くんだね〜。
アタシ達は一斉にフォルティナへ駆け出しては格闘戦を挑んだり、クラフトアックスで背後からの奇襲を仕掛ける。
まあ、どれもフォルティナの前では敵じゃないようで、気を散らされるだけだが。
「ああ凄い。凄いよ。アタシの未来って、ここまで強くなるんだね。でもアンタから技を盗めば、ここにいるアタシはアンタを超えた存在になるってことでしょ? それってさ? なんだか面白くない?」
向こうは未来の自分から技を盗まずに成長したアタシだ。
一人で鍛えて、一人で完成した形。
ならアタシは?
未来のアタシと戦ってるアタシは、なんて運がいいんだろう。
師匠から技を盗めとよく言うけど、自分自身から技を盗むなんて、人生生きてて経験することなんてないでしょ?
これが面白くなくて、なんて言えばいいのだろうか。
『笑ってる……』
「そりゃ楽しいからね」
『楽しい? 負ければ死ぬんですよ? 何が楽しいと言うのですか』
フォルティナが分身を展開して、アタシの分身とぶつかり合う。
スタジアムを埋め尽くすほどの数……これじゃまるで戦争よ。
「だって見たことのない技だよ? ワクワクするじゃん」
『理解出来ません……』
「そうよね……アタシだって、さっきまでそんな事忘れて勝つことだけ考えて必死だったんだもの。アンタがそう言うのも頷けるわ」
アタシは分身を全て爆破させ、辺り一帯を爆風で吹き飛ばした。
フォルティナの陽炎で作り上げた分身も霧散し、残ったのはアタシと向こうの本体だけ……。
お互いに得物を手に、距離を詰め合った。
「【破天――】」
来た。
下段からの打ち上げ……【破山墜】とは逆の、上に向けて放つ一撃が。
あの技は出が速い。それにパワーもある。
だけど――
ガチン!
フォルティナが【破天光】を放つ前に、クラフトアックスで叩きつけて押さえ込んでやった。
技が放てないフォルティナの顔が、少し動揺したように見えた。
「さあどうする? 新しい技を出す? むしろアタシは、それが見たいんだけど」
フォルティナは斧を手放して後ろに引き下がりながら、炎を撃ってくる。
近接戦より扱いに勝る神技での攻撃に徹するつもりなのかもしれない。アタシらしくもない手を取る。
まあ、データで作られた存在なんだから当たり前か……。
アタシは炎を避けながら、フォルティナ目掛けて駆け出した。
駆けながら――姿勢を低く――クラフトアックスを構えながら突き進んで行く。
「アタシの未来の姿だとしても、アンタは人間じゃない。勝つために最適な動きを取る機械的な存在……足りないのよ……勝利への渇望が」
『渇望? そんなものがあっても、実力で勝ればいいだけです』
炎の勢いが増した。
流石にこの波状攻撃を無傷でとはいかず、何発か体に当たっては燃えていく。
でも怯んでなんかいられない。止まってやるもんか。
アタシは勝って宇宙へ行く!
だって思い出したから……。
行ったこともない場所に行けるワクワクを――憧れを!
「【レーヴァテイン】」
フォルティナが炎の大剣を召喚する。
それを掴むと、その場で踏ん張り振りかぶる。
空気が震えている……。
今から放つフォルティナの攻撃は、未来のアタシの最強の一撃なのかもしれない。
技の性能で劣るアタシに、勝てる見込みはない。
だけど、見たい……見たい!
どんな攻撃で、どんな威力があるのか。
「【レーヴァテイン!】」
アタシも神器を召喚し、クラフトアックスに纏わせる。
相手が大剣でくるのなら、アタシは使い慣れたクラフトアックスを強化して立ち向かう事に決めた。
フォルティナの姿が、すぐそこに迫った。
先に動いたのは向こうだ!
「【アポカリプス】」
横薙ぎの大振り……だが、剣が空間を引き裂き、黒い亀裂を生んでいく。
バチバチと裂けた空間から稲妻が走る。
あれに当たれば、ただじゃ済まないことだけは馬鹿なアタシにも分かる。
「パワーを突き詰めた先の神技! 良いじゃん! アタシらしいじゃん!」
それでも前へ。
より低く……より速く。
雷光のように駆け抜ける必殺の一撃を、アタシは……放つッ!
「【爆雷――】」
足裏を爆破させ一気に加速し……クラフトアックスを打ち上げる、最速最大の一撃は、フォルティナの【アポカリプス】よりも速く届いた。
「【――撃!】」
脇腹から肩に掛けて両断。
その斬撃はフォルティナを引き裂き、彼女の背後の空間ごと大きな亀裂を生んだ。
向こうの技の手が止まっていた……。
力無くレーヴァテインを落として膝をつく。
『負け……た?』
信じられないのか、マックスの声に動揺が感じられた。
「ぶつかり合ってもパワーで負けてた……。だから同じ土俵での勝負は諦めて、速さだけを突き詰めた新しい絶技……【爆雷撃】よ。ただ倒すだけなら、これぐらいのパワーで十分だと思ってね」
『ですが、それで倒せる保証は無かったはず……なんで迷わずそれが撃てたんですか? 倒しきれなかったら、あなたは死んでたかもしれないのに』
「そんなこと言われてもね〜? 早く宇宙に行ってみたいし? レイチェルが作った魔具も見てみたいから……」
『行きたい……見たい? ただそれだけ?』
「うん。そうだけど?」
姿を消していたはずのマックスが、アタシの前に現れた。
笑っている……呆れたように。
そんな彼女は手を差し伸べて言った。
『未知への憧れ……ですか……なるほど、データでは再現できない感情ですね。お見事です』
「サンキュ。ならこれで――」
『はい。試練突破です』
レイチェルが促した先には、光の穴が広がっていた。
あそこを潜れば宇宙に出るのだろう。
「じゃあ、行くよ」
『はい……』
アタシはマックスに別れを告げて、光の中へ駆け込んだ。
――――――――――――――――――――――
「マスター……あなたの言う通り、データでは再現できない事がありましたよ」
マスターマロンは言っていた。
データで再現出来る事には限界があると。
この世界で私は、様々な人物を当時の戦力のまま作り上げる事ができました。
ですがマスターは、足りないと首を振ったのを思い出しました。
土壇場で見せる根性……本人にしか備わっていない原点。
それがデータには存在しない……。
なるほど……未知への憧れですか。
フォルティナが勝ったのは、早くこの先の世界を見たいと言うせっかちな性格が、私の再現するフォルティナを上回ったのでしょうね。
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