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無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!  作者: ギトギトアブラーン
第14章 天魔大戦 滅びの未来編 2
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第20話 底が知れたな、害虫

「じゃあスコープ。アタシ行ってくる」


 

 スコープの傷も癒えたし、アタシも戦いに戻らないと。

 モルトを始めとするサーシャ達帝国軍がエスカイトに攻勢を仕掛け、魔法や銃で押している。

 だけど奴も負けていない……。筆で絵を描くように召喚した狼、竜、そしてレギオン達をぶつけている。

 ってかテラフォーミュラーが人でごった返して、これじゃ戦いどころじゃない。

 


「場所が狭いな。どれ、広くしてやろう」

 


 サーシャが杖を掲げた。先端から光を放たれ、刃となりテラフォーミュラーの壁をスパンと輪切りにしてしまう。

 なんちゅー出鱈目な……。

 だけど狭かった空間が拓けた。帝国軍と魔獣、レギオンは互いの攻撃や取っ組み合いで地上に落ちていき、下を覗き込むと地上で戦闘が繰り広げられているのが見える。


 

「我が砦を……よくも!」

 

「そんなに大事なのであれば、しっかり守る事だなゴキブリ」

 

「抜かせッ!」

 


 サーシャとエスカイトが再びぶつかり合う。

 サーシャが分身を召喚し、エスカイトは魔獣を召喚して、魔法と近接戦の攻防が繰り広げられた。

 そんな光景に目を奪われていると、モルトとノーラが駆けて来るのが見えた。


 

「よぉ。クソガキ、生きてたか」

 

「まあね……なんとか……」

 

「ティナ、その目……どうした!?」

 

「ああ、これ? 前に戦った魔族にやられちゃって」


 

 ノーラがポケットから小瓶を取り出した。中には液体がほんの少しだけ入っていて――

 


「これを使え。お前の荷物の中にあった回復薬だ」


 

 メイナさんお手製の回復薬だ。ありがたい!

 アタシは眼帯を外し、小瓶の液体を失った目に全てぶっかけた。

 ジワァと焼けるような感覚が襲ったが、目を開けた瞬間、視界が拓けた。

 


「さすがメイナさんの回復薬……もう治っちゃったよ」

「それはなによりだ……ティナ。状況を教えてくれ。奴は魔族で、なんだ?」

 


 ノーラがエスカイトに顔を向けながら聞いてきた。


 

「アイツは魔将……魔族の中でも強い将軍みたいな奴。アイツを倒さないと魔王の防御が崩せないの。だからなんとかして倒さなきゃなんだけど……」


 

 技がほとんど封じられた……。サーシャの話だと、アタシが奴に気押されてしまったからなんだけど……。


 

「お前もか……」

 

「てことはモルトも?」

 

「ああ。奴と戦ってたら技が使えなくなってな……。足手纏いになると思って女皇陛下様に全部任せてきた」


 

 全部って……アンタねぇ……。

 と思ったけど、目の前の戦いを見てたら確かにそう思う。

 戦ってるのは2人だけのはずなのに、まるで戦争みたいになってるんだもん。


 

「でも行かないと」

 

「だな。モルトはここでイデア達と怪我人の処置に回れ。私とティナはサーシャ殿に加勢に向かう」

 

「了解だ。お前ら気をつけろよ、せっかく生きて再会できたんだからな。ここでお別れなんてごめんだからな!」


 

 そう言い残してモルトはスコープにカラジャ、ここでやられた帝国軍の怪我人の元へ駆け出して行った。

 覚醒は……まだ維持出来てる。神技なら使えるね。

 後は――


 

「クラフトアックスを取りに行かないと」

 

「斧術は忘れてないのか?」

 

「うん……忘れさせれば良いはずなのに、なぜかエスカイトの奴、それをしなくてね。おかげでまだ希望はあるよ」


 

 だけど肝心のクラフトアックスは、サーシャとエスカイトがぶつかり合う天外魔境と化した戦場の真ん中にある。

 なんとかしてあそこまで行かないと。


 

「そういう事なら私に任せろ。私はまだ何も失っていない。突っ込んで回収してくる」

 

「だ、大丈夫? いける?」

 

「行くしかないだろ。ティナはここからサーシャ殿を援護だ。では……行くぞ!」

 

「うん……任せた!」


 

 ノーラが剣を抜いて地獄のような戦場へ駆けて行く。

 アタシは両手を前に突き出し――


 

「【黒炎!】」


 

 エスカイト目掛けて炎を放つ。

 サーシャとの戦闘はかなりギリギリだったみたいで、アタシの黒炎が消される事なく何発か命中してくれた。


 

「く……この力……またお前ですか!」


 

 こっちを忌まわしげに見てくるけど、サーシャのおかげで反撃できないみたい。いい気味ね。

 


「ほらほら! おかわりならまだまだあるわよッ!」

 

「ちょこざいな!」


 

 サーシャの分身から放たれる破壊光線、横から飛んでくるアタシの黒炎に翻弄されながらも、アイツ……なんとか捌いてる。

 やっぱ魔将だけあって厄介ね……。それにサーシャの魔法もダメージは与えてるみたいだけど、エスカイトの回復が間に合ってるみたい。

 それにサーシャも気付いてるみたいだけど……。

 


「顔色が変わったな汚染体ッ!」


 

 ビキィとエスカイトの目が光った――


 

「しまった!?」

 


 途端、サーシャの周りに召喚された分身が地上にポトリと落ちて動かなくなってしまった。

 奪われたんだ! アイツ……あの回復力でサーシャの心を惑わせたんだね!

 


「数が減ればこっちのもの! 如何に強き魔法使いでも――」

 

「私が数で押すタイプの魔法使いなら確かに詰みだったな。だが――」


 

 サーシャは鎌でエスカイトを殴り飛ばして距離を開けた。

 そして何やらぶつぶつと口を動かし始めている……。

 詠唱だ! サーシャ、なにか魔法を使うつもりなのね!


 

「ふん! 魔法など私には――」


 

 エスカイトがまたも目を光らせサーシャに向いた――が。


 

「なっ!? 記憶が……読めない!? いや、読めているが……なんだ、なんだこの情報量は!」

 


 苦しみだした!? なんで!

 


「どうした魔族? お前は記憶を覗き、思うように書き換えるのだろう? なら早くやれ」

 


 余裕な顔を浮かべるサーシャ。

 何かしたんだろうけど、ここからじゃよく分からない。

 ええい! そんな事どうでも良いや! 今は撃つ撃つ撃つ!

 黒炎が頭を抑えているエスカイトに全弾命中した!


 

「ぐあぁぁぁぁッ!」

 

「やった!」


 

 これはかなり効いてる! 奴に纏わり付いた黒炎が回復速度を上回って焼き続けてくれてる!

 


「なぜ私の魔法が……魔法がぁ……」

 

「知りたいか? どうやら貴様は魔の申し子であるのに、魔法についてはあまり知識がないようだな」

「な、なにぃ……」

 

「貴様の魔法は対象の構造書き換え。記憶を覗き、対象を構築するものを無かった事にするものだろう。なら貴様は一度その構造を理解する必要がある……」

 


 そうか……だからアタシの楼凛拳の記憶が消されたんだ。エスカイトに理解されたから。

 でも、それならなんで斧術は消えなかったの?


 

「なら対策は簡単だ。貴様が理解しきれない情報量で脳を満たせばいい。どこを書き換えればどう変わるか分からないほどのな」

 

「くッ……そんな事が……」

 

「それに、貴様は私から魔法という基本の記憶を消さなかった。つまり感覚で扱う物は消せない……そうだろ?」

 

「!!?」


 

 エスカイトの顔が引き攣った!

 そうか……アタシの斧術は技術がない、ただのぶん回し……。シスターから教えてもらったのは、ただ殴りつけるだけの雑な物だったから基本も無い。

 だから消す事ができなかったんだ。奴はその事に気付いてて、クラフトアックスを回収させまいと立ち回ってたって事だね。

 


「名前を呼べば殺せるも間違いだな。貴様はその人間のありとあらゆる記憶を知り尽くした上で存在そのものを書き換えていた。だが、記憶を読ませない、読みきれない場合はそれも無理だという事……まあ? 一部例外は居たみたいだが?」

 


 サーシャがこっちをチラリと見てきた。

 ア、アタシ? いや、そうか神気か。これは魔気を焼き切れる力がある。だから奴の魔法はギリギリのところで無効化されてるわけだ。

 


「だ、だから勝てると?」

 

「ああ。底は知れた。魔法使いの戦闘において相手の魔法構造の把握は死を意味する。貴様はどうやっても勝てんよ」

 

「な、な……」


 

 エスカイトの肩が震える。


 

「舐めるなよ! 汚染体ッ!」


 

 地上にある瓦礫に手を向けて宙に浮かび上がらせた。

 その瓦礫はまるで巨大な剣の形へと変わっていく。

 あれが書き換え……瓦礫を剣として作り変えたんだ。


 

「うおおおおおお!!」

 

「舐めるな? それはこっちのセリフだ! 人類を舐めるなよ! 害虫ッ!」

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