第19話 過去からの援軍
眩い光の中、そこから出てきたのは紛れもないモルトを始めとする、アタシが帝国で別れた仲間達だった。
そんな出てきたばかりのモルトは銃剣を抜くなりエスカイトに斬りかかった。
「よお。お前が魔族って奴だな? 見た目からして不健康そうだし、そうだよなぁ!」
「な、何者ですか!? あなた方は」
「俺様たちか? お前らが嫌ってる人間様だよ!!」
ギリギリと鍔競り合い、エスカイトを押している。
モルトの身が乗り掛かった瞬間。
ガンッ!
モルトがトリガーを引き、銃剣の切先――銃口から魔力が放たれ、エスカイトの顔面がのけぞった。
そんな光景に目を奪われていると、スコープがアタシの腕を掴んできた。
「はは。これがお前の世界の仲間達か……」
「スコープ。アンタ一体何したってのよ……」
「俺はただ、お前の魔具から流れてた声に従って動いただけだ……すげぇよ。魔族の言葉を解読し切って、端末を見もせずに把握し切ってるんだからな」
絞り出すようにスコープはそう言った。
そんなことが出来るのは、アタシが知る中で1人……。
「フォルティナ!」
「サーシャ!? それにイデア、マロン!?」
3人が駆けて来て、サーシャはスコープの状態を見るなりすぐ、サーシャは傷口に手を当てる。
「大丈夫か? すぐに治療する」
「ぐあっ」
回復魔法だ……。サーシャの回復魔法をこの目で見るのは初めてだけど、すごい……スコープの矢で貫かれた胸の傷が、あっという間に塞がっちゃったよ。
「マロン、イデアどうやってここに?」
「なんでって、そりゃ夜中にいきなり姉ちゃんから通話が入って飛び起きてみたら、向こうのほうでドンパチやってる音が聞こえて、全く応答してくれへんかったってモルト兄ちゃんが言っとったさかい」
「急いで次元転送装置を起動させて来たんですよ」
「次元転送装置!? って天火大帝に奪われたあの? 取り返したの?」
「いや……取り返しはできなかった。なにせ奴らの行き先が分からんからな。だから私とこの姉妹で作り上げたんだ」
「よし」とサーシャはスコープの胸から手を離した。
怪我の処置は済んだらしく、スコープの呼吸が安定し始めていた。
「作ったってどうやって!? 設計図とかも無かったはずじゃ――」
「それがなあってん! ランス兄ちゃんのバイクの中にな」
ランスのバイクに!? そういえばあのバイクって、この世界のマロン――レイチェルと一緒に作ったって言ってたっけ?
「まあそっからは作り上げるのは簡単やったで? なんせこっちには帝国の女皇様にソーサリーズの資金と素材があったからな」
「ですが最後の問題は苦戦しましたよ……」
最後の問題?
首を傾げるとイデアは答えた。
「動力源ですよ」
「動力源……」
「時空間を移動するので、かなり強い魔気を持つ魔石が必要だったんですが、これが中々見つからず……」
「でも来たって事は見つかったんでしょ?」
「はい……ですがそれはモルトさんの持っていた家族の形見みたいで……」
まさかアイツ!?
教皇庁で貰ったフレシアさんとクルードさんの魔石を!?
「そのおかげで来れたっちゅうわけや。状況はそこの兄ちゃんから全部聞いとる」
「賭け……だったがな。これが魔族の戯言だったらどうしようかと思ったぞ」
そりゃスコープからしたら、どこぞの誰かか分からない奴らとの会話だしね。戦闘中だし、罠を警戒するのも無理ないよ……。
「ぐあああ!!」
「!!?」
会話していると、モルトの声が響いた。
モルトの力でもエスカイトには敵わなかったらしく、壁に吹っ飛ばされていた。
「くそ……銃剣が使えなくなっちまった……」
忌々しげに呟くモルトに、エスカイトが筆を振り回しながら迫る。
まずい!? モルトにもあの魔法が!
そう思った瞬間には、サーシャがエスカイトに肉薄して立ち塞がった。
「おっと、そいつは私の知人なんだ。手を出さないでもらおうか?」
「今度は女ですか!」
ムッとサーシャが目を細めた。
途端、バチン! とサーシャとエスカイトの間に火花が飛び散る。
「お前……私の記憶を覗こうとしたな?」
「なっ!?」
エスカイトが慌てた様子で距離をとった。
サーシャはそんなエスカイトを睨みつけながら、虚空から杖を取り出し、鎌の形状に変形させた。
「話で聞いた存在の抹消、事象の変化……なるほど、魔族というのは中々に面白い魔法を使う」
サーシャ! もう奴の魔法の正体に気付いたの!?
流石、魔法技術大国のトップだよ。
「な、何を知ったような――」
「知ったから言ってるんだ。お前の魔法は、魔気を持つ物に対しての存在の書き換え。だろ?」
エスカイトの目が見開いた。
それが答えだとアタシでも分かるほどの反応だ。
って存在の書き換えって……どゆこと?
「そう難しい物ではないですよティナさん」
「イデアは分かるの?」
「ええ。ティナさんも使ってたじゃないですか、伸縮魔法を」
「あれは……ただ物を伸ばしたり縮ませたりするだけで……」
「原理は同じですよ。ティナさんの場合は物質のサイズの書き換え。あの魔族の人の魔法は存在そのものに作用すると言ったもので、原理自体は同じです。まあ強力に違いありませんが」
な、なるほど……分かんない。チンプンカンプン過ぎる。魔法技術の話になると、いっつも置いてけぼり食らっちゃうよ……。
ま、まあ? 要は伸縮魔法と同じような魔法を使ってたって事で良いのよね?
「ふふん。起動条件は相手の精神を弱らせた時か……無駄だ。私を睨みつけるだけで恐怖させようだなんて、私は一国の王だぞ? この程度の恐怖など、トイレに出て来たゴキブリほどでもないわ」
妙に生活感に溢れたこと言ったよサーシャ? ちょっと素が出てる出てる。隠して威厳を保ちなさいよ。
だが、その一言が効いたのか、エスカイトの顔が怒りに歪んでいた。
「わ、私が……ゴキブリですって……」
「ああ。そうだ。いきなり現れて、数が多くて人を殺す。害虫以外何者でもないではないか。くく」
あっ。すっごい意地の悪い顔してる……。
煽られたエスカイトは――
「害虫はアンタ達の方でしょうが!! 汚染体ッ!」
キレて筆を構えてサーシャに突進した。
どうやら奴は煽る事は得意だったみたいだけど、煽られるのは苦手みたい。
そんなエスカイトの攻撃をサーシャは鎌で防ぎ――
「そうだな、確かに私たちも似たところはある」
ニヤニヤ笑いながらエスカイトを振り払う。
「なにせ私たちもここから湧き出すのだからな!」
後ろの端末がまた光を発し始めた!
そんな光の中から出てきたのは銃を構えた帝国軍人!?
それも大軍だ!
「お前達が数で勝るなら、一旦白紙にしようじゃないか。これはこれは、人間と魔族の戦争だろ? なら私たちも見て見ぬ振りはできんからな――」
サーシャは杖を高々と掲げ――告げた。
「我々帝国は未来に侵攻する! 目標は魔族! 殲滅だ……1匹残さず駆除しろ! これは絶対命令だ!」
「「「サーイエッサー!!」」」
こんなに頼もしい援軍は無いでしょ……。
アタシは今日ほど、帝国の侵略を心強いと思うことはないでしょうね。
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