第18話 バトンタッチ
「ぐっあぁ!?」
一方的な展開すぎる。まさかここまで強いなんて思いもしなかった。
楼凛拳を封じられ、魔法はR.O.Dを落として使えない。頼みのクラフトアックスはさっき投げちゃったから部屋の向こう側にある……。しかもコイツ、回収させまいと立ち回ってくるし……。
こうなると残された勝ち筋は一つだけ……覚醒だ。
今使ったとしても仕留め切れる保証はない。
むしろ勝てる可能性の方が低いと思う。
だけど――
「はあぁぁぁーーッ!」
やるしか――コイツに勝つ道筋が……ないッ!
「【鬼焔羅刹ッ!!】」
覚醒と同時に全身が力で漲る!
アタシの体から発せられる赤黒いオーラをエスカイトが興味深そうに見ている。
「ほぉ。それがあなたの覚醒……というものですか。なるほどこの世界に居たあなたとそっくりだ」
「でりゃああああ!!!」
言葉は不要!!
がむしゃらに殴る!
技の乗っていないアタシの打撃なんてチンピラのぶん回しでしかない。
そんな弱々しい攻撃はエスカイトの筆にいなされカウンター頬に受けてしまう。
だけど! それだけがアタシじゃないッ!!
「【レーヴァテインッ!!!】」
殴られた瞬間。手に炎の大剣――レーヴァテインを顕現させて薙いでやった!
流石にこれは予想外だったらしく、ようやくエスカイトの体に一文字の傷を負わせる事ができた。
「ど、どうよ……」
「さすがの根性。いやはや感情というバグがそこまであなた方を強化しているとは。驚きですよ」
ジュワァ……。
体の傷がみるみる内に塞がっていく。
やっぱ一筋縄じゃいかないよねッ!
続けてレーヴァテインを振り回す。回転斬り、斬り上げ、叩きつけ、全てをぶつけるが、筆を棒術のように扱っていなされていく。
「ぬっおおおおおおお!! 【ヘルフレイム!!】」
腕を払って黒炎の衝撃波を放つ。
振り撒かれた炎にエスカイトは吹っ飛ばされたがスタッと壁に両足をつけて着地した!?
壁に……立ってる!?
いや、今は驚いてる暇じゃない!
アタシは駆け出した。クラフトアックスの元に。
「させまえんよ! 行きなさい!!」
スコープを牽制していたはずのドラゴンがアタシにドタドタと駆けてくる。
その筐体からは想像できない速さにアタシは咄嗟にレーヴァテインで体を防ぐことしかできなかった。
「こんのぉぉ!!」
斬!!
ドラゴンの頭部を一閃してやると、ドポンと黒い液体となって床に落ちた。
倒した? この召喚もエスカイトの魔法だったってことね!
クラフトアックスに目を向けると、そこにはエスカイトが立っていた。
また防がれた……。でもなんだ? なんでクラフトアックスを奪うなり、壊すなりしないの? それになんで斧術に関する記憶は消そうとしないの?
何かがおかしい。アタシを完全に潰すなら斧術の記憶に【神技】の記憶を消せば良いだけなのに……。
「ん?」
ふと気になってR.O.Dが落ちていた場所に目を向けると、そこにあったはずの端末がなくなってる。
いや……そういえばスコープはどこ?
どこに目を向けても姿は見えない……。
そうか、アタシのR.O.Dを回収してくれたって事ね。
「どこを見ているんですか!」
「へっ。目の保養よ! アンタみたいな胡散臭い奴ばっか見てて目が疲れちゃったのよ! ばーか」
詰めてきたエスカイトと鍔競り合う。
幸いコイツの力はアタシよりは低い。正体不明の魔法と技術がその穴を埋めてるって感じね。
「えい!」
「おっ?」
力を込めてきた瞬間に足を払ってやった。
体勢を崩したエスカイトにレーヴァテインを振りかぶり胴を捉える!
「でえええええい!!」
ドゴオオン!!
凄まじい衝撃音と共にエスカイトをぶっ飛ばせた!
今のうちにクラフトアックスを――
「させないと言っているでしょうッ!!」
壁に着地したエスカイトが飛んでアタシに迫る。
その時だった――
「クソ魔族ッ!!」
アタシとエスカイトはその声の主に目を奪われた。
テラフォーミュラーにある魔族のパソコン型魔具の前、そこにボウガンをエスカイトに構えて立っていたのはスコープだ。
「ア、アタシのR.O.D!?」
彼のすぐ側、パソコンの上に置かれていたのはアタシのR.O.Dだ。よく見ると、モルトという文字が画面に浮かび上がっている。
通話中!? なんで!?
「そ、それに触るなッ!!」
エスカイトが血相を欠いてスコープへと進路を切り替えた。対面して初めて余裕を崩した?
あの端末に何かあるっての?
アタシはそう考えてエスカイトを追いかけた!
スコープが矢を連射する。そのどれもがエスカイトの眼前で消えてしまったが――
「どうした? こいつがそんなに大事か? 魔族」
「うおおおおおおお!!!!」
最後の矢も虚しくエスカイトの手に握り潰され、その矢を――
グサッ!
スコープの胸に突き刺した。
「スコープッ!!」
そんな……間に合わなかった……。
「はは。調子に乗るからです。大人しくこの場から逃げていればよかったものを」
「がふっ……。いいや。調子に乗っていたのはお前の方さ」
スコープが顎で促した先……パソコンの画面には座標変更――と浮かび上がっていた。
それを見たエスカイトは――
「こんのクソ野郎があああああああッ!!!!」
怒髪天をつくような怒りでスコープの体を放り投げた。
そして慌てた様子でキーボードを叩き始める。
アタシは少し迷ったが、スコープの元へ駆けつけた。
「スコープ! スコープ!!」
「はは。俺も弱っちまった……まさかこんなに力になれないなんてな……」
「喋らないで! 今止血魔法を掛けるから」
スコープの胸に突き刺さった矢を引き抜き、急いで魔法を施す。血は止まったけど……これじゃ内臓がやられてる。
「俺はここでリタイアのようだ……」
「いやよ! アンタも一緒に戦ってくれなきゃ……アタシ1人じゃ勝てっこない!」
「馬鹿言うな……お前は破壊の聖女だろ? だったらやれるはずさ……」
スコープの心臓の鼓動が弱まっていく。
どうしよう、どうすれば!
「まあ俺もよく生きた方だ……これで仲間達に会いに行けるってもんさ」
「諦めないでよ!! 残された人はどうなるの! アンタはそれで良いっての?」
「はは……あいつらなら俺が死ぬ事だって覚悟してるさ……それに、ここからお前と戦うのは俺じゃない」
ど、どう言うこと? そう言おうとした瞬間――
『よぉ。魔族さんよぉ』
知った声がパソコンの方から聞こえてきた。
それはアタシが冒険者になって初めてパートナーを組んだ忌々しい嫌いな声。
でも頼り甲斐があって、いつもアタシと一緒にいてくれた相棒の声だ。
「な、なんですかこの声は!? まさかこのスマートフォンから――」
『お前、よくも俺様の仲間を痛めつけてくれたなぁ。今からそっちにいくから殴られる覚悟して待ってな』
「だ、誰です!? あなたは誰なんです!!?」
間違いない……モルトの声だ! それに……そっちに行くって……どう言うこと?
「ゲスト……ここからは――」
スコープがアタシの手を握ってニヤリと笑った。
「バトンタッチだ」
スコープが言った瞬間――
この部屋が光に包まれた。それはパソコンから発せられたものだとすぐに分かった。
ま、眩しい……。
目を手で覆い隠していると、光の中から人の影が――
「よぉ。元気にしてたか? ティナ!」
「モ、モルト!? それにみんなぁ!!」
光の中から現れたのはアタシの世界にいるはずの仲間達だった。
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