第21話 王国解放の時
エスカイトの物を介した形状変化。それらは弾幕となってサーシャに降りかかっていく。
だけどサーシャも負けていない。
こっちはこっちでキラキラでドカンドカンと見たこともない魔法を連発して相殺していく。
互角。そう思えるほどの緊迫した戦い。
アタシもそんな2人の戦闘に黒煙を放ち続けるが、エスカイトの物量に遮られてしまってあまり効果がないように見える。
その時だ。
サーシャの顔に一筋の汗が垂れたのが見えたのは。
あれ程の魔法を絶え間なく放ち続けてるんだ。
限界が来たのかもしれない。
思えばサーシャは分身からの波状攻撃が得意であり、単独での魔法戦は見た事がない。
あったとしてもほぼサポートか……。
となると脳の疲れ。
サーシャは言ってた。エスカイトに記憶を見られたとしても膨大な情報を与え続ければ書き換えは防げるって。
でもそれって逆に言い換えれば常に頭の中には何かを考え続けてるってことでしょ?
詠唱で魔法を放ちつつ、何か膨大な物を頭の中で思い浮かべる……。
今試しに頭で考え事しながら何か別の事を口に出してみる。
難しい。って言うかこれ無理だ。
それをサーシャはかれこれ15分は続けている。
アタシの中で焦りが強まっていく。
もしここでサーシャが負けたら?
エスカイトに立ち向かえるチャンスは2度と来ないかもしれない。いいや来ない!
なら……ここで全力を出さなきゃ後がない!!
アタシは駆け出した。目の前の魔が荒れ狂う戦場へ。
「ティナァ!!」
その時、ノーラの声が遠くから聞こえた。
その声に顔を向けると、高々とクラフトアックスを掲げる傷まみれの彼女が見えた。
「受け取れぇー!!」
ぶん投げた。
回転しながら向かってくるクラフトアックス。
ノーラ……ありがと!
ガシッとキャッチしアタシは地面を強く蹴り込み前へ飛んだ!
「待たせたわねクソ野郎!!」
「フォルティナ……破壊の聖女ぉぉ!!!」
どうやらサーシャとの戦闘で余裕は完全に消え去ったらしい。
筆を振り上げ、墨液をアタシに向けて放ってくる。
当たればどうなるか、多分タダじゃ済まない。
だけどそれが魔法なのであれば!!
神気で焼き切る事ができるはず!!
「燃えろ! 焼き尽くせ!! 【レーヴァテイン!!】」
左手に召喚した炎の大剣で墨液を焼き払い前へ!
エスカイトの顔が引き攣る!
とった!!
「まだだ! まだこの程度で死ぬわけにはいかない!! 【エスケープ!!】」
チリチリとクラフトアックスの先端が塵になっていく!?
コ、コイツアタシの存在を消せないからってクラフトアックスを消すつもり! そうはさせない!!
「やああーー!!!」
ガキン!!
振り下ろしたクラフトアックスの一撃は街の瓦礫の存在を書き換えた大盾によって防がれた。
「残念だったな……」
エスカイトの顔が縦の後ろから覗く。その手にはドス黒いエネルギーの塊が。
それをアタシに向かって突きつけてきた!?
「【断崖――】」
だめ! 間に合わない!!?
「うおおおおおーーーーー!!!!! ゲストさん!!」
この声は……カラジャ!?
アタシの後ろから巨体が飛び出した。
カラジャだ。爪盾を構えてエスカイトの放ったドス黒いエネルギーを受け――
ドゴオオオオン!!!
吹っ飛ばされた!
「カラジャ!!」
「私のことは大丈夫!! ここで決めてください!! ゲストさん!!」
分かったよ。決めてやる! ここでッ!!
床に着地したと同時にエスカイトが召喚した魔獣を一斉に放ってくる!
「構うな! 飛べぇッ!!」
その魔獣達を光の迸りが飲み込み消滅した。
サーシャお得意の破壊光線……。
心強いッ!
グッとしゃがみ込み、ドンっとエスカイトに向かって跳んだ!
「なぜだ、なぜこうも上手くいかない!! 私は勝っていたはずだ。なぜこうも上手く噛み合わない! お前達はなんだ、なんなんだ!!」
筆をなりふり構わない様子で振り回し、墨液の弾幕を張ってくる。
それらが何かとぶつかり1つずつ爆発していく。
「オラァ!! ぶっつけろ!! お前の全力をーー!!」
モルト……アンタって奴は!
今のはきっとモルトの魔弾。
そうだ。アタシにはみんなが着いてる。こうして助けてくれる仲間がいる!!
「くそぉーー!!!」
残りの弾幕をレーヴァテインで焼き切る!
進む! 前へ! 王国を救う為にッ!
エスカイトとの距離が必殺の距離に届いたッ!
「アタシ達は人間よ。アンタが負けたのはアタシ達ん存在を甘くみたから!」
レーヴァテインをクラフトアックスに重ねて炎を纏わせる。燃えるようなクラフトアックスは赤く輝きを放つ。
「アタシ達は、どんな絶望が立ち塞がったとしても!!」
この世界で散っていった人達。今も戦ってる連合軍のみんなに、ガジェット。
みんなが諦めなかったから今に繋がったんだ。
こんな魔族程度にアタシ達は――
「絶対に負けないッ!!【破砕龍ーー!!】」
ゴキンッ!!
全力の振り下ろしがエスカイトの袈裟に激突した!
まるで鋼のような体だけど、ギチギチと砕き、奴の体に刃が入っていく。
「ぐっおおおーーーーーー!!!」
エスカイトもクラフトアックスの刃を手で受け止めたが――アタシの全力はその程度じゃ絶対に止まらないッ!!
「うおおおーーーー!!」
「ぐおおおーーー!!」
ズパンッ!!
アタシの破砕龍がエスカイトの体を両断した。
振り返ると、奴の体は炎に包まれ霧散していくのが見える。
「私が……魔将エスカイトが……負ける? 魔王様ぁぁーーーー!!」
そんな断末魔と共に、エスカイトの体は塵となって消え去った。
「勝った……勝ったよみんな!!」
「「「おおおおーーー!!」」」
勝鬨の声だ。
暗く閉ざされた王国がこれで解放されるんだ……。
あれ……目の前が……。
安心した途端アタシの目の前が真っ暗になった。
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