68本目:九本目と特異点
「逃ぃ,%2t*sBufQにに逃wm'KAT\hwSUkEDYPdv\1{ejm0MEh逃ぃいい0Uがq[TE1M)}LJざあ#あy}あぁあULUw1あ゙ぁ゙Tj+o$なあぁ゙あ゙a"pP+(V3$'g!Yq(;0YyWrc>E6O!oyh&E6qta6いっ!!!!!!」
『くっ、何という執念深さだ』
「むぐぐぐぐぅっ!」
「流々を離せっ、ゲル野郎!!」
欲望の汚泥は、取り込んだ流々の蛸足によって得た僅かな抵抗力に全てを注ぎ込んでいた。
食った全ての人間から奪った能力・技術・力。今その全てを自身に付与することで、マザーは反則的な力を得る。
しかしそれは同時に、マザーの自滅を意味していた。
マザーは異世界で災害級に指定されたモンスターであるが、実のところマザー自体は然程強いモンスターではない。
喰った者の強さに依存するモンスターであり、その強さと強度はBランクモンスターにすら劣る。
脅威なのはその能力であり、逆に言えばその程度でしかないモンスターなのだ。
そんなモンスターに、世界を渡った勇者、魔道を極めた賢者、神の寵愛を受ける聖女、人類の最高峰たる剣聖。
他にも喰らった名立たる者達の力を自身に注ぎ、世界を渡り、欠片とはいえ取り込み、更には深淵を覗き見た。
マザーは今、破裂寸前の風船と同じ状態だった。中身は膨れに膨れ上がり、殻には罅が入る。
腹の中から逆流してくるエネルギーを無理矢理飲み込み、神経を鑢掛けされるような激痛に耐え、正気と狂気が綯い交ぜになる中で、ただ流々を求めていた。
「るM?c:K*R^Jt3ル#\*i|{:a84q[kN流ル;HE>AMX7wMS2|*"WfるるルるルMy+Pq%y流るるるDmBDe]+'cEUC6]}=QYiB-*ssTるうううっっっ!!!!!!」
流々は引きずり込まれまいと、八本の蛸足で床に張り付き耐える。
本来、蛸足一本で途方も無い力を持つ流々を引っ張るなど、ほぼ不可能である。しかしマザーはその一本一本に絡みつき、剥がしに掛かる。
護も流々を守ろうと腰にしがみつき引っ張るが、彼女の剛腕をもってしても引き摺られてしまう。恐るべき執念と力である。
『くっ、これでは空間に穴を開けられぬ!』
「おっ・・・お姉、ちゃっ──」
「うゔゔゔぅああああああああああっっっ!!!!!!」
ベリベリと引き剥がされていく蛸足。護も必死で流々を引っ張るが、その様子を見ていることしか出来なかった。
──そして遂に流々の体が浮く。
マザーの表情が醜笑に歪む。
流々もただではやられまいと抵抗するが、八本の蛸足全てが抑えられている。
ただ為す術もなく吊るし上げられる流々を守ろうと護も抵抗するが、それも今のマザーには少しの嫌がらせにしかならなかった。
マザーが流々を頭上に持ち上げ、大きく口を開く。
それは口元から脇腹まで大きく裂け、まるで鰐が大口を開けているようだった。
剣の様な牙が幾つも上下に並び、噛まれればただでは済まないことが容易に想像できる。
『ぐぅぅ、おのれええっ!』
「お姉ちゃんっ、お姉ちゃんっ、お姉ちゃああああんっっっ!!!!!!」
「流々うううううっっっ!!」
最早理性など残っていないであろうマザーだが、本能で何かを感じたのだろう。ただ流々を取り込む事に執着した。
そして漸く捕らえることが出来、それは今口の中へ。
歓喜が全身を駆け巡っていた、流々を手に入れたことに忘我し有頂天になっていた。
だからマザーはそれに気が付かなかった。
『るhw流SUkるるEうぅうDYPdvUw1あ゙ぁ゙Tj+o──っ!? ぶっぅ゙vあ゙ぁあ゙あ゙aAあ゙ル#\*i|{:あ゙あ゙っっっ!?』
マザーの顔面が横から殴り飛ばされる。
そこにあったのは、流々の九本目の触手だった。
護の相手に守りを集中していたマザーは、予想外の攻撃を守りが手薄な顔面びに受けて流々を手放してしまう。
落下してくる流々を護が抱きとめた。
クトーはこれが最後のチャンスだと、急ぎ流々に指示を飛ばす。
『流々っ、護に渡すのだ』
「うんっ!」
流々はすぐさま護の首に抱き着き、至近距離から護を見詰めた。そして──。
「流々、一体何を──むぐっ!?!?!?」
「むちゅ〜〜〜っ!」
熱いキスをした。
◆
護は一瞬、頭が真っ白になった。
それもまぁ仕方ない事だろう。何故ならこれが彼女のファースト・キスであり(勇者との戦闘時は除く)、その相手が異性としても(今は同性だが)家族としても愛してやまない流々だったのだから。
しかしそれもたった一瞬のことで、次の瞬間には護の全身を凄まじい魔力が駆け巡っていた。
それもただの魔力ではない、護も幾度か感じた事のある邪神の力である。
「ん〜〜〜ぷはっ! おとーさん、渡したよ!」
『うむ、よくやった。しかし口移しでなくとも良かったのだぞ?』
「えっ、この方が良いって聞いたよ?」
『誰がそんな事をっ』
「ポテ子お姉ちゃん」
『あ奴には仕置きが必要だな』
後ほど〆られるポテ子の事はさておき、クトーは護に目を向けた。
護は全身を巡る魔力に戸惑いつつも、何か意味があるのだろうとクトーの指示を待っている。
『護よ、流々の力の一部を今お主に移した。それで次元に穴を空けよ、お主があ奴を倒すのだ』
「で、でもクトーさんっ。アタシそんな事やったこと無いわ!」
次元に干渉する力、それはクトゥルフの邪神の中でもクトーのみが持つ固有能力である。
いくらクトーの力を分け与えられたムナガラーに覚醒した護であっても、土台無理な話であった。
『流々では未だ扱えぬのだ、お主がやれ。それに思い出せ、お主がその力を使うのは初めてではない筈だ』
「えっ、使った記憶なんて・・・」
『いいや、ある筈だ。思い出せ、流々はどうやってこの世界に来た?』
そう言われ、護ははっとした。
そう、最愛の弟であり妹である流々は元々この世界の人間では無い。護が幼少の折、神核覚醒と共に無意識に別次元より引き寄せてしまった存在。
つまり無意識とはいえ、護は一度次元に穴を空けたことがあるのだ。
『無意識とはいえ、一度行使したことがあるのなら身体が覚えている。座標は指定してある、あとはお主が空けるだけだ』
クトーの言葉を聞き、護は流々の身を引き寄せて、マザーに手を翳した。
やれと言われ出来るほど、護の頭の出来は良くない。
また身体が覚えていると言われても、正直どうすれば良いか分からなかった。
だから護は本能に従った。手を翳し、貰った力を手に集め、未だダメージから立ち直っていないマザーを睨みつける。
すると何処からか声が聞こえた気がした、「手を貸してやろう」と。
次元に穴を空けると言われ、ピンとくるものはそういないだろう。
しかしそれにピンと来なくとも、それと非常に良く似たものがこの世には存在し、それを知っている者は多い。
それは重力が極めて強い、高密度な穴。
光さえも脱出出来ず、時間さえも停止するこの世の特異点。
吸い込まれれば最後、全ての物は原子レベルにまで引き伸ばされ消滅する。
太陽の327億倍もの質量を持つことすらある天体。
──『ブラック・ホール』である。
護の手先から空気中に溶け出した魔力は渦を作り、マザーの背後に集まる。
そしてそこに直径10センチ程の穴を作り出した。
「ぐ、7.5iぐぞXぉX:!_Rj8ああ゙QeyMあ゙あ゙ぁnLmw6KS_fN"J1jNq>L_Jh<あ゙G2rあぁ゙I:64.#ぁ゙)]aぁ゙ぁ゙ぁあ゙あ゙あ゙あ゙っっっ!!!!!!」
『二人共、何処かに掴まれっ!』
「ぐううううっ! 流々っ、お姉ちゃんを離しちゃダメよっ」
「うんっ」
ブラック・ホールはそこにある全てのものを飲み込み始めた。
この七階層は、階層そのものがマザーの体で出来ている。
七階層は徐々に元のゲル状の姿に戻りながら、ブラック・ホールに吸われる先から霧のように散っていった。
流々は大きな岩に張り付き、何とか耐える。
そして護はそんな流々を庇うように覆い被さりながら、一緒にその岩を掴んでいた。
ブラック・ホールから最も遠い位置にいる二人ではあるが、ブラック・ホールはマザーを全て飲み込むまで止まらない。
掴まっているそれもマザーの体で出来ている以上、二人がいる今の位置も決して安全ではないのだ。
二人は吸い込みに耐えながら、ジリジリと胡愛が空けた上層への通路を目指した。




