からかい上手の愛さん
322話 からかい上手の愛さん
久しぶりのアキバデートだ。
愛さんは早番でバイトは早く終わるという。
でも、今日は雨だ。
駅前だからか傘をかぶらないで待ってるとロングヘアーでコート着たメガネの人が現れて。
「和泉くん!」
え、獄門島さんじゃないよね?
「どうしたのキョトンとして。メガネかけてると、あたしとわからない? あ、メイドメイクのまんまか。でも和泉くん、あたしのメイド姿はもう見慣れてるよね」
「あ、でもメイドのときはツインテールだし。メガネも大きな黒縁だよね、今日はまた違うね、そのメガネ」
「ああ、パソコンいじってスマホ見てたら目が悪くなってね。メガネ作っちゃった。アニメのモデルだから、ほら下縁だけのヤツね、コレコスプレにも使えるから便利」
「コート着てるなんて珍しいよね」
「今日は、朝からひどい雨だったからね。中見たい?」
「え?」
「実は着替えるの面倒くさくて中は下着なの見たい?」
「え、こんな場所でヤバいですよ」
「そうね、じゃチラッと」
「え、今の……メイド」
「そう、着替えるの面倒だったから上にコートを着てね。コレね意外にね、みんなメイド服を持って帰ってるのよ。ホントはダメなんだけどね。バイトヤメた娘とか、持って帰っちゃう娘いるんだよ。みんな、メイドコスで彼氏とイイコトしてるらしいよ。和泉くん、このあとホテル行く?」
「あ、いやホテルは……ボク、まだ中学生だし」
「本気にした? 冗談だから。ホントに遅くなったんで、そのままコート着て来たのよ」
「帽子も雨だから……だね」
色は違うが獄門島さんみたいだ。
「ええ、そうよ」
彼女はショップのウィンドウに写った自分を見て。
「あら、コレって。まえの和泉の浮気相手のおねえさんだわ」
「浮気相手じゃありませんよ獄門島さんは」
「獄門島さんっていうんだっけ。忘れてたわ……。ああ、そうか、それであたしが来たときに、キョトンとしてたのね……」
「まあ、そのへんは……。絶対に浮気とかは、ないですから」
「まあいいわ、あの人は和泉くんにとって手の届かない憧れの人でしょ。テレビに出ているアイドルみたいな……。でも、あたしは手の届く現実の女よ。和泉くん、さて何処に行こうか。雨だし……やっぱりホテル」
「愛さん、からかわないでくださいよ」
「からかい上手の三日月さんとのデートを楽しみにしてきたんでしょ」
相変わらずだ三日月愛さん。
変わったのはボクを和泉くんと呼ぶようになったこと。
はじの和泉ちゃんよりはましだ。
ボクは愛とは呼べない。やはりさんを付けてしまう。
はじめに雨の中を予定していたコスプレショップに。
彼女は、ほとんど手作りだけど市販のモノを参考にしたいと見に行く。
もう夏コミの準備に入ってるそうだ。
それから、ボクが行く予定にしてたフィギュアショップ。
彼女もフィギュアは好きで、3Dのフィギュアはコスチュームを作る参考にもなるので実用性もあると。
ボクみたいにながめてるだけじゃない。
ショップを3、4カ所まわってると雨も小降りに。そして夕方、天気も悪いので暗くなるのも早い。
「ネオンがキレイね、雨の夜のアキバって映画みたいよね、外国人も多いし、ここは何処? って感じよね」
「お祖父ちゃんが言ってたけど昔は電気街で大きな電器店のビルが立ち並び、そのネオン街も今とは、また違った映画の世界みたいだったって」
「聞いたことある。あたしたちが生まれる前のアキバは、また違ったオタクの街だったと。ホテルのネオンとかもあったのかなぁ」
「どうしたの愛さん、今日はやたらホテルと」
「だって、あたしたちもう3回以上デートしてるわよ。コートの下は和泉くんの大好きなメイドさんだし、行っちゃおうホテル!」
「ホテルは、まだ早いと思うわよ。ふたりとも未成年でしょ……」
アヒルの傘の柄。本物だ。
「獄門島さん!」
「冗談ですよ。ねぇ和泉くん。お久しぶりです。獄門島さん」
「お久しぶり……? あなたは」
「お忘れですか、獄門島さん。あたしメガネのメイドです」
と三日月愛さんはコートのポケットから黒縁のメガネを取り出しかけ直した。
「ああ、和泉くんの年上の彼女さんね」
「憶えていました。嬉しいです。三日月愛です」
「なんで、あなたが嬉しいの?」
「なんで、でしょう……。もしかして、あたしあのとき獄門島さんと出会って……」
「愛さん、獄門島さんと出会ってどうしたの?」
「なんだか身体が火照っちゃいました。で、また会いたいなと。なんでかしら? あ、なんか偶然ですけど今日はあたし獄門島さんみたいな姿で、なんか嬉しいです」
え、愛さんはナニを言ってるんだ?
なんで獄門島さん見て?
「なんだか、わからないけどホテルは、もう少し辛抱しなさい。あと少しだから。あと、三日月さんだっけ、世の中に偶然はないのよ。じや和泉くん。デート、楽しんで」
『和泉のデート』の巻 おわり
つづく




