浮気調査
163話 浮気調査
う〜ん。
「なんです。獄門島さん。この格好変ですか?」
なぜだか、社長。ろくに動けない田守くんあてにして田守くん用の仕事をとった。
でも、やはり杖をついての尾行は無理と。その仕事が、わたしに。
なぜか、助手に金田一が。
で、現れた金田一は。
どっかのファーストフード店の店員がかぶってるようなハンチングハット。
背中に派手なアニメ風のメイドの刺繍が入った青いスカジャン。
下はダークグリーンの細身のスキニーパンツにナイキのスニーカー。
「それ、誰のコーデ?」
「八ツ墓村さんです」
「やっぱり……で、その眼帯も」
「あ、コレは昨日の夜にくしゃみしたら目が血走って赤く。目薬つけておけば、治りますので。目には異常はないので普通に見えます。たまにあるんです。わたし……。朝一番で百均の眼帯買ってきました」
言われてみれば、たまに眼帯をつけてた。アレはコスプレの一部かと。
「浮気調査の尾行をするのに、ちょっと目立たないかなぁその格好」
「いえ、よく見る若者ですよ」
そうかな、わたしは、見たことない。
「わたしより、獄門島さんの方が目立ちません」
「わたしは、地味だけど、金田一さんは、派手だ」
たまに、この格好で尾行するけど、問題ない。
「あ、最近アンジェラに聞いたんだけど、向こうの日本には、横溝なんとかというミステリー作家がいて、代表的作品で活躍する探偵の名が、金田一コースケというらしい」
「金田一コーまで一緒じゃないですか。で、どんな探偵なんです?」
「モジャモジャ頭にオカマ帽かぶってて、ヨレヨレの着物にハカマ履いた下駄履きの探偵だそうよ」
「それって……わたしより、獄門島さんに近いですね。なんで着物なんです? 今どきハカマに下駄って時代劇ですかソレ」
「時代は世界二次大戦前後の話。金田一コースケは名探偵の中でも日本では有名だとか。何作も映画化されてるらしい」
「へえ〜所変わればですね」
旦那の浮気調査でターゲットの旦那を尾行。
そして。
「あれ、どう見ても不倫の二人よ」
スマホに入れたターゲットの写真を確かめた。
サラリーマン風と女子高生。
「不倫とゆーより援交じゃないですか」
「援交……あなたも、古い言葉知ってるわね」
旦那が高校生の教え子と浮気だものね。
サラリーマン風の男は背広姿の高校教師。
「金田一さん、写真たのむわ」
ホント、機械オンチのわたしは探偵は向いてない。しかも、こういう仕事ってほぼやらないから、金田一にまかせちゃお。
「二人で居ると、かえって目立つから。わたしは向こう側から見張るわ」
「ハイ」
金田一にデジカメ持たして、わたしは離れた。
助手がいて良かった。
まさか、不慣れなわたしだから、社長は金田一を助手に。
二人は、ホテルを通り越して先に進む。
あれでホテルに入れば浮気の現場写真撮れたのに。
二人は何処へ行く気だろう。
渋屋のホテル街から、妊宿方面に歩き出した。
不倫相手の教え子に服でも買ってやるのかしら?
「獄門島さん、残念でしたねホテルには、入りませんでした」
「教師が女子生徒とデートしてるのも、まずいだろうから。二人がなるべく近寄ったトコ、2、3枚撮っておいて」
「ハイ」
この日は二人で2、3店まわって、何も買わずに帰った。
翌日は、先生の自宅前から尾行。
「クルマの尾行って、難しいわよ。金田一さん大丈夫」
さすがに眼帯を取ってサングラスをかけてる。
赤くなった片目はまだ治らないそうだ。
「ところで、金田一さん。免許はいつとったの?」
「ハイ、こないだとったばかりです。やっと十八になりまして」
えーっ。マジ大丈夫なの。
ターゲットの先生は愛車の軽ワゴンで家を出た。
偶然だが、今乗ってる会社の軽ワゴンと同型だ。こちらはメタルブルー。向こうはメタルグレーだ。
しかし、この車はともかく色が目立つ。
金田一のスカジャンと同じ色だ。
依頼人の奥さんの情報だと、最近休みになると釣に行くと。
ホントは、浮気相手と会ってるに違いないというのだ。
奥さんは免許を持ってなくて尾行はしたことはないという。
「ターゲットは、都内から出ますよ。祭玉県に入りました」
ここまでは、順調に尾行出来てる。
けっこう運転は上手いようだ。
金田一。
コンビニへ入り飲料水を買って出てきた。あの女子と落ち合うわけでは、なさそうだ。
「本当に釣りに行くんですかね。家があまりない方に行きますよ。不倫しに行くとは思えませんね」
「あの会っていた女子生徒の住所は、たしか祭玉よね。まだ、ありうるわ」
「なんか、家の前に停まったわ」
「怪しいわねぇ。誰の家かしら」
畑であまり家のない場所なので、少し遠くへクルマを停めた。
男は鍵をあけて。家の中に。
「生徒の家ではないようね。隠れ家的別荘かしら」
男は、二時間たっても出てこない。
わたしたちのクルマが、こんなナニもない畑ばかりの道路に二時間も停まってるって、怪しく思われないかしら。
休日なんで、たまにウオーキングの老夫婦が通る。わたしは本を読んでるふり。
金田一はカーナビで音楽を。わたしの知らないヒットしてるというアニメソングのシンガーだとか。
「中で何してるのかしら。中に彼女が居るんじゃないですかね……」
「そうね……相鍵を持ってて先にとか、金田一さん、カメラ持って中覗いてきて。わたしはクルマをすぐ出せるようにしとくから」
「わたしが行くんですか? わたしは素人ですよ」
「わたしも浮気調査なんかしてないから同じよ。二階を覗く時は気をつけてね。誰かさんみたいに落ちないでよ」
クルマから降りた金田一は、小走りで家に。
そして、狭い庭に入り込んだ。
門がない家なので簡単に敷地内に入れる。
トゥルルル
「どうしたの?」
〘一階には、居ないみたいです〙
「そう。金田一さん、忍び込んでるときはスマホの電源切ってね」
〘ハイ。二階を覗いてみます〙
幸い家の周りに高い木があり、外から二階へよじ登る彼女は見えない。
そして十分くらいしたかしら。金田一が戻った。
「やりました。バッチリ浮気現場を撮りました」
「やっぱり、女は先に……」
「でも、相手はあの女子生徒じゃありませんでした」
「別の女がいたのね」
家から離れて会社に戻り、社長に報告。
社長室のパソコンのモニターに女と男が性行為をしている画像が。
「コレ、金田一ちゃんが撮ったの」
「ハイ、二階のベランダに登り……ちょっと犯罪ですけど」
「まあ、ソレはいいけど。コレ、なんか変だと思わなかった?」
「無我夢中で撮って、すぐに戻りましたから……。特に」
「獄門島ちゃん、これ見てどう思う?」
って、言われて画像をじっくりと見た。
はじめのは後ろからで、女の顔は見えない。
体位を変えた画像が数枚。
金田一も、よくこんな淫らな写真を何枚も。
と、コレは。
「あーこの女、人間じゃない!」
つづく




