獄門島愛のなにげな日常
162話 獄門島愛のなにげな日常
なんだか、久々に暴れたので筋肉痛が。
とりあえず、会社に来た。
オフィスの隅っこのわたしのデスクに居ると、なぜか、わたしの存在感がなくなる。
今、お盆にお茶を載せた金田一が通ったが無視された。
「等々力さん、お茶を」
「おはよう金田一さん。あのなぁ暇なときでいいんだが、写真とか撮らせてもらえないかな」
「わたしをですか?」
「ああ。孫がな、そのメイドさんにハマッててな、部屋にメイドフィギュアが沢山あるんだ。本物のメイドさんを見せてやりたくて」
「本物……」
和泉は、今はメイドにハマッてるの。
メイド好きはまえからじゃ。
でも、孫にあまいわね等々力さん。
メイドの写真とか、見せて喜ぶのかしらあのヲタ少年。
部屋の中、メイドフィギュアだらけって。
「アレ、金田一さん。今日のメイド服は……」
「気がつきました。社長が……」
田守くん、来社するなり気づいたのね。
まぁわたしも今気づいたんだけど。
黒いメイド服に白のエプロン。でもミニだ。
おしい。社長の好みは、ミニか。
田守くんの昔ながらのロングまで、もう少しかな。頑張れ金田一コオ!
「社長の趣味も変わったな。でも、ボクもその衣装好きだな。お昼休みでいいから写真撮らせて」
「いいですよ。喜んで」
「おはよう田守くん。朝から女子社員口説いてるのかな?」
「あ、おはようございます青沼さん。口説いてなんかいませんよ」
「そうなんですか……田守さん」
「ん、金田一さん。なにか」
「あ、いえ、なんでも……コーヒーは」
「あーいいや。病院で待たされたとき缶コーヒー何本も飲んじゃてさ……」
「そ、そうですか。あの青沼さんは?」
「お願い……あの熱いコーヒーに社長室のソフト、乗せたの美味しいかしら?」
「チャレンジしてきます」
あ、ソレ。わたし、千葉県の何処かの道の駅で飲んだことあるわ。
イマイチよ、青沼さん。
「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多〜」
なに、お経が聞こえてきた。
社長だ。
アレ、社長って仏教徒だっけ?
あっ。出ていった。
後から八ツ墓村さんが、一緒に行くのかと思えば見送り。
「おはようございます八ツ墓村さん!」
「あ、おはよう。田守くん。ねえ金田一さんとした?」
「え、何をです?」
「してないの? なんで金田一ちゃん、はしゃいでたのかしら。メイド服を新調したくらいで、そんなに嬉しいのかしら?」
いやいや、八ツ墓村さん。もっと深い意味があるのよ。あのメイド服には。
「あ、なんか社長。お経唱えてませんでした」
「ああ、あれね。なんだか、社長。般若心経にこってて、おぼえてるのよ。なんか、写経もはじめたわ」
「なにか、あったんですか?」
「さあ、なんでも知り合いのお坊さんにすすめられたとか……」
「誰かが、亡くなったとかじゃないんですね」
「そうね。あのときに唱えて長持ちさせる。とか、言ってたわ。田守くんも試してみたら」
「あの。ときに……」
「実際に唱えちゃダメよ。シラケちゃうから。頭の中でよ」
なるほど、社長の般若心経は、そういうこと。
「青沼さん、ホットコーヒーにソフトアイスクリーム乗せ出来ました。早く食べないとソフトクリーム、溶けちゃいますよ!」
「ああ、ありがとう……う〜ん美味しい」
美味しいの? 青沼さん。
そういえば青沼さん、甘党のお酒呑み。
「おはようございます。獄門島さん」
わっびっくりした。
蔵中さん。
「スマホの破損の件、もう少し詳しく書いてもらえます。『仕事中に壊れた』では、ちょっと……」
「あ、わかりました」
青沼さんにどう書いたか聞いてみよう。
しかし、さすがね。蔵中さん。わたしの存在に気づいてたのね。
あれ、青沼さん。もう居ない。
あのソフトクリームコーヒー見たら、わたしも食べたくなったわ。
たいして美味しくないチ○ンラーメンが、食べたくなるのと同じかしら。
金田一は、来ないなぁ。こっちから行くか。と、立ち上がったら。
「おはようございます獄門島さん。金田一さんのメイド服が変わりましたね」
「そうね、あれでロングの方が、らしいわね」
「ええ。ボクもそう思います。けど、あの方が、金田一さんにお似合いだと。やっぱり社長のセンスはイイですね」
「惚れ直した金田一さん」
「惚れてませんから……ボクはまだ、獄門島さんが」
「あなたには、むこうがお似合いよ。あきらめて……」
「金田一さ〜ん!」
「獄門島さん、なにを」
「わたしにもソフトクリームホットコーヒー作って!」
「はい」
つづく




