いつものバーで
161話 いつものバーで
「こんにちは~」
「いらっしゃい」
「あ、居ない。マスター。わたしとよく、飲んでる女性は来なかった?」
わたしは青沼さんが、いつも座ってるカウンター席に座った。
「ええ。今日はまだ、見えてませんね」
青沼さんのスマホ、また壊れたのかなぁ。つながらない。
クリスマスにまた、飲もうと約束したけど。無理そうなんで断ろうと思ってる。
なんの仕事なのかしら。ここんとこ会社で見かけない。
社長に聞いたら。
「ヒ・ミ・ツ」
って。仕事上、各社員の仕事内容はあかさないコトがある。
それは、さすがに秘書の八ツ墓村さんも、事務の蔵中さんも事務雑用の金田一も教えてくれない。
まあ知りたいのは仕事でなく。連絡先なんだけど。まだ、日にちもあるしいいか。
「お腹すいたんだけど、何か食べれる?」
「ビーフストロガノフ以外なら。肉がないんですよ」
「いや、いや。簡単なので、パスタとか」
「広島焼きとかならすぐに」
「そんなの出来るの。じゃソレで」
「はい、ほら、そっちに鉄板入れたんで」
面白いバーだわ、ここ。
「あの、姐さん。もしかして寿探偵社の……」
なに? 不細工な男が二人。わたしの席の両脇に座り。
右に座ったアンコウみたいな顔をした男がウチの会社名を言った。
なんだか、ヤバい連中ね。
「探偵社? わたしはスーパーのレジ係ですけど」
「とぼけなさんな。調べはついてるんだ。青沼静香さんよぉ」
あ、こいつら青沼さんと間違えてる。
なにを調べたの? わたしを青沼さんと間違えるなんて。
「ちょっと、一緒に外へ出てくれませんか」
左側の深海鮫みたいな顔のが、わたしの横っ腹あたりに何か当てた。
拳銃?
「さあ、立ってください青沼さん」
「アレ、お客さん!」
「マスター、すぐに戻るから」
二人くらいならすぐに。
あら、わたしと男二人が出口のドアまで来たら、店の客が。
プラス四人か。
ドアを開けると外にも四人。
ヤバいわ。女一人に十人って、多勢に無勢。
「あんたら、それでも男!」
「こんばんわマスター」
「あ、お客さん。今、いつものお相手の女性が、見慣れない男たちに!」
「それ、ハットにメガネの傘持った娘ね!」
「はい!」
やばい、私と間違われて。
あわてて外へ出ようとドアを。
「あ、青沼さん。いつ来たんです?」
「いま……。大丈夫だったの獄門島さん」
「ええ。それより青沼さんに何度も電話したんですよ……。あ、買いかえたばかりなのにスマホにヒビが!」
「大丈夫よ。経費でおちるから」
「良かった。マスター、広島焼き出来てる?」
「はい」
「獄門島さん、それ今夜は私の奢りで……」
『青沼さんの仕事後』の巻 おわり
つづく




