天使が
13話 天使が
遅く起きた。もう昼も過ぎたのか。
近くの公園まで散歩に。
今日は休暇日だから映画でも見るかな。
公園のベンチに水色の制服着たOLが。
おや、あれは知った顔。
「だ〜れだ」
「え、由美子さんですか?」
「違いま〜す」
「もしかして、その声は。いとこの愛ちゃん!」
「あたり。久しぶりね、よし恵ちゃん」
「久しぶり愛ちゃん」
「なんか、浮かない顔してたね。どうしたの?」
「ソレが、聞いてよ愛ちゃん」
「いいよ、聞いてあげる」
「実はあたし昨日天使に会ったの」
「天使って、ミカエルとかガブリエルとか」
「そ~いうのじゃなくて、変なオヤジなの。黒いサングラスに前髪たらしたグレーのロン毛で。口髭があって、ヒゲは黒いのよ。後ろ髪は束ねたちょっとやせた男。コイツが自分は天使だと、言ったの」
サングラスに黒い口髭。グレイのロン毛を後ろで束ねた男ってウチの社長じゃない?
「ほら、あっちのバスケットコートに……」
この公園には、一つだけのバスケットゴールが有るコートが。
今は若いYシャツ姿の男が、一人でプレイしている。
近所のサラリーマンかな?
「あのバスケしている人に、あたし一目惚れしちゃたんだ」
突然の告白。
「で、あっちのベンチでぼお〜っと見てたら、現れたのよ天使が」
「で、どうしたの?」
「それでね天使と、いう男は」
『そ〜やって見てるだけじゃ恋は実らないぞ、告白しなさい』
「とか、カンタンに言わないでよ。あたしみたいなチンチクリン、フラレるに決まってるわよ。彼、イケメンだし」
『それはわからんだろ。キミはそ〜やって見てるだけでいいのかな。勇気を出して告白してみなさいよぉ。実は僕、愛の天使なんだから絶対大丈夫!』
と、言って走り去ったわ。
コレから告りに行くと言う、よし恵は立ち上がった。
そしてバスケットコートの方に走ってった。
よし恵、例の男に話しかけてる。
なんか喋ってる。どうなんだ?
よし恵は頭を下げて戻ってくる。
男もネクタイを締めて向こうの出口から出てった。
「獄門島あーい!」
ナニ、大きな声でわたしのフルネームを!
よし恵は、わたしに抱きついた。
うまくいったのね。
「天使のバカヤロー! あ~ん」
ダメだったのね。
よし恵の会社。仕事終わりののロッカールーム。
「ナニ、その話。フッハハハ。天使って、あんたそのオヤジに、からかわれたのよ」
「ホント、いいハジかいたわ」
「その彼氏はなんって言ったの?」
「あ、由美子さん。聞いてたんですか。彼は、彼女がいるからと」
「友だちでもいいからとか言って縁を作れば良かったのに」
「言いました。そしたら、彼女はヤキモチヤキで、異性の友だちはダメなんだって」
「そんな、女も女だけど。男も尻にしかれてんじゃないの。フラれて良かったんじゃない。あたし、その天使とかいうロマンスグレーのヒゲの男が気になるわ何処に行けば会えるの」
「オヤジ趣味のタエならいいかもね、あのバカ天使。 あれ、コレは。誰か、あたしのロッカーに手紙入れた?」
「入れてないわよ。ナニ、ラブレター?」
「あ、天使からだ。なになに」
〘結果はどうあれ、君の勇気を讃えよう。
フラれたって、いいじゃないの。きっと、君に合うイイ男が現れる。がんばれ!〙
「はああっ、あんたねぇ愛の天使だから絶対大丈夫って言ったろ! とんだ、ニセ天使だ。今度あったら蹴りの一発でも決めてやる」
「よし恵その後でいいから私に紹介してよ」
「ねえおかしいと思わない。どうやって天使はウチの会社のロッカールームのよし恵のロッカーに入れたのかしら? その手紙」
「ですよね由美子さん、カギもかけてあるし……ストーカーかしら……やだ」
「本物の天使かもよ……私も会って見たくなったわ」
『天使が』の巻 おわり
つづく