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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 3 (2023.1~12)  作者: 四季


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彼は自分の主張を押し付けてきます、しかもその時彼は相手の気持ちなど一切考えないのです。……酷すぎますね、あまりにも。

「お前さ、着るもの派手過ぎなんだよ」


 婚約者ポットリーは支配的な男性だ。


 それは今に始まったことではない。

 ずっと前から、何なら出会った頃から、彼はそんな感じだった。


「そんな服装してるやつと一生を共にするとか無理だから。持ってる服、今日中に全部捨てろよ」

「え……」

「何だ、その反応。まさかこの俺に反抗するのか?」

「捨てる、は……ちょっと、さすがに……できません」


 彼は自分の主張を押し付けてくる。

 その時彼は相手の気持ちなど一切考えない。


 そしてさらにこちらが少しでも別の意見を言うと――。


「てめえふざけんな!!」


 激怒し、凄まじい勢いで怒鳴ってくるのだ。


 彼は大声を出せば相手を従わせられると思い込んでいる。


「かす女が! 調子に乗りやがって! あーあーこれだから低級女は、ないわー。もっと忠実であれよ! 婚約してやってんだろ!?」


 ……でもそれは間違いだ。


 他人の心というのは誰にも支配できないもの。

 たとえ大声を出そうとも、脅すような言葉をかけようとも、それは変わらない。


 たとえ一時的には支配できているかのように見えたとしても、である。

 もし仮にそう見えたとしても、それはあくまでそう見える態度を相手が取っているだけのこと――大抵実際には完全に支配するなんてことはできていないものである。


「持ってる服全部捨てろ! で、これからは俺が渡したやつだけを着用しろ!」

「それはできません」

「はああ!? じゃあなんだ、俺と一緒にいたくないってそう言うのか?」

「待ってください、そこまで言ってはいません」

「だがそういうことだろう!!」

「違います。冷静に言葉を聞いてください、勘違いだと分かるはずです」

「うるせええええ!!」


 えええー……。


 一体何なのだろう、これは。


 何を言っても絡まれる怒られる。面倒臭いの極み、としか言い様がない。こちらはただただ呆れていることしかできないし、こういう会話をしている時間は明らかに無駄な時間だ。


「もういい! じゃあ婚約は破棄だ!」


 ――やがて彼はそこまで言いきった。


 ポットリーは冷静さを欠いていた。

 だからこそ関係を完全に壊すようなことを平気で言えたのだろう。


 理不尽な主張を押し付けてそれに従わないから切り捨てる、なんて、馬鹿の極みみたいな話だと思うが……。


 でも、まぁ、これはある意味良い機会なのかもしれない。


 こんな人と生きてもきっと明るい未来なんてない。

 ならばさっさとおしまいにしてしまうというのも手なのかもしれない、なんて思って。


「分かりました。婚約破棄ですね、受け入れます」


 だから私は関係の終わりを受け入れた。


 嫌な思いをさせられ続けるのは嫌だ。しかもそれが一生続くなんて。死ぬまでずっとあれこれ理不尽を押し付けられるなんていうのはあまりにもきつすぎる。


 そんな人生、言葉は悪いが、ごみみたいなものだ。


「え……」

「さようならポットリーさん」

「お、おい!? 何言って……お前にゃそんな度胸はねーだろ!?」

「え? 何ですか? ポットリーさんが望まれたのですよね、婚約破棄を」


 ポットリーは今になって慌て出す。

 でももう遅い。

 彼は引き返せないことを口にしてしまったのだ。


「さようなら」



 ◆



 あの後ポットリーは大慌てで次の結婚相手を探し始めたそうだが、私が婚約破棄後に悪評を世に流しておいたためにまともな女性からはまったくもって相手にされず、彼は結局良い相手に恵まれることはなかった。


 そんな彼は負の感情をこじらせて。


 やがて「見る目のない女たちは死ね!」などと叫びながら二人の娘がいる町長の家に刃物を持って押し入り――そしてそれによって治安維持組織に拘束され、その数日後には罪人として処刑されてしまった。


 町長が激怒したことによる、前例のないスピード処刑であった。


 ポットリーは処刑の直前「死にたくないぃぃぃぃ」などと言って鼻水を垂らしながら号泣していたらしいが……死を前にしてそんなことになるなんて情けないばかりだ。



 ◆



「そのドレスとても美しいですね」

「え。……あ、ありがとうございます」


 風邪を引いてしまった親戚のお姉さんの代わりに参加したある晩餐会にて、私は、運命の人と出会うこととなる。


「華やかで素敵です」

「そ、そうでしょうか……」

「飾りも、色みも、とても良い感じです。まるで花が歩いているかのようで、見惚れてしまいました」


 その男性は私が身にまとっていたドレスの色を褒めてくれた。


「華やかな色みがお好きなのですか?」

「あ、はい」


 私は鮮やかな色のドレスが好きだ。

 だから今もそういうものをよく着用している。


 でも、少しは、不安もあったのだ。


 似合っていないのではないか?

 派手過ぎると思われているのでは?


 時にはそんな風に心配になることもある。


「良いことですね」

「ええと、でも、ですね……派手過ぎる、なんて言われてしまうこともあるんです」

「そうですか? とても美しいと思いますが」

「……ありがとうございます。そう言っていただけるととても……とても、嬉しいですし、勇気が持てます」


 こうして晩餐会にて知り合った私たちは、出会った日からちょうど二年が経った日に結婚式を挙げ夫婦となったのだった。



◆終わり◆

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