王子で婚約者の彼から悪女扱いされ婚約破棄されてしかも国から追放までされてしまいました……が、送られた先では皆に大切にしてもらえました。(後編)
「お茶とか飲まれます?」
「えっと……お茶、ですか? それは、ティータイム的な意味の?」
「そうですね」
「贅沢で申し訳ないです……」
「そんなことはありませんよ。それに、貴女にはぜひ贅沢していただきたいと思うほどです」
侍女たちは、外見こそ一般的な人間とは少々違っているけれど、メンタリティは人間と大きく違ってはいない。
いや、むしろ、人間より優しいかもしれない。
「なんせ、この国に福をもたらしてくださるお方ですから」
「ええっ……ないない、ないですよそんなの」
「レベッカ様は気を遣わずお好きなように暮らしてくださいね? ああ、でも、魔王陛下と仲良くしていただけるとより嬉しいです」
ここで生きていくというのも悪くはないのかもしれないな、なんて思って、気づけば私はこの場所に居場所を見出していた。
容姿なんて関係ない。
種族なんて関係ない。
そんなもので個を判断してはならないのだ、きっと。
「レベッカ殿、よければ少し……散歩でも。どうだろうか」
「はい、ぜひ」
私は魔物たちの国に馴染んでゆく。
◆
私がいなくなったことでエンドリッツらのあの国は滅びの道を辿った。
災難が連発するようになって、民らの怒りが膨らみ、そしてやがてそれは統治者である王家へと向けられる。民の怒りという名の刃は何よりも鋭く、王家を切り裂くこととなる。
国王夫妻は捕らえられて公開処刑され、その他の王族も複数拘束されては生命を終わらせられたようだ。
王子エンドリッツは愚かにもその時婚約者であったフィーナを連れて北の国へと逃げてきて、私を頼り「助けてほしい」と言ってきた――しかし私への彼らの行い、悪行は、既に皆の知るところとなっていたので、彼らを受け入れる者はここにはいなかった。
また、魔王の命令により、エンドリッツとフィーナは捕らえらえる。
魔王はエンドリッツらに「あのような素晴らしい女性を捨て、贈ってくれたことに感謝する」と一度だけ礼を述べた後、冷ややかに「彼女を大層傷つけたようだな。それも真っ赤な嘘で。何と愚かなことか」と続けた。
そこからは二人にとって地獄のような日々が待っていた。
エンドリッツとフィーナはそれぞれ散々拷問のようなことをされることとなったのだ。
それは、私を可哀想に思ってくれている魔王からの罰であった。
で、最後、エンドリッツとフィーナは順に処刑された。
◆
あれから八年、私は今、魔王の妻として生きている。
魔王との関係は良好。
結婚からそこそこ時が流れた今も、私たちは幸福な日々の中に在る。
子も既に数名誕生した。
そして、優しい魔物たちが住み暮らすこの北の国には、確かな平穏がある。
私はこの国のために生きる。
善良な者たちを救うために生きてゆく。
その決意が揺らぐことなどない。
◆終わり◆




