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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 3 (2023.1~12)  作者: 四季


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王子で婚約者の彼から悪女扱いされ婚約破棄されてしかも国から追放までされてしまいました……が、送られた先では皆に大切にしてもらえました。(前編)

「レベッカ、お前、我が友フィーナを陰で虐めていたそうじゃないか」


 婚約者でこの国の王子でもある二つ年上の彼エンドリッツがある日突然私を呼び出してそんなことを言ってきた。


「え……」

「とぼけても無駄だ」


 エンドリッツの隣には赤毛の女性。彼女がエンドリッツの昔からの友人である女性フィーナであることは知っている、が、虐めていただ何だという話にはまったくもって心当たりがない。


 フィーナは泣いていた。


「彼女はこんなになっているんだぞ!」

「い、いいの……エンドリッツ……私が悪いの、私が……可愛い、から……」

「お前は悪くないんだフィーナ。悪いのはすべてこの女だ、レベッカだ。心配せずとも俺は分かっている」

「けど……っ、けどっ……」


 エンドリッツとフィーナは私の目の前で謎の茶番を繰り広げる。


 何なの、これ。

 彼女が泣いているのは私のせいだって言うの?


「レベッカ、可哀想だと思わないか。彼女はこんなになっているんだ。お前のせいで、だぞ」

「心当たりがありません」

「まだそのようなことを言うか! 卑怯にもほどがある!」

「いえ、ですから、本当に知らないのです」


 フィーナにはこれまで数回すれ違いざまに睨みつけられたことがある。それゆえ彼女が私に好意的でないことは知っている。だから多分この件も彼女が仕掛けた罠、私を貶めるための策なのだろう。


「レベッカ、お前との婚約――破棄とするッ!!」


 やがてエンドリッツは堂々とそう宣言した。


「……本気なので?」

「ああ」

「ですが、良いのですか。私との関係を終わりにするだなんて。私は国護りの聖女で、その力を国のために使うべくここにいるのですけど」


 ――そう、私がここにいるのには事情があるのだ。


 国を護る力。

 私にはそれが宿っているらしく。


 だから私はいずれ国の長となる彼と婚約したのだ。


 彼はそれを自ら捨てるというのか?


 それも勝手に。

 誰にも相談することなく?


「黙れッ!!」

「大声を出さないでください」

「フィーナを虐めるような悪女が聖女なわけがない!!」


 だから虐めていないんだってば……。


 でも何を言っても無駄か。

 ここで私が反論しても恐らくさらに怒らせるだけだろう。


「レベッカ、お前には城から出ていってもらう」

「そうですか」

「そして――」

「……まだその先が?」


 首を傾げかけた、刹那。


「北の国へ強制的に送るッ!!」


 彼はそう叫んだ。


「北の国……って、まさか、魔の国ですか」

「ああそうだ」

「またどうして」

「罪人だからに決まっているだろう!」

「えええー……」

「お前のような悪女はそういうところの方が相応しいと思うぞ」


 魔の国、それは、魔族が住み魔王が治める国。


 詳しいことはあまり知られていないが良い噂はあまり聞かない。


「ではな。――永遠に、さらばだ」


 エンドリッツは最後それだけしか言わなかった。


 また、私が城から出ていかされる時、フィーナはわざわざお見送りに来てくれて――黒い笑みを向け「ざまぁ、邪魔女」と吐き捨ててきた。


 ……やはり悪女は彼女の方だ。


 でも、それを証明する方法はない。


 私には何もできない。

 エンドリッツがフィーナを信じきってしまっている以上こちらとしてはどうしようもない。


 こうして私は北の国へと送られることになった。



 ◆



「遠くからはるばる、お疲れ様でした。よく来てくださいましたね」


 北の国、魔物たちの国に着いた時、私を迎えてくれたのは城で働く一人の侍女であった。


「我が国の繁栄のため来てくださったとか。ありがとうございます」


 彼女は私を憎んではいないようだ――いや、むしろ、好んでくれているようにすら感じられる。


 魔物の国なんて怖い。

 けれども意外とただ恐怖だけが蔓延る地というわけではないのかもしれないとも思って。


 今は前を向こう。

 そう思った。


 その後私は魔王と対面。

 長いつのの生えたその人はどことなく照れ屋なようでそっけない言葉しか並べなかったけれど、想像していたよりかは悪人ではなさそうであった。


 そして、食事も十分に与えられるし部屋も快適だしで、王城内での暮らしは悪いものではなかった。


「こちらスープです。置いておきますね」

「ええと……これは?」

「バジルのスープですよ」


 侍女たちは最初の人に限らず皆優しかった。


「そうでしたか」

「珍しいですか?」

「えっと、その……このような色のバジルスープは見たことがなくて。この国ではこの色なものなのでしょうか」

「そうですね」

「へえ……! それはすごい……!」


 余所者である私に対しても、負の感情を向ける者はいなかった。

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