老木
あれ!レベルアップしたことで、更に奥深い山奥に怪物の気配がした。
ただ事では無い気配だった。
ダンジョンに入る前は、何も感じなかったのに、やはりレベルアップのせいだろう。
「皆!頑張って行くぞ」
あれ、召喚獣の反応が薄い。
「怪物を倒しに行くぞ、もっと気合を入れろ」
『本当にいるのですか?』
キラが疑うような目で、首を傾けて見ていた。
「ああ、居るぞ。デカく、おぞましい気配が感じるぞ」
前までのアインなら進めない程の傾斜を、アインは快適な足取りでジャンプしながら進んでいた。
俺が示した方向から戻ったキラたち。
『主、なにもいません。皆も見なかったよなーー』
『見ませんよ』
『何も居ません。本当です』
なんだか、俺1人が嘘を言っているみたいだぞ。
おう!いよいよ本番だ。
なにやら幻のような霧が漂ってきた。
森の木々の間を、視界をさえぎるようにして惑わせている。
間違いなく奴の仕業だ。
「あれ!召喚獣は気づかないのか? この幻影に・・・」
『え!なにか感じるのですか?』
召喚獣を騙すとは・・・相当にヤバい奴かも知れないぞ。
ああ!見えてきた。
禍々《まがまが》しい気配が、あふれ出している。
俺は巨大な炎の球を作り出すと、奴に向かって放った。
巨大な老木から何かが展開して、炎の球が急に空中で止まり包み込んで消えてしまった。
それでやっと気づいた召喚獣たち。
老木には、葉が一切なく枯れたような枝が生えているだけだった。
『恥ずかしいです、ご主人さま』それはザザの悲痛な言葉だった。
『おまえ、どこに隠れていたんだーーこの野郎が』
罵っていたのは、キラだった。
『フフフフ、元気な奴もいたもんだ。それにしても、よくもわたしの正体を見破ったな。絶対に許さん』
なんと、奴は日本語をしゃべっている。
あ、違った俺の脳に直接話していた。
「手加減するな、奴を倒せ!」
空高くに広がったキラたちは、魔法攻撃を老木に喰らわしていた。
魔法攻撃が集中したポイントだけが例の方法で防いでいた。
そして枝を振って、そこからツルがニョキニョキと一気に生えて、鞭のように叩き落そうとしている。
間一髪でキラはかわしている。
そして空に向かって無数のツルが襲い掛かる。
中にはそんなツルを斬激で粉々に粉砕している。
タイミングよく俺の炎の球が命中して、燃え広がって半数のツルと枝を燃やし尽くした。
なんだ、燃やしたばかりの枝が復活している。
ザザの攻撃は相性が悪いのか、少しだけのダメージしか与えられないでいる。
「ザザは、周りを警戒してくれ」
『申しわけないご主人様』
「仕方ない、こんな場合もあるよ」
それにしても何故だ。俺は疑問に思った。
俺は鑑定をし続けて、ようやく理解した。
地中からマナを吸い取って、復活していたんだ。
地中にはマナが豊富に流れている。マナ地脈が見えていた。
「アイン、巨大化して奴を地中から引っこ抜け!」
俺の言葉に従って、徐々に巨大になったアインは、老木に抱きつき必死に引き抜いている。
急に老木は、がむしゃらにアインを攻撃するようになった。
あの魔法攻撃をしないで、本能の物理攻撃だ。
その攻撃している枝に、方々から魔法攻撃が当たり粉々にしている。
それでも枝は新たに生えて、攻撃を繰り返していた。
『やめてくれーー!! 抜くなーー!』
老木の声が脳内を木霊するように響いた。
「ドサーーァ」老木が引き抜かれた瞬間だった。
そして急に老木は朽ち果てて、消えてしまった。
何が起きたのか分からなかった。
そして我に返った。
「アイン、でかした。皆も頑張ったぞ」
『頑張ったよ。ほめて、ほめて』キラが、俺の頭上で飛び回って叫んでいた。
「ああ、偉いぞ」
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