閑話 M4K1ハウィック バカンス3
「あのー何があったんですか?先輩」
「あー実はさ、伊澄先輩って異常なほど料理が下手でさ。昔ただ焼くだけの焼き肉をしようとして、しっかりと焼いたのにうっかり食べた人を病院送りにしたことがあって。それから事情を知ってる人は彼女に料理をさせないんだよ。それで断ったらあんなふうにへこんでた」
「どんなふうに言ったんですか?」
「俺としては最大限オブラートに包んだつもりだぞ?」
「よく言いますわよ。あなたわたくしに『みんなのためにもごめんなさい。今回は遠慮してください』って言ってたじゃないですか!それに昔は昔ですのよ!」
「じゃあうまくなったんですか?」
「うぐっ!で、でももし倒れてもここにいる全員回復魔法!使えるじゃないですか!それで回復させればいい話でしょう!」
「いやいやそんなことで使いたくないですし、それにそんなリスク背負いたくないですよ」
「え?そんなにすごいんですか?」
「まあそこら辺に関しては彼女の同期に聞いて。これ以上からかうと後が怖いし」
といいながらバーベキューの準備を終える。
「まあまあ先輩。バーベキューの準備が終わりましたので食べませんか?」
「ぷい!」
まだむくれてる。さてどうしましょうか?およ?
「まあまあ伊澄さん。まずは一緒に食べましょうよ。料理なら俺も教えられますから一緒にやりましょうよ」
何と歌君が先輩を慰めた。先輩はむくれながらも渋々立ち上がった。
「お願いいたします。ではわたくしはお礼にあなたの能力をもっとよく使える方法をお教えいたします」
やばい、地雷踏んだかも。トラウマが。
「歌君、達者でな生きて戻れよ」
と俺は若人を励ますことにした。歌君はえ?え?という顔をしている。
「じゃあみんな飲み物はどうする?あ、若者組はもちろんお酒だめだからな」
「私は麦茶をお願いします」「わたくしは清酒をいただけますか?」「え?伊澄さん飲むの?イメージがないな。あ、俺は炭酸で種類は何でもいい」「ああ、伊澄さんは清酒は清いからいいって理屈らしいからね。あと了解。俺はこれにしようかな?」
と俺は秘蔵の炭酸を取り出した。
「勇さん。何それ?」
「前に行った世界で手に入れた炭酸水。滅茶苦茶うまい炭酸の解け方が自然で細かい気泡が少しずつ溶け出していくという炭酸水でさぁ、あんまりないからこういう時じゃないと飲めないんだよね」
と俺は次々に清酒の一升瓶を数本と麦茶のポットと秘蔵の炭酸の樽を出す。
「炭酸でかくない?」
と若干引いている二人、それを無視して清酒に目を輝かせる伊澄先輩。
「聖さん!これってもしかして」
おいおい口調が崩れてますぜ?伊澄先輩よぉ。
「ええ、先輩の快気祝いです。遠慮なくどうぞ」
実はそのお酒は幻の清酒で、普段は一年に一回おちょこで一杯水割りで飲めれば超ラッキーくらいのレアさで、一升瓶なんて出せば酒好きならみんなが狂喜乱舞するほどです。
なぜそれを俺がたくさん持ってるかっていうと、簡単に言うと筆頭審査官の権限です!職権乱用みたいなもんですかね。
「さて、食べましょうか!」
「「「「いただきます!!」」」」
というと全員飲み物を片手に食べ始めた。肉はもちろんドラゴン肉です!それにほかの食材も一部社長からもらいましたし、ドラゴンソーセージなんかも完備です!たれに至っては調理研究班の研究のおかげでたれを開発してもらいました。普通の市販品だと素材負けしてしまい、あんまりおいしくありません。ですので今回は無理を言ってしまいました。一応名目上はお試しということで。
さて俺も食べようかなと串を盛っている皿を見るとあっという間になくなっていました。あんなにあったのに(´;ω;`)。
犯人が分かりました、伊澄先輩と精霊獣たちです。伊澄先輩はタガが外れたように両手に三本ずつ持って交互に食べています。精霊獣たちも野菜をずっともしゃもしゃしています。
「あのー先輩俺まだ食べてないんですが」
「さっきわたくしをからかった罰です!あとで食べなさい!」
とさっきのこと根に持ってんのか、これはめんどくさいな。
と俺は急ピッチで串を焼き上げて先輩渡すとわんこそばならぬ椀子串を行った。後輩二人はその光景をポカンとしながら見ていた。
「ふう、満足です。ごちそうさまでした」
「あ、先輩これデザートのフルーツです」
と別に渡して先輩のお腹にとどめを刺すことにした。
俺はようやくゆっくり食べることができると思い新しい串を用意し始めました。
「お、お疲れ様です。先輩」
「だ、大丈夫か?勇さん」
「ああ、大丈夫だ。久しぶりだなこれ。疲れたわぁ(-_-;)」
「まじで?」
「まじまじ、伊澄先輩ってやせの大食いってやつで、多分テレビで見るような大食いメニューを簡単に完食してさらにはお替りするくらい大食いで、懐かしいなぁ寸胴ラーメンを十杯作ったの」
「ず、寸胴、ラーメン(;'∀')」
「そ、それは、(;'∀')それで変わらない体型、うらやましい」
「体型維持については先輩に聞いてくれ。まあということで、懐かしんでた」
「失礼ですわね。あの時は私が寸胴ラーメン8杯でやめたじゃないですか?」
「いやいやあなたその時に『この味は飽きましたわ』って言ってから寸胴うどんを更に二杯食べたじゃないですかしかもボリュームはほぼ同じだったから寸胴ラーメン十杯って言っても間違いじゃないですよね」
「うぐ!言うようになりましたわね。ここはわたくしが引きましょう」
といって先輩はすごすごと退散していった。
さてっ食うぞぉーー♪
〈バカンス二日目〉
ん?この香りってもしかしてと俺は出汁の匂いで目が覚める。一階では月姫ちゃんと歌君がキッチンに立っていた。炊飯器とかもありますので、日本食も簡単に作れるそうです。
「あ!おはようございます。先輩!もうそろそろできますので、伊澄先輩を起こしてきてください。私が起こそうとしましたが、全然起きなかったので」
「あ、うんわかった」
と俺は伊澄先輩の部屋に歩いていき、中に入ると、
「いや!やめて。わたくしの記憶をもてあそばないで!助けて。社長!みんな」
涙を流していた。俺はそっと先輩の横に移動して、優しく頭を撫でて落ちつかせます。実は先輩は以前からこういうことが多くあり、多分これはその時の記憶だと思います。
「んっふあぁ。あれ?聖さん?どうしてここに?」
「先輩。おはようございます。朝ご飯出来てますよ。今日は後輩たちが頑張って作ってくれましたので」
といって俺は立ち上がり、部屋を出ようとするとすそが引かれる感触があり、
「ごめんなさい。もう少し頭を撫でてもらえますか?」
と顔を真っ赤にして行ってきたので、しばらく撫でることにしました。
落ち着いた先輩と一緒に一階に着くと後輩二人は既に席について喋っていました。俺たちは軽く謝って席に着きご飯を食べますが、一つ違うところがありました。
「あれ?このお米って聖獣のコメ?」
「そうなんです!初めてでしたので使ってみたくて。どうですか?」
と期待のまなざしでこっちを見たので食べるとめっちゃうまいです。新米よりおいしく、いくらでも食べれそうです。
「うんめっちゃうまい」
「ええ、本当においしいですわねさて私はこれをっと」
と伊澄先輩は懐からカプセルを取り出す。
「あれ?これって何ですか?」
俺も初めて見た何だろうこれ。一応鑑定してみるけど何も映らないな。
「これって私専用の栄養剤らしいですわ?私だと食費がかかるとのことで、社長の指示で作っていただきましたわ。何でもこれ一粒で百人分の栄養があるそうですわ」
「そういえば何で伊澄さんはそんなに食べられるんでしょうか?」
「それはですわね、実はわたくし、体と魔力の燃費が非常に悪い世界に召喚された影響で、とっても燃費が悪くなったのですわ。それで沢山食べるということですわ。簡単でしょう?」
といっていたが二人はかなりポカンとしていた。どうやら初耳のようです。
「二人にはまだ行っていなかったね。というか月姫ちゃんは知ってると思っていたよ」
「いえ?どういう事でしょうか?」
「んーっとね、異世界っていくつもあるでしょ?俺たちはそれを『魔力指数』という数字で表しているよね。でも、満ちる魔力自体は同じものなんだけど質が違ったり世界ごとに特徴があるんだよ。ここまではいい?」
「それは聞いたから知ってる」
「それで、転移者や召喚者、迷い人など初めてその世界に行った人は、空っぽの魔力の器にその世界の魔力が注ぎ込まれるから、その世界の特徴が顕著に表れるんだよ」
ここで二人は一緒に首をかしげてはてなマークを浮かべる。
「例えば、その世界の魔力の流れがガッチガチに硬いと体を硬化させる魔法が強くなって、逆に操作する魔法が使いにくくなる。みたいな?」
何となくわかったみたいです。
「まあ、それでわたくしが召喚された世界は、魔力の消費が異常に高い世界でして、例えば野球ボール愛の火の玉を出す魔法だと、普通の世界では大体コップ一杯くらいの魔力消費で済む話なんですが、わたくしのいた世界ではバケツ一杯くらいの魔力の消費が必要なんですの」
「ですから、わたくしは魔力の消費が大変多いのですわよ。その代わり、魔力の籠った食材を調理したものを摂取するととても効率よく魔力を蓄えられるのです」
ということで伊澄先輩は話を終えた。
「つまり、私がいた世界は妖怪がたくさんいた世界だから、私の力は妖怪関連の力ということですか」
と納得した。
「俺は、、、あれ?あの世界の特徴って?」
「うーんあの世界にはこれといった特徴は、、、今のところ報告されてないかな?わかったら伝えるよ。多分呪い関連だと思うけど」
「じゃあ、聖先輩はどうなんですか?」
「俺の世界はさぁ、一言で言うと不安定な世界で魔力の質もころころ変わる変な世界だった」
「ええ、あの世界は確かにおかしい世界でしたわね。確か指数がなかなか出なかったので、苦労しましたわ」
「え?先輩のいた世界のこと聞きたいです!」
「俺も俺も!ぜひ聞かせてください!」
「ちょっと二人とも、待って待って」
「そうですわね。わたくしも久しぶりに思い出にふけるのもいいかもしれませんわね」
といって伊澄先輩は語る気満々で、二人は聞く気満々だったのであきらめた。
今回出た魔力指数について、
ざっくり言うとその世界にどのくらい魔力が含まれている量を数値化したものです。これは異世界指数と結構連動しています。
魔力値が高いと自然と魔法による発展度が高いです。逆に魔力値が低いと能力を持っている人が迫害される世界があったりします。簡単に言うと映画の「X-〇EN」みたいな感じで、能力を持っている人が細々と暮らしているみたいな?そんなイメージです。




